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2010年12月 9日 (木)

独立社外取締役シンポ、ご参加ありがとうございました。

社外取締役ネットワーク、大阪弁護士会、日本公認会計士協会近畿会共催「社外取締役の独立性とは?~関西企業に社外取締役は必要か?~」(関西経済同友会、大阪証券取引所後援)、なんとか無事終えることができました。正確には299名 304名の方にご参加いただきました。寒い中、弁護士会館2階にお越しいただき、ありがとうございました。<(_ _)>

大杉謙一教授の関西デビューとなる基調講演に始まり、シンポ、そして神戸大学の砂川(いさがわ)教授の意見発表まで、10分オーバー(計3時間10分)でしたがなんとかこなしました。モデレーターを務めさせていただきましたが、途中から「時間との闘い」となり、登壇者の方々にもすこしばかりご迷惑をおかけしました。

こういった大きなシンポを企画、協力要請、演出、広報、現場指揮することのムズカシサを痛感いたしました。こういったものは個人の力を越えた「組織力」で乗り切らなければ成功しないですね。しかも各人が仕事として行うものではございませんので、信頼関係が成り立った上での「組織力」は不可欠だなぁと。おそらく、内容につきましてはいろいろとご不満もあるかとは存じますが、日経や朝日、読売新聞の記者さん方にもお越しいただき、「独立社外取締役」制度を関西の企業の皆様に周知していただく機会を得られたこと、たいへん満足しております(せめて関西版でも良いので記事にしていただければありがたいのですが。。。 笑)。レジメも余分に作っておりましたが、みなさん帰り際に「余分に持って帰りたい」とのことで、残部数ゼロとなりました。

シンポでは、制度義務化の是非、ハードローとソフトロー、ガバナンス改革と業績向上、独立性の要件化とこれにまつわる問題点・・・というところで時間切れとなりました。本当は監査役との連携、「任期」問題と独立性、ガバナンス改革積極派=社外取締役導入論にあらず・・・といったオモシロイ論点も用意していたのですが、登壇者の皆様の熱いご発言で、積み残しとなりました。コーポレート・ファイナンスがご専門の砂川先生からも、ガバナンス改革と業績向上に関する実証研究に関する示唆もあり、今後の勉強課題も見つかりました。

今回のシンポにあたりましては、モデレーターとして、ひとつのモノサシを決めておりました。これは、今年3月経済同友会さんからリリースされております報告書「日本的コーポレート・ガバナンスのさらなる深化」であります。ここで同友会さんから提言されている(日本企業のガバナンスの良さを活かした)社外取締役制度論を意識して、このモノサシに照らしながら、理屈は大杉先生、外見は藤倉副社長、中身は片山社長、社外取締役の立場からは田村代表・・・といった具合に、ご意見をうかがうようにいたしました。取締役会の多様化(ダイバーシティ)を理想として、社外取締役制度の導入も、「ビジネス的、社会的、国際的」知見をもって多様なステークホルダーとのコミュニケーションを図る(これにより一般株主の長期的利益を向上させる)ことを目的とする、という考え方に、私も賛同したからであります。

時間の関係で、残念ながら「関西企業に社外取締役は必要か?」との問いに対する明確な回答は提示できませんでした。しかしニッセンの片山社長さんの最後の言葉

「ガバナンスを改良したからといって、業績が向上するわけではない。しかし、どんなに良いビジネスモデルを持っていても、これを育てる土壌(ガバナンス)がなければ、ビジネスは育たない」

を忘れずに、これからも研究対象の一環として、この制度について取り組んでいきたいと思う次第であります。

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コメント

長丁場、お疲れ様でございました。若干感想を述べさせていただきます。
多種多様というよりも、社外取締役をお導入しないとだめだよ、世界の孤児になるよ、という啓蒙の議論としてお聞きしましたが、やはり違和感はありますね。なんか大本営参謀本部みたいな組織で、現場第一線の作戦指揮が悪い、みたいな話なんでしょうかね。
先生の「それで儲かりまっか?」という挑発には、そもそもブレーキを掛ける役が社外役員(取締役)みたいなお話でするっとかわされた(?)感じでしたが、どうもガバナンスの話と企業価値の向上≒業績の向上を故意に(恣意的に?)混同させてお話が進んでいるような気がしました。

投稿: 総務部長見習 | 2010年12月 9日 (木) 17時10分

総務部長見習さん、お久しぶりです。また、シンポへお越しいただきありがとうございました。

シンポの冒頭で述べました通り、真剣にお聴きいただき、違和感を覚えていただく方も多いかとは思います。
啓蒙・・・のようにみえましたか?
そうみえないようにと努力していたのですが・・・

