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2010年11月 8日 (月)

社外取締役とTOBインサイダー(その2)

日経ヴェリタスの最新号(11月7日号)を読みましたが、最近は「公募増資」に関するリリース直前の空売りインサイダーが話題になっている(当局によって疑惑の目が向けられている)ようですね。先日のエントリーで、私は「公募増資」というのは、事案によっては株価が上がったり、下がったりするものだから、当局としても把握しにくいのではないか・・・と疑問に思ったことを述べたのでありますが、公募増資によって株価が下落することを当然の前提として、空売りが摘発対象となる、というのが最近傾向なのかもしれませんね。ただ東京電力さんの事例のように、事前に噂が流れて・・・ということでしたら情報管理体制の問題を指摘することもできそうですが、日経ヴェリタスで報じられているように「プレヒアリング」によるもの・・・ということであれば、会社側が努力してみもインサイダー取引を防止できないようにも思えますね。とくに国際石油開発帝石さんのような事例をみると、このまま放置していると日本の市場の信頼性を失うことにもつながりかねないように思われます。(このあたりは、それこそSESCさんと証券業協会さん、取引所さんあたりでがんばってもらう必要があるのではないかと思います)

さて、土曜日(11月6日)に社外取締役ネットワークの関西勉強会に出席いたしましたが、先日の新聞報道(西友の社外取締役の方がTOBインサイダー疑惑によって捜査の対象とされている、といった報道)について(やはり)話題になっておりました。

私はあまり意識していなかったのでありますが、何名かの方からおもしろい感想が出ておりまして、「なぜ西友の社外取締役の方は、自社株の買い付けが可能だったのだろうか?」という疑問が呈されておりました。そもそも、ご自身方の経験では、株式の公開買付けをかける側であればまだしも、買付られる側の社外役員など、賛同の意見表明を決定する役員会の直前にしか情報は知らされないのではないか、たとえデューデリが先行するような場合であっても、買付対象会社の場合には担当取締役と社長以外には知らされないのが一般的、というものであります。「リリースまでの短時間で、親族に連絡までして自社株の購入を完了させることなどできるのだろうか?」といったご意見が述べられておりました。

私は、そもそも社外取締役たる地位にある者は、会社の誰から言われずとも、自社株式が買付対象になっているような事態であれば、みずから積極的にインサイダー取引の防止体制(情報管理の徹底)維持に務めるべきである、といった意見を述べたのでありますが、「そもそもそういった情報自体が社外取締役には役員会の直前にならなければ伝えられないものであるから、情報管理体制云々・・・という議論は、社外役員には関係ないのではないか?といった意見が強かったようでありました。つまり、あまり社外取締役の理想の姿を追い求めて、期待されたとおりの活動ができていなかった、といって社外取締役の責任を議論することは、現実の社外取締役の活動状況との間にかい離が生じているのではないか、というものであります。

なるほど、現実の企業社会をみると、社外取締役さんの実務というものは、こういった意見に集約されているとおりでありまして、たとえ有効的なM&A(つまり事前に適切なデューデリが行われるような場合)であったとしても、社外取締役の方々の耳に、詳細な情報というものは届かないのかもしれません。しかし、買付対象会社が買付会社のTOB価格が適切であるかどうか、ということに「賛同するかどうか」を決定するにあたりましては、はたして他の一般株主にとってその価格が適切かどうかを判断することが前提となるわけでして、私としては当然に社外取締役さんも、一般株主の代表者たる立場で積極的に関与しなければならないのではないか、と考えております。いわば、こういった「会社の有事」であるからこそ、社外取締役の活躍が期待されるような場面でありますので、会社としましても社外取締役には意見形成のために必要な十分な情報を開示しておく必要があるのではないかと。たとえば今回のTOBだけでなく、ファイナンスに関連する増資事例の場合でも同様かと思います。

たとえば、今回の西友さんのTOBインサイダー疑惑の件につきましても、社外取締役の理想の姿を考えるならば、デューデリを行う以前から情報は伝わっていたのではないかと推測いたしますし、インサイダー取引が関係者によって行われてしまうリスクを十分に認識したうえで、情報管理を徹底することに寄与しなければならなかったのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。(本件のインサイダー疑惑の報道のなかで、私的に一番コワイと思うのは、やはり3年前の買付行為が捜査の対象となっていることですね。徹底して悪質事案には対応する・・・といった当局の姿勢がみてとれるようです・・・)

11月 8, 2010 刑事系 |

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コメント

つくづく思いますに、経済犯というんですか、こういう「犯罪」(?)の
取り締まりって、交通違反の取り締まりとよく似てますねえ。

全部は取り締まれるわけがないわけであり、社会秩序を護るためというか
警察のその部署の存在意義作りのためというか、上から与えられたノルマ
分は立件しようということかと(笑)。

