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2011年2月28日 (月)

京大入試問題漏えい事件と「偽計業務妨害罪」

まぁ、18~19歳の未成年者がやったんだから・・・、などと最初は安易に考えておりましたが、(複数人関与の可能性も浮上し)意外に大きな問題に発展しておりますし、2月28日には大学側が京都府警に被害届を提出するようですので、本件に関して少しばかり感想を述べておきたいと思います(ほとんどビジネス法務とは関係ございませんが)。すでにご承知のとおり、京都大学の二次試験の最中、ある受験生がネット掲示板に試験問題を流出させて掲示板上で他者による回答を得ていた、という件です。facebookでは発信者情報開示(プロバイダー責任法)の機能不全こそ問題では?といったご意見が強いようですが、とりあえず世間的には偽計業務妨害罪との関係で話題になっておりますので、そっちのお話であります。

27日の各局ニュースによると、京大入試漏えい問題で大学側の記者会見が行われ、偽計業務妨害罪の疑いがあるため被害届を提出する、とのこと。(毎日新聞ニュースはこちらです)偽計業務妨害罪といいますのは、「人の業務の平穏」を保護法益とした刑法犯(233条)です。偽計を用いて人の業務を妨害した者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。「偽計を用いる」といいますのは、人の業務を妨害するために他人の不知又は錯誤を利用する意図をもって錯誤を生じさせる手段を施すことをいいます(大阪高裁昭和29年11月12日判決参照)。また、入試事務は受験生の自由を拘束するものではありませんので、京都大学という国立大学法人(みなし公務員)であっても「非権力的公務」に該当し、偽計業務妨害罪における「業務」に該当します(京都地裁昭和44年8月30日判決参照)。

ところで、本件が大きな話題となるのは、やはり「不正をやって受かるヤツがいたらけしからん、真面目に勉強してきた受験生がうかばれないじゃないか」という点ではないかと。これは京都大学関係者の記者会見内容からも窺われます。つまり入試の公正性、ということが問題となるのですが、そうしますと、「横の受験生の答案をカンニングする」とか「親のコネで裏口入学をする」ということとの区別はどうするのか、という疑問が生じます。また、一時期流行した「替え玉受験」もやはり偽計業務妨害罪となるのでしょうか?秋田大学医学部騒動(ニュースはこちら)のように、教授が合否情報を受験生に漏らす行為はどうなるのでしょうか?私の素朴な感覚では、少なくとも一般のカンニングは、たしかに入試制度の公正を害する行為ではありますが、偽計業務妨害罪という刑法犯に該当するようには思えないのであります。また入試制度の公正性、ということを強調しますと、それでは「公正な試験が侵害されたので、もう一回試験をやり直します」といった意見も出てきそうな気もいたします。

そこで、今回のように携帯とネット掲示板を活用して不正受験をしたケースと、一般のカンニングを区別でき、なおかつ「もう一回試験を行う」ことを回避するためには、単に公正な入試業務が害された、ということではなく、大学側の情報管理業務が侵害されたことを「法益侵害」と捉えるべきではないでしょうか。そもそも「いったい何が入学試験の公正性なのか」という点は、侵害された者による主観的判断に左右されるものであって極めて不明瞭であります。「入試の公正性」については、国家権力が介入するよりも、大学の自治に第一次判断権を委ねて、たとえばカンニングが発生した場合の処分や、裏口入学が発覚した場合の対応は大学側に任せる、とするのが適切かもしれません。しかし大学の情報管理業務の平穏は、試験終了までに不特定多数の者が試験問題を閲覧できる状況におかれることになりますので、試験制度が成り立たないほどの重大な事態を生じさせます。さらに入試業務を行う大学の信用にも関わることになります。そこで今回の例では、大学の情報管理業務に焦点をあてて、偽計業務妨害罪の適用の可否を検討することになるのではないか、との感想を持ちました。このような考え方ですと、たとえ流出させた受験生が落第していても、その犯罪の成否には影響しないことになります。「どうせ落ちたんだから、入試業務への影響は軽微だった」などという抗弁は成り立たないと思われます。結論としましては、大学側に知られないようにネット掲示板と携帯電話を利用して、試験終了前に試験問題を流出させるわけですから、やはり偽計業務妨害が成立しそうな気もしますが。

