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2011年2月 3日 (木)

内部通報者への解雇を無効とする判決(松江地裁)

(2月3日 追記)

共済組合内部における不正を厚労省に通報した際、内部情報をパソコンから持ち出したとして解雇処分とされた共済組合職員につきまして、本日、松江地裁は「内部通報による不正告発は共済組合の利益のために行われたものだから、情報の不正取得を理由とする解雇は無効」とする判決を出したそうであります。(産経新聞ニュースはこちら

通報事実の真実性を担保する資料を通報者が確保することは、組織の不正調査の実効性を高めるために不可欠でありますし、また通報者が公益通報者保護法上の外部通報の要件該当性を立証するためにも必要であります。また、情報の不正取得が組織の秘密との関係で問題となるのであれば、民事問題として処理すれば足りるはずであります。したがいまして、私自身はこの裁判所の判断は適切であろうかと思います。

ただ今回の事例は解雇権濫用事例でありますが、内部通報により事実上の不利益制裁を受けるようなケースが非常に問題かと思います。また、企業の内部情報が明らかに不正事実の根拠となりうるケースであれば良いでしょうが、資料を持ち出すまで不正の立証に不可欠なものかどうかわからないこともあるでしょう。そういった場合の情報持ち出し行為をどうみるのか、といったことも課題として残るところです。

(追記)2月3日の朝日新聞「法と経済のジャーナル」で詳細な事件経過についての記事が出ておりますね。私は朝刊社会面で読みましたが、大阪版しか掲載されていなかったようです。

内部告発の資料入手方法の正当性につきましては、すでに有名な宮崎信金事件(福岡高裁宮崎支部判決 平成14年7月2日 労判833号48頁以下)がありまして、そこでは企業の内部情報を許可なく取得し内部告発を行う行為については形式的には窃盗罪に該当し、また当該行為が会社の就業規則上の懲戒対象事由に該当するとしても、行為の目的や手段に正当性があり、また相当な手段による場合には、その違法性が否定されることが示されております。(拙著では、不正競争防止法平成21年改正との関連性も含めて、このあたりについて解説しておりますので、ご関心のある方はそちらをご参考ください)本判決も、この宮崎信金事件の基準に沿った形での判断であったと思われます。

なお、朝日「法と経済のジャーナル」の記事では、当該職員は情報取得に及ぶ以前から、何度も社内で是正を求めていたようですので、そのあたりも裁判所は手段の正当性判断のうえで考慮しているのではないだろうか・・・と推測いたします。

2月 3, 2011 内部通報制度 |

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