ちょうど1カ月前に広報させていただきました「いま社外取締役に求められる独立性とは?~関西企業に社外取締役は必要か?~」のシンポジウムが、いよいよ今週水曜日(12月8日)に迫ってまいりました。各団体からの広報のおかげもございまして、360名以上の方の参加申し込みをいただいております。いちおう申込が締め切られておりますが、これから参加を希望される方がいらっしゃいましたら、会社名と参加される方のお名前を私宛てにメールいただければ(当ブログの左のサイドバーにございますリンク「メール送信」をご活用ください)、なんとかなりますので(笑)、お時間がございましたらお申込みのうえ、12月8日午後2時までに大阪弁護士会館までお越しいただければ幸いでございます。なお当日はチラシには掲載しておりませんが、「コーポレート・ガバナンスの経営学」(有斐閣)を今年執筆されました神戸大学経営学部の先生にも、ゲストとして御登壇いただく予定であります。
基調講演をされる大杉先生のレジメ(パワーポイントの配布資料)を拝見しましたが、オモシロイ!!どのようなスタンスで大杉先生が基調講演をされるのか・・・・・、これは参加された方のお楽しみ・・・ということで。また、大阪証券取引所の副社長さん、ニッセンHDの社長さんも、わざわざこの日のために(レジメとして配布はできませんが)当日用のパワーポイント資料を作成いただきました。また金融庁ガバナンス連絡会議のメンバーでいらっしゃる田村代表のお話も楽しみでございます。弁護士、会計士の方も多数ご参加いただきますが、やはりなんといっても今回は関西の企業様が主役でございます。たぶん、参加される方は、①社外取締役制度導入論に不安と関心を寄せておられる企業の方々、②すでにグループ企業政策の一環として社外取締役、社外監査役さんを派遣しており、「独立性」の議論に不安と関心を寄せておられる企業、金融機関の方々、そして③ガバナンス改革には積極的であっても、むしろ監査役制度の充実を検討している企業の監査役の方々に分かれるのではないか・・・と考えております。ここ2カ月ほど、いろんな企業役員の方とお話をしていて、社外取締役制度への関心といいましても、内容はこのようにいくつかに分類できることを知りました。
さて、シンポの準備をしているなかで、ICGN「国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク」の2010年6月トロント会議の報告書を読む機会がございました。この会議の報告書が日本取締役協会の大楠理事によって作成されております。主要テーマは2008年金融危機後の「変化するグローバル・バランス」ということでありまして、海外投資家からみた「取締役への女性の登用問題」「良いガバナンスへの脅威」「CSRにおける新たなバランス」などの全体会議項目がオモシロイのでありますが、そのなかに「IFRS問題」への言及もございます。
海外投資家の方々にとって、各国のIFRS導入については基本的には好意的な評価のようでありますが、実際の「参加者の回答」となりますと、
「世界的に統一された会計基準はこれからどの方向に向かうと考えるか?」
との問いに対して、「より良い財務諸表と投資判断の基準となる」と回答されたのは3分の1にすぎず、その他は「潜在的に会計基準の形がい化につながる」「企業実態を理解するのが困難となる」という意見が合わせて60%に及んでおります。また、
「どんなに精巧な基準を作っても、必ず抜け道を探すことになると思うか」
との質問に対して、「思う」と回答されたのは90%以上(「時々」という回答を含める)という結果になっております。ちなみに、会場に集まった機関投資家の方々は、カナダの方々が圧倒的に多く、カナダといえば韓国、インドとともに、来年IFRSの強制適用が開始される国であります。フェアバリュー会計、国家の枠を超えた会計ルールの秩序形成、同質化については期待すべきところだけれども、はたして企業の本当の姿を映し出せる鏡となりえるのか、粉飾決算を防止できる制度となりえるのか・・・といったところには、あまり大きな期待は抱かいていないようであります。
いずれにしましても、IFRSが国境を越えたルールではあっても、粉飾が発生した場合のエンフォースメントは各国の主権に委ねられるわけでありますので、日本にかぎらず、各国の法と会計の交錯場面がどのように処理されていくのか、とても興味深いところです。