過去の替え玉受験問題でも、入試制度の公正性が侵害されたことには間違いないわけですが、有印私文書偽造、同行使罪が適用されており、「替え玉受験」特有の行動を捉えて犯罪行為を立件しています。これもやはり「ズルした奴は許せない」というのが世間の感覚であると思いますが、あえて「入試業務の公正」という点ではないところで社会的な要請に答えたのではないかと推測いたします。いずれにしましても、ネット掲示板を活用しての情報流出など、すぐにバレて騒ぎになることは予想できそうですから(笑)、やった本人は意外と単純な気持ちから行動に及んだのではないか・・・・・と思うのでありますが、いかがなもんでしょうか(^^;

2月 28, 2011 刑事系 |

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コメント

私には、捜査権限ひいては強制処分の発動のために構成要件を便宜的に借用しているとしか思えません。相撲八百長の件で元検事が、携帯電話を強制的に調べる方法がある、業務妨害で告訴することだ、といった主旨のことを言っていました。今回はその応用と見えますが、このノリでいくと世間の言う悪質な不正行為であればおおかた刑法犯として、結果的に関係ない人・物も含めて調べることができてしまいます。野次馬的にみれば真実に近づいてたいへん結構なことですが、こんな形で捜査の効果だけを借用するのは本来おかしいのではないでしょうか?住居侵入罪もしかりです。

投稿: JFK | 2011年2月28日 (月) 22時24分

より根本から考えればよい。入試は、無条件に「社会的に意味がある」としていること、「公平、正確さ」とやらに「絶対的な意味」を付加している社会常識の偏見をどう是正していくかが問題。どうせ米国の真似をするならば、イルを易しくイズルを難しくするための方策、4月から新学期として夏休み前までを最初に登録した学生の数が半減するまでの期間とすれば良い。ここで、最初の時(即ち有名大学の卒業の難しさを入試無しで体感する最初の学生諸君)は前から論議の対象となっている、9月入学と絡めたら良い。また、今いる学生は3月から9月まで外国語研修のために手当をすれば良い。語学教員等は彼らの職が無くならないように特段の配慮は必要だが、「でもしか」教官はこの開会に退いてもらえば良い。こうすれば、大した歪み無しに現行制度から新しい制度に変化できる。

投稿: 井上淳 | 2011年3月 2日 (水) 15時27分

「試験終了までに不特定多数の者が試験問題を閲覧できる」とありますが、「不特定多数」の中には何も知らない受験会場の一般受験生を含みません。従って「試験制度が成り立たないほどの重大な事態」となっていないのは明らかで、現に何事もなく平穏に入試が終わっています。もしこの受験生が愉快犯であって、仮に意図的に不合格の答案用紙を提出していたなら、誰も特定の被害を被っていることにはなりません。
さらに「入試業務を行う大学の信用」ではなく「現行の入試制度の信用」に関わるのであって、どこの大学でも可能な不正行為だったはずです。今回の手口を防止するのは、全ての大学の「当然の」責務であり、今回発覚した特定の大学だけが被害者ではないと思います。とにかく今回もまた、偽計業務妨害ではない別件で逮捕になると思います。

投稿: こばとむ | 2011年3月 2日 (水) 17時47分

ご無沙汰しております。

入試制度云々の話や刑法的な話は分かりませんが、企業では、このような事態も想定した対策を行っているところもあります。今回のような態様のほかにも、例えば、株主総会等の閉ざされた空間での質議が動画で外部に流出したり、発言を捉えてつぶやかれたりという事態を想定して、少なくとも会場内からは情報発信が出来ないように携帯電話の電波が入らない会場を使うとか、重要な会議中には、私有携帯もPCも持ち込ませないなどの対策は行われているところもあります。

もちろん、受験生の規模を考えた場合、会場設営上の工夫には限界がありますが、全く想定していなかったというのは、あまりに危機管理が杜撰といわざるを得ないと思いますし、試験監督のあり方云々というのも枝葉末節のような気がします。試験会場に携帯電話を持ち込ませる意味は本当にあるのでしょうか。