まだ「啓蒙」というところまでは考えておらず、社外取締役制度論を各企業で真剣に検討する際のモノサシを呈示する、といったところまでしかできなかったように思います。
ある方からは、なんだか弁護士・会計士の新たな業務領域拡大作戦のような雰囲気だった、というご批判も頂戴しております。
今後、このお話は「外見」の問題と、「中身」(企業価値向上)の問題の両面から整理して議論する必要があろうかと思っております。
ぜひまた、こういったシンポを企画する際には、有益なご意見いただければと。

投稿: toshi | 2010年12月 9日 (木) 21時57分

山口先生

大盛況なご様子、ご苦労様でした。
出発点として、日本の上場会社の中に個々の企業で評価が高い企業はもちろんありますが、全体的には法制度と実務慣行の面で、日本のガバナンスに対しては、投資家サイドからはダメだしがされているという現実を認識するところから始めないといけないと思います。ご紹介いただいた経済同友会の提言には、将来に向けた希望をもてる文体で、少しほっとしました。

現状がいいんだ、と経営者側から声高に主張されることがありますが、やはり説得力はありません。ガバナンスは本来、経営者に対する監督のためのシステムの設計と運用の問題ですから。評価されるべき経営者が、株主総会までコントロールして、しかもマスコミにもにらみを利かせているとすれば、日本経済の窒息死は必至です。(マスコミも、広告の出稿の多い会社から文句がでるとすぐに黙ってしまうのは情けないです。)
時機を逸することにならないように、なんとか改善できないか、というのがガバナンスに熱心な論者のスタンスではないかと思います。

今のような内向きな経済社会では、グローバル競争から取り残されるだけです。時代の変化への適応力が求められるので、その点の現状認識から議論をスタートしたいところです。

ガバナンスがどう関係するか、という声も聞こえてきそうですが、外に目を向けることがまず第一歩、そしてチェックがきく体制、変革のできる組織体制を構築することをめざす主張に耳を傾けてほしいと思いますね。

やっぱり日本経済を元気にしたい、それには、苦い薬も飲んで、もう一度生まれ変われれば、という気持ちを持つ人はいる、と信じたいですね。現状維持で固定的であれば、すでに勝ち組な人は逃げ切れるのでいいでしょうが、若い人を含めて、将来の変革の中から自らもチャンスをつかみたい、という希望がつぶされないことが必要です。

2010年は停滞感の著しい年でしたが、2011年は変革の始まる年になることを祈っています。

投稿: 龍のお年ご | 2010年12月 9日 (木) 23時04分

龍のお年ごさん、ご意見ありがとうございます。

今回のシンポを成功させるにあたり、この同友会提言書は非常に有用でした。ご指摘のとおり、「経済団体はこういった見方」という、定性的な概念がすこしまかり通っているように思われましたので、「そうではないんだ、リベラルな考え方もあるんだ」というところをできるだけ周知させたい、ということがありました。また、これまでの日本で培われた日本文化に根ざしたガバナンスも尊重する姿勢にも共感した次第です。

なお、責任者として、8月から突っ走ってきて、2度ほどある方からブレーキをかけられたことがありました。いま思うと、あのときブレーキを踏んでもらえなかったら、たぶん失敗していただろうと思います。社外取締役の存在の必要性を自身で体験できたようで、そのあたりはまた別エントリーで「総括」として述べてみたいと思います。

投稿: toshi | 2010年12月13日 (月) 01時31分

先週のシンポに参加した者です。
先生の司会進行はたいへんお上手で、拝聴するほうも、たいへんおもしろく勉強させていただきました。ただ先生の言わんとするところは、たしかに正論なのですが、それがはたして社内で通じるか・・・というと、ちょっと疑問符がつくところだと思いました。どうしても社長がお友達を連れてくることを止める者がいない、というのが現実ではないでしょうか。

西友の社外取締役の親族がインサイダーで起訴・・というのも、なんだかなぁといった事件ですが、先生はどう思われますか?

投稿: みっちー | 2010年12月14日 (火) 01時59分

みっちーさん、シンポへお越しいただきありがとうございました。
またご意見も真摯にお受けいたします。でも誰かがこういった発信を行っておくことが、「来るべき日」のためにの有益かと(^^;また発言するだけでなく、私自身もできる範囲で実践していきたいと思っております。

西友の社外取締役のご親族の件、15日に朝日AJでも解説記事が出ておりますね。一度、エントリーでとりあげたいと思います。

投稿: toshi | 2010年12月17日 (金) 19時01分

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