ロイヤルHD社の代表取締役解任劇と「社外取締役」
新日鉄さんと住金さんの統合交渉に関する見出しが各紙一面を賑わせた2月4日、日経新聞に、「ロイヤルHD、役員刷新提案の代表取締役会長を解職」という小さな囲み記事が出ておりました。現会長を含む13名のロイヤルHD社株主が、連名で(3月の定時株主総会に)会社側が上程した役員選任議案とは異なる選任議案を提出したそうであります。取締役らは現会長に翻意を促したところ、意思は固かったため、やむなく代表取締役の地位を解職し、さらに定時総会では選任議案を出さない(つまり取締役の地位を失わしめる)ことを決定された、とのこと(こちらの読売新聞ニュースが詳しいようです)。ちなみにロイヤルHDさんとは、ファミレスの「ロイヤルホスト」でおなじみの大手外食産業の会社です。
会長側(提案株主側)の提案書によりますと、ロイヤル社で唯一の社外取締役の方(同社の大株主である、日本を代表する大手飲料メーカーの代表者)が、実質的に当社を支配しており、私利私欲のままに短期的利益をとりにいっており、従業員の処遇および顧客へのサービスが低下している、とのこと。なお日経記事によると、共同提案者のなかには、元取締役や子会社取締役も含まれている、とのことで、このあたりが、ロイヤル社側としては最も気になるところではないかと思います。
会社側議案を決議する取締役会において、賛成の意向を(おそらく)示した会長さんが、業務執行の段階で反対の意向を表明することが、たとえ株主としての地位で行ったものだとしても法律上問題とならないのか(会社側は、会長の解職理由として、このあたりを問題にしているのかもしれません)、創業家一族のおひとりである常勤監査役さんが、記者会見で経営陣と一緒に登場して「私は会社側を支持します」と表明する行動が、(創業家大株主の代表としての表明だとしましても)一般株主の利益保護のために、取締役の業務執行の適法性を監視検証する監査役の立場と矛盾しないのかどうか等、法律上の疑問もいくつか湧いてくるのでありますが、そのような問題への関心よりも、同じ外食産業(上場会社としての規模はだいぶ違いますが)の役員としましては、この騒動とてもよく理解できるところであります。
四季報で調べましたところ、同社はリーマンショック以降、2期連続の赤字決算、今期は売上高こそ落ち込むものの、なんとか利益を出すことか可能なようでして、不採算店舗の閉鎖はまだ続いているようであります。固定資産の減損処理も厳しいのではないか、と(これはあくまでも私の推測であります)。売上が低下しているにもかかわらず、利益をねん出していることは、店舗閉鎖もあるでしょうが、やはり人件費の削減が寄与している度合いが強いのではないでしょうか。外食産業の経費削減は、目に見えて従業員の処遇、サービスの低下につながるわけでして、おそらく「短期的利益をとりにいく」というのは、このあたりを指しているのかと思います。しかしながら、上場会社である以上、GC(継続企業の前提)に関する注記については、相当なプレッシャーとなりますし、「短期的利益を目指さないため」のMBOを意識したくても、金融機関の支援を得ることが困難になってしまうのではないかと思われます(そういえば、MBOを行ったすかいらーく社の件でも、ファンドと創業家元社長さんの間でゴタゴタがありましたね)。
EDNETで確認したところ、この社外取締役の方は、非常に低い報酬で業務に従事しておられるようですが、大手の飲料品メーカーさん主導で経営が回っている、というのも事実なのかもしれません。このあたり、同社の元幹部の方が現会長さん側の支援をしていることや、長年苦楽を共にしてきた名誉会長さんが会長と同時に取締役を退任することが、事の重大さを物語っているように思えます。野次馬的な立場の私からしますと、社外取締役の実質的支配という内容は、どうもよくわからず、むしろこういった急場をしのぐためには、短期的利益を取りに行くことも「やむをえない」ものと思われるのであります。ロイヤルホストのケータリングの良き伝統が、目に見えて低下していくことを見るに堪えない、というのが真相なのでしょうか?(ちなみに、委任状競争にまで発展する可能性はないようです)大きな会社の合併やMBOによる新たな船出など、事業再編への期待にばかり話題が集まるところでありますが、今の世の中、全社挙げて同じ方向を向くインセンティブがないために、いろんなところでロイヤルHDさんと同様の事態が勃発する火種があることは間違いないと確信しております。
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