後は、携帯電話を小学生から持つような時代にもかかわらず、情報リテラシーや携帯電話使用に伴うリスクに関する教育の不十分さを物語るものだと思います。こんなことやったら、通常は何の工夫もしなければ(あえて書きませんが)、簡単に足がつくんですが・・・。

情報機器の発展に伴うリスク対策や利用上の(モラルも含めた)教育の甘さの方が問題だと思います。暴論かも知れませんが、社会に警鐘を鳴らす意味では、刑事事件化できるのか、注目しております。

ちなみに、本屋でのデジタル万引きなども含めて、情報窃盗はこれだけ情報インフラが発展しても刑事的処分が難しい状況ですが、いつになったら
立法府が社会の情勢に追いつくのでしょうか。だいぶ昔の刑法の専門書にも情報に対する窃盗罪の限界が書かれているのに、議員も法律家も学者も何をしてるんでしょうか。

投稿: コンプロ | 2011年3月 2日 (水) 23時45分

『大学側の情報管理業務が侵害されたことを「法益侵害」と捉えるべき』
とおっしゃりながら、カンニングペーパーや裏口入学、替え玉受験は刑事犯罪ではないとおっしゃる。マスコミ等の論調もこれと似ています。
しかし、これには矛盾があると考えます。
既知のカンニング行為や不正行為は刑事犯罪ではない、たしかにそうです。
では情報技術を使った新しいカンニングになると何故犯罪行為に昇格するのか?これが疑問なんです。そもそも、今回のやり方が全くの新手口だとすると、解答案を入手できたのは当の本人だけです。複数の可能性もありますが、カンニングは少数でやるからこそ優位性を保てるのですから、実際には身内でカンニングペーパーを回すのと大して変わらないレベルにとどまると思われます。また、ネットへの書き込み方をみても、一見して執行中の入試問題だとわかる表現ではないようです。
そうすると、斬新で驚きを与える手口ではあるものの、影響範囲すなわち情報管理業務の侵害度合いは既知のカンニング行為とほとんど同じです。なのに何故今回のケースだけが刑事犯罪だという結論になるのか、疑問です。法益侵害の捉え方の問題ではなく、もともと犯罪ではない行為を犯罪捜査の手法で調べているのが現実ではないでしょうか。情報管理を法益として保護する法律は他にありますし、それで検挙できないのであれば立法されるまでは仕方がない(立法されないということは主権者が刑罰までは不要と判断しているということ)。それが罪刑法定主義というものではないでしょうか。さらに言うと、先生のおっしゃる「情報管理業務の侵害」を狭く捉えると、外に送信した時点で既遂となる行為を対象に議論することになり、本件の本質(問題を外部に示して解答案を募り解答案を得る行為)とズレます。
本件で妥当なのは、試験上の不正行為への処分(例えば採点除外処分)。これ以上でも以下でもないでしょう。

もっとも、意を通じた同時多数犯なら業務妨害罪もあり得ると思います。大学側の事前調査でその可能性があったから犯罪捜査に移行した、というのであれば納得できます。しかし多数だと成功率も優位性も下がるので、受験者側は単独、多くても数人としか思えません。

業務妨害罪の便宜的利用を疑問視する弁護士がたくさん居てしかるべきと思いますがいかがでしょうか。

投稿: JFK | 2011年3月 3日 (木) 02時35分

皆様、有益なご指摘ありがとうございます。

なるほど、JFKさんのおっしゃることはごもっともかと。ただ、いまのところ同業者の方で偽計業務妨害罪が成立しない、と主張され、その有力な根拠を示しておられる方はいらっしゃらないようですね。

たとえば試験用紙の印刷を受注した業者が、試験開始前日に試験用紙を携帯で撮影して、その内容を掲示板にアップした、という場合は偽計業務妨害にあたるのでしょうか?それとも、こういったケースではほかに刑事的制裁の対象となる規定はあるのでしょうか?
新たなカンニング手口、という発想から離れて、純粋に「情報管理業務」の侵害という視点から考えてみたいのですが。

