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2011年1月 8日 (土)

秀逸!朝日新聞板橋記者の講演録(特捜改ざんを暴いた経緯)

私もときどき寄稿させていただく朝日新聞「法と経済のジャーナル」ですが、同サイト開設以来、これほど秀逸な記事はなかったと思います。有償版なので、無料でご覧になれるかどうかはわかりませんが、本日(1月7日)アップされた記事「特捜検事の証拠改ざんは、こうやって明るみに出した」は、例の大阪地検特捜部における証拠改ざん事件を初めて報道した板橋記者の早稲田大学における講演録でありますが、単なる講演録ではございません。いや、最後まで一気に読んでしまいました。

やはり「フロッピーディスクを改ざんした」という証言は、板橋記者が「検察関係者」から聞いた話でした。この「検察関係者」からどうやって聞き出したのか?という点につきましては、もうすこしツッコミがほしいところではありますが、取材源の秘匿ということでやむをえないところでしょうか。しかし、そもそも板橋記者の熱意がなければ検察関係者からこういった証言を聞き出すことができなかったことは確かですし、また聴取した後の、朝日新聞社という組織の動きや、フロッピーディスクを受け取るまでの弁護人とのやりとりなどは、非常にリアルであり、このような内容を今回、記事にした朝日新聞社には敬意を表したいと思います。「ひょっとしたら、この事実が明るみに出たとき、私はどうなるのだろうか?」・・・・・、記者だって人間、身を案じるのも当然かと思います。(あの三井氏の事件が頭をよぎったのも当然かと)

正直申し上げて、私もこのお話に登場する元係長の弁護人と同様のことを考え、記者にフロッピーディスクを渡すことをためらったかもしれません。まさか検事が客観的な証拠を改ざんするなどとは夢にも思わないからであります。また、フォレンジックを担当する業者としても、まさか改ざんが行われているだろうとは想像もしていなかったのではないかと思われます。記者自身、報道当日に最高検が特捜検事逮捕にまで発展することを予想していなかったところも、この講演録を読んで、なんとなく理解できました。

下野新聞社から途中入社で全国紙の記者になられたわけですが、そういった地方新聞社での経験が、今回の取材に生きたことなども非常に興味深く読ませていただきました。前代未聞の検察不祥事が、このような記者および組織としての新聞社の姿勢によって生まれたことを知り、この事件の「うやむやな」部分が、少しずつではありますが氷解してきたように感じております。

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