「バイク王」比較サイト偽装疑惑への企業対応
すでに多くのブログで紹介されておりますが、「バイク王」経営母体のアイケイコーポレーション社(東証二部)は、バイク買取価格の比較サイトにおいて「バイク王」以外の全ての買取業者の経営母体だったという「お粗末」なお話。消費者庁は、それが事実なら景表法に抵触する可能性がある、とのことだそうですが、予想通りアイケイ社の株価にも大きく影響が及んでいる模様であります(ブルームバーグニュースはこちら。昨年末と比較して、4日のアイケイ社の株価は8.5%下落)。
各紙報道をみますと「バイク王、比較サイト偽装」との見出しもあり、一般の方々も「高値買取」を偽装していた、との認識を持っておられるのではないかと思います。しかし会社側コメントを読みますと、今回の事件は誤解を生じさせるおそれのあるものであり、再発防止に努めます、として決して会社ぐるみの不正が行われた、というものではないことを強調しておられるようです。朝日新聞に対するコメントでも「今回の件は遺憾であり、残念です」とありますので、決して悪いことをしたわけではない、顧客に誤解を生じさせたことについては再発防止のため努力する、とのスタンスは崩しておられないように思えます。しかし、このようなサイトで、あたかも他の業者と買取価格で競争している外観を作出していたのですから、これをバイク王の広告だと理解することは困難でして、なぜ「偽装」にあたらないのか、会社コメントを読んでも理解できないところであります。再発防止の前に、まず事実関係をきちんと調査のうえ公表することが先決ではないかと思われます。
今回の件、顧客からの苦情によって疑惑が浮上したのであれば、消費者庁が先に情報を収集しているはずでありますが、新聞社が先に事実を解明しているところをみると、やはり内部告発による情報提供の可能性が高そうであります。社会部の新聞記者さん達は、入手した情報をもとに会社側に取材を求めるのでありますが、事前に会社側に送られてくる質問事項で、だいたい漏洩した情報の内容が判明し、どのペーパーが漏れたのか特定できることが多いように思います(私の経験からですが・・・)。その場合、会社側の対応としては、自社で調査のうえ真摯に対応するケースと、新聞記者さんを完全に無視するケースに分かれるようです。私は原則として前者をお勧めします。なぜなら内部告発者の情報は、告発者自身のストーリーに基づくものであり、決して企業不祥事の全貌を知りながら告発するケースが少ないということ、たしかに不祥事に近い事実が存在していたとしても、記者さん方にも「ニュースとしてのストーリー」があり、これに沿った形の不祥事ではない場合には「報道に値するほどのおいしいネタ」にはならないからであります。こういったケースでは、自社の言い分を記者さん方に堂々と主張することで、結局のところ没ネタになる可能性が高いと思います。また教科書的な回答ですが、本当に申し開きのできない不祥事が発覚した場合には、事実調査のうえ自社において不祥事を公表し謝罪するほうが、「自浄能力」を示すことができ、再発防止策への信頼も高まるため、社会的評価の毀損の度合いはそれほど大きくないものと思われるからであります。
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コメント
いつも楽しく拝見させていただき、参考にさせていただいてます。
会社ぐるみの場合は「教科書的な回答」にあるような対応が行われることはなく、むしろ、「発覚したら存続に関わるので、一か八か隠し通せるところまで隠す」という方向へ行きがちのような気がします。
本件がどうなのか、今後の会社の対応を見ていきたいと思います。
投稿: 通りすがり | 2011年1月 5日 (水) 06時24分
通りすがりさん、ご意見ありがとうございます。
そうですね、たしかに教科書的な回答のとおりにはいかないかもしれませんね。いつも申し上げるところですが、自分(自社)にふりかかるリスクの大きさがわかるうちは冷静な判断が可能なのですが、これがわからなくなると、どうしても保身に走るといいますか、冷静に考えているようでもバイアスがかかってしまうのが人間だと思います。
リスク管理が危機管理になる前になんとかできればいいのですが。。。
投稿: toshi | 2011年1月 6日 (木) 21時56分