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2010年12月15日 (水)

業界トップ・ヤマダ電機のCSR経営への熱き思い(?)

(16日未明:追記あり)

ひさしぶりの「コンプライアンス経営はむずかしい」シリーズでありますが、業界大手のヤマダ電機さんが、日経ビジネス誌上「お客様満足度ランキング最下位」と報じられたことで名誉をいたく傷つけられたとして、日経BP社を相手に損害賠償請求訴訟を提起していたそうであります(裁判自体、私は存じ上げませんでしたが)。そして12月14日、東京地裁はヤマダ電機さんの請求を棄却する判決を下したようです。(読売新聞ニュースはこちら

法人にも(不法行為に基づく)名誉毀損は成り立つ・・・というのが判例通説でありますので、5500万円分の社会的信用を毀損された、とするヤマダ電機さんの気持ちもわからないではありません。ましてや世は正にCSR経営の時代。家電量販店にとりましてステークホルダーの中心にある顧客様へのアフターサービスが最下位・・・という評価を「天下の日経ビジネス誌」で公表されたとなると、これはエライ痛手でありますし、ヤマダ電機さんは企業としての社会的責任をまったく果たしていない、と評されているに等しいものでありますので、「闘うコンプライアンス」の必要性も十分に認められるように思われます。

ただ、どうでしょうか。。。皆様がもし、ヤマダ電機さんの経営者だとしたら、「何を書いとるんや!」と怒り心頭で訴訟を提起するでしょうか??私はかなり悩みますよね。法人の社会的評価(信用)を毀損するに足りるほどの具体的な事実の摘示を原告であるヤマダ電機さんのほうで主張・立証する必要があるわけですが、そもそも顧客の満足度・・・というのは、お客様の主観的な評価にすぎないわけでして、たとえば顧客がブログで「ヤマダ電機はアフターサービスが悪い」と書いたとしても、それは個人の主観的な嗜好の問題であって、名誉毀損は成り立たないものと思います。そういった満足度をマスコミがアンケートで集計して、その結果を公表する、ということになりますと、「ヤマダのサービスが悪い、という人がたくさん存在する」ということが具体的な事実になりそうであります。ただ「集計作業」はかならず1番から最下位まで順位が必然的についてしまうものでありますから、マスコミが集計結果を意図的に作り上げなければ名誉侵害行為と評価することはできないようにも思われます。この世の中にヤマダ電機の顧客満足度が悪いと考えている人がたくさんいる・・・という具体的な事実に何らの根拠もない、という点の立証はかなり困難ではないかと想像いたします。

いずれにしましても、この東京地裁の判断をみてもわかるように、決してヤマダ電機側に明らかに(一方的に)正義があるわけではなく、敗訴の可能性はあるわけでして、こういった状況で裁判を起こすことは、かえって、「ホントだ。ヤマダ電機のアフターサービスの悪さは、裁判で証明されたのだ。あれは真実だったのだ」といった一般市民の認識を増幅させてしまう結果になるのではないかと。これはかなりマズイなぁと思うのでありますが。ましてや、相手は日経BP社であり、相手が敗訴すれば最高裁までとことん争う筋の裁判ですよね。おそらく著名な裁判例になると思いますし、先の読売新聞ニュースではすでに「ヤマダ電機満足度最下位訴訟」といったネーミングまでされてしまうわけであります。つまり、これから10年も20年も先まで「ヤマダ電機最下位訴訟」なる事件名で、幾度も紹介されることになるわけですから、どうもCSRの時代において、トホホな判例を形成してしまったのではないか、と危惧いたします。これは高裁で逆転判決が出たとしても、完全にヤマダ電機さんの名誉が回復されるわけではなく、どっちかといいますと、「ヤマダ電機顧客満足度最下位」のネーミングが一般国民の脳裏に焼き付いてしまうように思います。

押しも押されぬ業界トップのヤマダ電機さんですから、週刊ダイヤモンドや、日経ビジネスなどの売れ筋企画「●●ランキング」で○○部門最下位になったとしても、悠然と構えていることはできなかったのでしょうかね?少なくとも、日経BP社の悪意が明確でない以上は、「ちょっとうちの会社も反省すべき点があるのではないか」と真摯に受け止める、ということもできなかったのでしょうか?それとも「ウチに何かいちゃもんつけてくる奴は、みんなこういう目にあうぜ」といった一般予防的効果を狙ったものなのかもしれません。(これならとくに勝訴しなくても、それなりの効果はあるかと・・・)

ひょっとすると、裁判に至るまでになにか伏線があったのかもしれません。企業のCSRに関連する問題であるがゆえに、今回のヤマダ電機さんの訴訟につきまして、コンプライアンスの視点からは結構悩ましい事例であるように思えました。今後の展開に注目しておきたいところであります。

(追記)問題の日経ビジネス誌のランキングでありますが、コメント欄にてgo2cさんが詳細に解説、分析しておられます。たいへん参考になりますので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。しかし、この「コンプライアンス経営はむずかしい」シリーズは、本当にいつもたくさんの方に閲覧していただき、またツイッター等でも話題にしていただいているようで、どうもありがとうございますm(__)m