投稿: toshi | 2011年3月 3日 (木) 10時10分

当方、法律の専門家ではありませんが、教育関係に身を置く者です。
今回の一件をもう少しシンプルに捉えますと、京大側にとってはこのような斬新なカンニング手法が京大の入試において明らかになったことで、京都大学というブランドを低下させる恐れが発生し、かつ実務面でも報道機関対応や受験生や保護者からの問い合わせ、監督省庁との連絡など意図しない業務が多数発生したと考えられます。そうした結果に基づいて被害届を提出したことは妥当であり、警察も公的機関ですから世論の高まりに応じて届に即応したものと思います。
その際、どの法律を適用すべきかは捜査の進展によって変わることもあり得るでしょうが、カンニング行為そのものが犯罪かといえばそうではないと思います。試験現場においては、注意事項の読み上げ・記載、監督員の巡回などによってそうした行為の防止しかできません。今回新たな手法が明らかになったことで、今後全国のセンター・大学入学試験実施態勢の見直しが迫られることになりますが、そのことと京都大学が今回被った被害とは別個のものでしょう。ですので、業務の煩雑化に伴う人件費分、ならびに京都大学の信用低下の恐れとそれに伴う損害見込みが「被害」であるでしょうし、ある手段を用いて業務を妨害したことは免れないことから、その手段が明らかになれば偽計業務妨害罪の適用は可能かと思います。
今回新たな手法で、かつインターネットという公開の場でそれが実行された可能性が高いことから社会的関心が高まり、結果として京都大学に被害を与えたことそのものは事実でしょう。
話が法律から逸れますが、カンニング発生の土壌としての日本の入試制度や大学の在り方がこういう事件が起きるたびに論議や批判の対象になりますが、例えば秋田県にある国際教養大学では、いわゆるアメリカの一部の大学にみられるような厳しいカリキュラムや短期留学を課すことにより、卒業生の評価を高めることに成功しています。しかし、そうして大学の評価が高まれば人気は上がり、今や超難関大学と言っていいほど入学が難しくなっています。つまり、「入れてから育てる」ことを実践した結果、大学のキャパシティを超える学生が応募するようになり、それを選抜する。誰それと全て受け入れる大学など、狭い日本において物理的に存在不可能ですし、そもそもあらゆるコスト(学費を払う側の家計、教育業務を実施する側の大学)が見合いません。また、学生を学内に滞留させる卒業難化は、学費を支払う家計への負担は、難化の程度は、またそれができるほどのレベルの学生を集めている大学がどれほどか、など議論や課題、大学外への影響や文化的背景など様々な要素があり、政治主導などと言ってもそれをトピックとすることを現在の日本国民が是とするかは疑問です。おそらく日本では前述の大学のような例が数例存在するようになるだけで需要を満たすことになるでしょう。
法も教育も、使用者であり消費者である国民の視点や世論に使われている、と個人的に改めて考えさせられました。

投稿: KESH | 2011年3月 3日 (木) 11時52分

素人の一般市民です。
今回の事件は違法なのでしょうか?試験結果の再確認のために通常業務を妨害された罪とされてますが、本当に試験結果を見直さなければならないのでしょうか。同一問題を2回(前期・後期)出題するならともかく試験時間にカンニング計画者以外が回答にアクセスできるとは思えません。そのカンニング者を突き止める必要があったのでしょうか。ズルされて不合格になった受験者が告発するのなら理解できますが、試験者である大学側が告発するのは理解できない。既に韓国で同様の事件が報告されています。本当にカンニングが問題なら、韓国の事例を知りながら採るべき対策をとらなかった大学側に問題があります。そちらは不問なのでしょうか?入試でなく工業製品だったら確実にメーカー(試験者)が罪に問われます。これでは姉歯事件で官庁の建築主事が無罪で民間機関が有罪とされた「半冤罪」と同じ構図です。市民感覚は分かりますが法律家の方の法的見識を疑いたい。大衆が欲すれば法治国家でもリンチをしてよいのだろうか? それと同等レベルの話に思えます。

