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2010年10月 1日 (金)

(元)京都地検次席検事逮捕への雑感・・・・・

元京都地検次席検事の方が逮捕された、とのこと(10月1日付けで大阪高検総務部付けに異動とのこと)。諸事情ございまして、気の利いたことは申し上げられませんし、本件にはあまり深入りすることは避けますが、8月11日付け朝日「法と経済のジャーナル」の佐渡委員長(証券取引等監視委員会:元東京地検特捜部副部長)インタビューが、これまでのマスコミ報道のなかで最も核心を突いているのではないか、と思います。(有料情報なので、閲覧できない方もいらっしゃるかもしれませんが・・・)

同インタビューのなかで、佐渡委員長は村木さんの事件捜査を痛烈に批判しておられ(すでにこの時点で検察官個人の問題ではなく、部長・副部長クラスの組織の問題だと指摘しておられ)裁判員制度施行により、優秀な検事は公判担当検事に抜擢され、特捜検察が疲弊していることを明快に述べておられたのが印象的であります。そういえば、これまで裁判員制度と検察の人的・物的資源との関連、という視点ではあまり取り上げられていないように思います。「元特捜検事」という方々も、この点では自身の経験に基づいてお話することはできないでしょうし、マスコミも少し取り上げにくい構図ではないかと。裁判員制度は、今後もますます検察、とりわけ捜査検事を疲弊させていくのでしょうか?

私個人の雑感ではありますが、内部告発代理人や内部通報窓口業務の経験からすると、やはり女性の力はすごいなぁと改めて感じます。組織を動かすのは、やはり今回も

「もし調査をしないのであれば、私は検事をやめます」

組織の空気を変えることができるのは、やはり女性の力だと改めて認識したような次第であります。若手の女性検事はどんどん増えているようですから、黙っていても検察の雰囲気は変わっていくのかもしれません。

検事→弁護士(いわゆるヤメ検先生)、弁護士→判事、そして判検交流はよく聞く話でありますが、弁護士→検事という流れは(過去には多少ありましたが)ほとんど聞きませんね。(最近の指定弁護士制度は別として。)佐渡委員長がおっしゃるように、国税やSESCとの情報交換等も大切だと思いますが、在野法曹との人材交流などもこれから検討課題になってくるのではないでしょうか。

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コメント

DMORIです。山口先生は法律業界での立場があるので、書きづらい話題ですね。外野から率直に言わせてもらいます。
逮捕された大阪地検特捜部の当時の部長と副部長が、FDの書き換えを「過失だったことにしろ」と指示したかどうかについては、まだ情報が不足しているのでコメントを控えます。
しかし内部統制の観点からは、検事正に問題ありと考えます。地検トップなら、特捜部の責任者が「過失なので問題ない」と報告してきたとき、「過失だという証拠は、何によって明らかになったのか」と確認する必要があるでしょう。部長からの報告のままに「よきにはからえ」の殿様では、今回の責任は免れないと言うべきです。
今回の不正は、若手検察官からの内部告発によって発覚したということですが、こうした告発が、「自分が辞職してでも」などと涙ながらに訴えたあげくではなく、もっと軽い段階でも、現場からの疑問の声がトップや最高検、法務大臣に上がるような、内部統制の仕組みが必要ではないでしょうか。
自部門内では、どうしても部門の業績や利害が絡むので、部門長に進言してももみ消しされやすいものです。検察官だから倫理意識を信用してよいと考えるのは間違いで、人間は誰にもジキルとハイド両面の心がありますから、でき心を起こしにくい牽制組織や、部門のワクを超えて、現場の若手でも手軽に、不正を匿名で上申できる仕組みが必要です。
検察など行政機関も、こうしたJ-SOXの洗礼を受けた、民間企業の制度を見習ったらどうでしょうか。

投稿: DMORI | 2010年10月 2日 (土) 16時30分

組織上層部の関与形態として犯人隠避を選んだということは、あくまで組織的実行は無いという前提で前田氏の単独犯で済まそうとしているのでしょうか。それとも、捜査結果によっては(共謀)共同正犯もあり得るとみているのでしょうか。そのあたりの捜査態度、方針が知りたいところです。報道ベースでも「前田氏の実行後」のことばかりがネタになってます。しかし、実行前からの関与の可能性はまったく消えていないので、報道による刷り込みには注意したほうがいいと思います。むしろ、指揮命令系統からすれば、教唆はともかくとして(共謀)共同正犯ではなかったか、捜査なり調査なりがなされるべきと考えます。

前田氏の単独犯→処罰、上司→犯人隠避で処罰、その他の上層部→辞職、これで皆が相応の責任をとったという形で終わらせたいのでしょうけど、これでは「氷山の一角説」がくすぶったままとなり実質的な解決になりません。

ところで、特別背任や業務上横領といった経済犯の分野でも「犯人隠避」という犯罪の存在が注目されてきそうですね。

投稿: JFK | 2010年10月 2日 (土) 21時46分

 今回の女性検事の(「女性」ということが強調される現状は、検察庁が男社会であり、そういった意味ではまだまだ先端的とは言えない組織なのでしょうね。)行く末(地方を転々と左遷される可能性も少なくないかと。)が心配です。

 まあ、そうすると下手をすれば不祥事に不祥事を重ねることになりますが、そうした感覚が上層部にあるかどうか、とっても心配です。

投稿: Kazu | 2010年10月 4日 (月) 10時27分

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