インサイダー取引に関しては、池田信夫教授が言うように、いっそ
「オール・オッケー」にしてしまったほうがいいのかもしれません。
そもそも「インサイダー情報でも入手できなければ、株式を積極的に
買うわけがない」わけで。

****

閑話休題

社外取締役に関しては、何せまだ現時点では、一般的に定着した、
どこの企業にもいる存在にはなっていないわけであり、
「社外取締役とはこうあるべきだ。こういう役割を果たすべきだ」
という社会的コンセンサスがまだ出来上がってないように思います。
形式的な社外取締役もおり、また実際に経営に対し影響力、発言力を
発揮している社外取締役もいるわけでしょうが、西友さんの場合は
皮肉な言い方ですが、それなりに「ちゃんと仕事をされていた」と
云えるではないでしょうか。だから微妙な情報も入ってきた。
もっと形式的な、お飾りの社外取締役だったら、こんな騒ぎには
ならなかったかもしれませんね(笑)。

投稿: 機野 | 2010年11月 8日 (月) 02時17分

機野さん、コメントありがとうございます。

閑話休題の部分は、きわめて重要な問題と思っておりまして、私も後でエントリーしようと考えております。ただ、実名ブログとしましては、もう少し事実関係がはっきりしてからでないと、問題提起がむずかしいところです。

投稿: toshi | 2010年11月 8日 (月) 11時19分

 当時の有価証券報告書(多分平成18年12月期)で役員構成を確認してみると、委員会設置会社であることから、社外取締役が多く、社外取締役は。ウォルマート出身者の外国人の方か、立派な経歴を持つ日本人の方に分けられました。
 「社外取締役」といっても、二つは全く異なり、前者の取締役は、独立性は無いし、株主側の取締役としてMBOの情報が入っていてもおかしくはないでしょう。後者の取締役は、社歴を見る限り主要取引先に該当しなければ独立性があることになり、担当取締役として情報を得た訳ではなさそう(但し、根回しはされていてもおかしくないと思います。)な気がします。

 今までの独立取締役の議論に一石を投じることにもなりそうで、事実関係次第では、色々あるかもしれませんね。

投稿: Kazu | 2010年11月 8日 (月) 15時34分

こちらに当時の西友さんの意見表明報告書が掲載されております。
http://toushi.kankei.me/docs/text/0070H6M6

これでみますと、社外取締役らに役員会で買付提案がなされていることが報告されてから、社外取締役らによる審議結果が出されるまで約2週間のタイムラグがあることがわかります。
ということは、やはり今回のケースでは、(いろいろ問題はありますが)とりあえず社外取締役の方々はあらかじめ情報をきちんと入手する時間的余裕はあったわけで、インサイダー情報を親族に伝えるだけの時間的余裕はあったようですね。

投稿: toshi | 2010年11月10日 (水) 02時15分

日本人は肩書きに弱いですが、こういう個人的な不正については、社外か社内かより、取締役個人の倫理観の問題です。散発的な個人的不正は、必要悪として割り切るのもアリなんじゃないでしょうか?

社外だから独立して公正、社内だから独立性に欠け不公正と考えがちな風潮がありますが、実は社外役員の方が会社に対する忠誠心が少ない分、会社の名声を傷付けるような個人的不正を行うインセンティブを持っていたりします。

立派な経歴を持つ人の方が、持たない人より不正を行いにくいのは事実ですが、立派な経歴を持つ人は掛け持ちして忙しく、余り役に立たないお飾りになってしまうことが多いと思います。

一方、社内取締役の場合は組織的な不正には関与しても個人的不正は行いにくい気がします。


しかし、TOBについては、買付提案の打診があった時点ですぐに打診があった旨を発表すれば良いのではないかと思います。株価は上がってしまいますけど、株価を安く抑えるメリットは株主には無いですからね。TOB実施日に合わせて意見書まで揃えないとダメなんですかね?実務上の手順にも問題があるのではないかと思います。

投稿: ターナー | 2010年11月10日 (水) 23時59分

ターナーさん、ご意見ありがとうございます。
なるほど、そういった見方もあるのですね。

立派な肩書きをお持ちの方が、お小遣い稼ぎ程度にインサイダーに手を染める・・・というのも、よくわからないところです。巨額の利益を上げるというのであればなんとなく「倫理観」という話でわかりやすいのですが。。。しかしこの事件、今後の展開はどうなるのでしょうね?

投稿: toshi | 2010年11月12日 (金) 02時59分

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