12月 15, 2010 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

普通に考えると、完全にヤブヘビになっていますが。

ヤマダさんとしては、そもそも日経のランキングは信頼できないものだとして、他社に同様の企画を持ちかけて顧客満足度最下位を返上しないといけないかもしれませんね。

会社側が訴訟提起に積極的であったならいいのですが、顧問弁護士さんに唆されて無理筋で提訴したのであれば、弁護士さんとの距離の置き方も考えないといけないでしょうね。

投稿: ターナー | 2010年12月15日 (水) 04時08分

私は大抵の家電製品をヤマダで買っていますが、サービスに不満を持ったことはありません。むしろ良くやってくれていると思っています。
もちろん個人差あるでしょうが。

訴訟にはカリスマオーナーの意地や危機感などがあるのではないかと。周りの役員は単なる執行者でしょう。所詮。

以前も東洋経済とかダイヤモンドでの特集で、悪口には結構かみついていましたので、逆撫でさせる記事だった可能性もあります。
(東洋経済等の記事では、直接社長にインタビューして、山田の言い分をしっかり伝えていた記憶あり。日経にそうした配慮があったのか?)

しかし、こういった記事に反発してサービス改善してくれるなら、最終的に顧客にとって都合がいいので、そういう目で見ています。

確か、地元のパパママショップと提携して、アフターサービスを強化していたはずです。

むしろ悠長に構えて本当にだらしなくなってしまうような企業だとそっちの方が心配です。

投稿: katsu | 2010年12月15日 (水) 09時56分

問題の記事を見たのですが、アンケートの回答が満足~不満を5段階になっていて、それを+100点~-100点(50点刻み)で換算した平均点を比較してランク付けしていました。家電量販店の中では他の会社よりヤマダ電器に関する回答数が圧倒的に多く、他との同列での比較がどこまで意味があるのか統計の素人としてはちょっと疑問です。(アンケートの回答数自体は同じ日経ビジネスの「弁護士ランキング」よりは数十倍以上ありますがw)。それに点数自体はプラスになっているので、平均的にはヤマダ電器のアフターサービスは「いい」と思っている人のほうが多いので、決して「悪い」とは言っていません。「他社に比べて低い」というだけです。(他業界ではものすごいマイナス点の会社もありましたw)
記事の中にも集計方法を(小さい字ですが)明記されているので、訴訟としては最初から筋が良くなかった感じですね。
それでも反論したいのであれば、アンケートのとり方の是非とか有意性について自社のウエブサイトで疑義を呈するとかのほうがスマートだったように思います。
考えようによってはヤマダ電器の「大人気なさ」=安売りへのアグレッシブさをアピールしたともいえるかもしれませんね。

投稿: go2c | 2010年12月16日 (木) 01時44分

ターナーさん、katsuさん、go2cさん、ご意見ありがとうございました。(なるほど・・・、いろいろな見方があるものですね)
go2cさんの分析は、本文を読まれた方の参考になるかと思いますので、追記させていただきます。
しかし「ヤマダ電機」と書くと「業界大手」というイメージが湧きますが、katsuさんのように「山田電機」と書くと、近所の商店街に昔からある電気屋さんをイメージするのは私だけでしょうか(笑)

投稿: toshi | 2010年12月16日 (木) 02時03分

ヤマダ電機という会社は、近所の商店街に昔からある電気屋さんをイメージすべきだと私は思いますよ。山田からヤマダになって図体だけ大きくなっただけ。企業文化から見れば、商店街の電気屋がそのまま精神的成長が無いままに無法図に大きくなっただけなのです。

あえて、些細な誹謗中傷に大人げ無い対応をすることで、存在感をアピールするマーケティング手法もあるにはあります。(悪名は無名に勝る)しかし、ヤマダ電機ぐらいの大企業になったら知名度向上に躍起になる必要も無いでしょうから、もう少しスマートな対応が求められているような・・・?

大人げ無い企業という社会的評価を得ることによって存在感を示すこと自体が目的だとしたら、もう何も言えませんけどね。

投稿: ターナー | 2010年12月16日 (木) 17時40分

10月にたまたま見つけたので、ブログにも書いたのですが
http://eyochan-home.cocolog-nifty.com/blogdayo/2010/10/post-afbd.html

社員から愛社されていない会社でもヤマダ電機は、ブービーだったのです。
コチラ→http://careerconnection.jp/review/weekly20100921.html
社員から愛社されていないという結果も含めて、大いに運営を見直す契機にしてもらいたいですね。

投稿: 品川のよっちゃん | 2010年12月18日 (土) 19時59分

品川のよっちゃんさん、コメントありがとうございました。

また先週は、同じ会合に出席したにもかかわらず、ご挨拶できる時間がなくて残念でした(笑)
この会社の話題につきましては、最近著名ブロガーの方もお書きになっていて、いろいろと話題豊富な会社さんなんですね。
よっちゃんさんのご紹介いただいた記事も読ませていただきましたが、とくにヤマダ電機さんだけに他意があるようにも思えませんでした。すこし運営について見直すべきなのかもしれないですね。

来年もどうか宜しくお願いいたします(どうか良いお年を)。

投稿: toshi | 2010年12月22日 (水) 11時38分

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