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2010年10月25日 (月)

監査役の社会的使命と法的責任(本のご紹介)

Kansayakusimei 昨年、話題となりましたトライアイズ「監査役訴訟」を支えてこられた鳥飼総合法律事務所さんが著された「監査役の社会的使命と法的責任」(清文社 鳥飼重和、吉田良夫 編著 2000円税別)を拝読いたしました。私も昨年から今年前半にかけて、監査役さん方の裁判を担当してきましたが、これまで監査役訴訟というものがほとんどなかったものですから、裁判所も代理人も「監査役の職責とは?」というあたりで、ずいぶんと議論をいたしました。裁判官に真剣に監査役制度を説明するなかで、私自身もようやく理解できるようになった点もありました。本書でも、そういった鳥飼事務所の経験がふんだんに記述されております。とくに第2編の「監査役の危機対応」では、有事に直面した監査役さん方には参考となるところが多いと思われます。(私の論稿などもご紹介いただき、ありがとうございます)監査役さんの実務的には、社内に問題が発生した場合の監査役監査報告の書き方あたりが参考となるのでは。

第1編のほうで目を引きますのが、企業不祥事を起こすと、どれだけの損失が発生するか・・・というあたりを課徴金を課された企業の損失額を算定し、健全経営のための施策が効率的経営にいかに寄与するかを示しておられるところであります。コーポレートガバナンス改革が、企業にどれだけのパフォーマンス向上に寄与するのか・・・というあたりは、現在もなかなか実証できないものとされておりますが、こういった提案も議論の対象になるとおもしろいです。私は、IFRSの時代になっても、やはり投資家は持続的成長の判断指針となる指標(たとえば純利益)の分析がこれまでどおり中心になるのではないか、と考えておりますが、(最高益を公表してすぐに倒産する企業が出てくる時代において)「資産・負債アプローチ」の時代だからこそ、持続的成長を判断するための重要な指針は、ガバナンス評価に求められるのではないでしょうか。そんな時代の監査役さんに対する社会的使命はますます強く期待されるのでありまして、その裏腹に法的責任が厳格に問われるようになると思われます。(もうすでに何件も監査役訴訟が提起されているのですね。)「監査役でいることのリスク」等についても記載されておりまして、少しドキッとさせられるところもございますが、これも時代の流れでありまして、「イマドキの監査役の姿」をしっかりと見つめなおすにはたいへん良い本であります。

10月 25, 2010 本のご紹介 |

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コメント

「監査役監査の法的責任の厳格化」は確かに「時代の流れ」であり、「監査役でいることがリスクになる時代」になりつつあるのでしょうが、本当にそれでいいのか疑問です。監査役の機能が重視される中で、監査の実効性をもっと向上させよとの社会からの期待論が高まるのは当然の流れと思います。監査役には高い自覚と努力が求められますが、それが「法的責任厳格化論」や「後出しジャンケン的結果責任論」に直結する風潮には正直違和感を禁じ得ません。この場合取締役の職務執行に違法性もしくはその疑義を認識しながら適切に是正しなかった場合の責任と粉飾等不正を見逃した(発見できなかった)責任の議論は区別されるべきでしょう。厳格化という場合主に論議となるのは後者の場合で、それを考える重要なポイントは「保証業務としての監査」をどう考えるかにあるように思えます。同じ「監査」でも監査役監査は本来的(監査対象の特性及び実施者の資格要件等から)に会計士監査とは保証レベルが基本的に異なり、保証機能よりは助言・勧告・予防機能(コンサルティング機能)がメインとなるべきであるし、実態論からもそうならざるを得ないと思います。その中での過度の法的責任追及論は意欲ある監査役のなり手を減らすか、或いは「言い逃れ」「責任回避」を助長し、ガバナンスや内部統制の実質的改善からむしろ背を向けさせる恐れがあります。すなわち、過度に厳しい内部統制規準を押し付けるか、逆に下手に踏み込んだ監査は回避する、或いは責任を問われる可能性がある文書は出来るだけ残さないということになりかねません。いずれにしても高度の専門性には欠けるが(殆どの監査役が該当)、真面目に良心的に職責を果たそうとする監査役ほど責任を重く問われることだけはないようにする必要があります。

投稿: いたさん | 2010年10月25日 (月) 23時14分

いたさん、コメントありがとうございました。
ご指摘の点、今後の参考にさせていただきます。

大原町農協事件最高裁判決は、下手に踏み込んだ監査は回避する、といった考え方について、真っ向から反対したものだと認識しています。本来の監査役監査が行われていたら、「普通の監査役だったら」異常な兆候を認識できたかどうか、というところに焦点をあてたものだと思います。後出しで監査役責任がとわれないよう、たとえば「本来の監査役なら」という点と「普通の監査役だったら」という点が、あまりにも規範的に判断されないよう、今後は留意すべきではないかと思っております。ただ、やはりどうしても「保証機能」の点については司法判断のなかに組み込まれてしまうのが現実なんでしょうね。

投稿: toshi | 2010年10月28日 (木) 18時12分

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