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2011年2月15日 (火)

IFRS(国際財務報告基準)と監査役監査基準について考える

東京は大雪だそうでありますが、皆様、無事出社されたのでしょうか?ここのところ、うまい具合に新幹線が正常運転できる日程で出張しておりましたが、今回も大雪と重ならずにほっとしております。本日(2月14日)は私が監査役を務めております会社において、会計監査人と監査役との監査報告会でありました。当社の会計監査人は新日本有限責任監査法人さんです。これまで何度も監査報告会をやってきましたが、今日は一番ホンネのお話ができ、監査業務を行う上でたいへん参考になりました。内容は、また一般化した形で(守秘義務に反するおそれがない形で)、別の機会にブログネタとして書きたいと思います。

さて、監査役と会計監査人との連携・協調といえば、最近読了いたしました「監査役制度の形成と展望」(佐藤敏昭著 成文堂)のなかに米国監査委員会報告の歴史と実状に関する解説がございます(205頁以下)。米国の監査委員会報告の中身は、2002年の米国SOX法規制以降、本格的に整備されていくわけですが、監査委員会報告書の実例を読みますと、なかなかオモシロイですね。日本の監査役監査報告と、分量でいえばそれほど変わらないのでありますが、会計監査人との交渉に関する記述や、会計監査人が本当に信用に値する組織を有しているのかどうかを調べた過程、そして会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断した過程等が淡々と記載されております。日本監査役協会の「ひな型」をそのまま使用している日本の監査役監査報告とはだいぶ様子が違うようであります。

著者の佐藤先生が解説しておられる中で最も興味を惹かれるのが「米国の監査委員会では、少なくとも3年に1度は、自社で作成している監査委員会監査基準を『委任状説明書』によって株主に開示している」という点であります。監査委員は出来あいのものを利用するのではなく、自社にふさわしい(最適な)監査基準を作成して、これを株主に公開してしまう、ということのようであります(ビックリ!)。日本でも各企業の監査役会が自前の監査基準を作成して、これを株主総会参考書類に添付する、ということもやってみたらオモシロイかもしれません。とりわけ財務報告の信頼性を監査役が補完する役割がはっきりしますし、また監査役の職務も一般に認知されることになりそうであります。もちろん日本の監査役と米国の監査委員とは、その機関としての位置づけも異なりますが、モニタリング部門も企業の情報開示の一端を担う必要性は、最近のガバナンス改革の流れの中で高まっているのではないでしょうか。

監査基準と会計基準の違いはありますが、今朝の日経ITproの連載記事におきまして、ビジネスブレイン太田昭和の方が「企業財務会計士が日本で活躍できる環境とは」というテーマで米国の経理部門の実態を解説しておられます。そのなかで、経理部門の重要な部署として「経理企画部門」があり、そこはグループ企業の会計基準の策定や企業にとって有利となる会計基準の適用判断を担当する中核組織だそうであります。この部署では「原則に基づいて、しっかりとしたルールを作成するために必要な包括的かつ体系的な会計知識が必要」となり、そのような部署に会計プロフェッションが在籍している、とのこと(米国公認会計士の資格者の数も非常に多いそうですが)。日本の企業にも、そういった組織があれば「企業財務会計士」が生きる道があるのですが、おそらく日本にはそういった会計リテラシーが必要となる経理部門は今後もなかなかできてこないのではないか、といった論調であります。

先の米国監査委員会報告の例といい、また経理企画部門の例といい、やはり日本とはずいぶんとマネージメントとしての会計・監査の意識が異なるように感じます。原則主義といいながら、本当に日本人は自社で包括的・体系的な会計知識を駆使して、自社に適用される(適法な範囲において最も有利な)会計基準を作成もしくは選択できるのでしょうか?ひょっとすると後から「あれは、まちがってました」ということで、虚偽記載のリスクが増えることにならないのでしょうか?米国もIFRSの直接適用について、対応がいまだ混沌としているようですが、そもそも内部統制や新たな会計基準を迎え入れても動じないだけの会計リテラシーを身につけている企業が多いようですので、ずいぶんと日本の事情とは異なるように思います。

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