投稿: unknown | 2011年3月 3日 (木) 16時57分

■DMORIです。
この予備校生が有罪になるかという、法務の観点はおまかせします。私の観点は、IPアドレスから電話会社が容易に分かる探索方法があるのに、この予備校生はいったいどういう感覚で、今回の不正をやったのだろうかということです。
詳しくは自分のブログに書きましたが、一番の問題は、この予備校生が勉強の成績はけっこう優秀なレベルにあったというのに、IPアドレスから簡単に突き止められてしまうという、こんなことも知らなかったとしたら、学校でのIT教育の見直しが必要でしょう。
ネットへ殺人予告にも思われる書き込みがあれば、警察への通報もあり、プロバイダーが提供するIPアドレス情報で逮捕されることがありますが、その容疑者が小学生というケースも多く発生しています。
子どもが冗談半分でネット上に落書きしても、大きな問題になるということや、いくらハンドルネームで書き込んでも、通信ルートはほとんど解明されてしまうという、リスクマネジメントについて、IT教育の一環としてしっかり教えておくべきです。

投稿: DMORI | 2011年3月 3日 (木) 22時10分

初めまして。記事拝見させていただきました。
NTT DOCOMOやACCSの流出事件では、こっそり顧客データなどを
持ち出し、流出させた人が威力業務妨害で捕まりましたが、
なぜ今回は偽計業務妨害なのでしょうか?
不知を利用して問題を流出させたから偽計、ということならば
不知を利用して社内データを流出させることも偽計となるはずではないのでしょうか。
私は法律の専門家ではない一般人ですが、疑問に持ちましたので
もしよろしければどなたか専門の方のご意見が伺いたいです。

投稿: 空 | 2011年3月 3日 (木) 22時40分

報道にて、「業務」の概念を広めにとることで犯罪捜査を遂行してきたのだという見解に触れました。試験執行は妨害されていないが、採点、合格発表、入学というプロセスも含めて一連の業務とみなし、事実調査等々で手間を取らせ混乱に至らしめたということですか。ということは、組織内での不正行為にはほぼ例外なく業務妨害罪が付いてくるということですね。横領やインサイダー取引など刑事罰のある事案についても、法益が異なる以上理論的には業務妨害罪との観念的競合、あるいは、新手口を使った組織内不正行為はいわば「不正混乱誘発罪」という刑事犯罪であり、業務妨害罪が一般条項の役割を果たすことになりますね。

報道されている弁明からして故意のない可能性が強い今回の受験生を即刻逮捕したことには更なる疑問を感じます(本罪に過失類型はありませんよね?)。(大)企業の事実調査、捜査機関の便宜(業務妨害罪の非謙抑的活用)に道を拓くための犠牲になってしまわないでしょうか。

ITリテラシーの観点はDMORIさんと同感です。でも仮にリテラシーが低くてカンニングが露呈してしまったのだとすれば尚のこと過失ですよね。
なのに、重罪でひっそり実刑処罰されるよりも大きな制裁を受けてしまって本当に・・・

捜査を発動するための一般条項の創設(既成事実化)に対しては、私のような素人ではなく法律家自身からも異論が出てくるべきです。

投稿: JFK | 2011年3月 4日 (金) 00時26分

たしかに報道機関なのか警察なのかはわかりませんが、偽計業務妨害罪の「業務」を広く捉えることはおかしいですね。入試を混乱させ、合否の判定に余計な手間をとらせたことを業務と報道されていますが、これは明らかに誤りだと思います。それでは被疑者の故意を認定できませんね。(被疑者は世間をかく乱するためにやったのではなく、あくまでも合格するためにやったようですから)
ということで、私は大学が入試を円滑に進めるための情報管理業務、という概念を持ち出す必要があると思います。もちろん、私はとくに偽計業務妨害罪でなんとしてでも起訴すべきとは言っておりません。あくまでも他のカンニングとは異なり、これだけを取り上げて警察権力をもってする正当性の根拠を考えるならば・・・ということです。

投稿: toshi | 2011年3月 4日 (金) 01時10分

ちょっと論点はずれますが、最初に京大が「おたくの入試問題が漏えいしているではないか」と知ったのはどういったきっかけだったのでしょうか?「入試関係者」からの通報でしたっけ?その入試関係者はどのような経緯ですぐに漏えいの事実を知ったのか、そのあたりにも興味があるのですが。もし報道されておりましたらお教えいただければ、と。

投稿: toshi | 2011年3月 4日 (金) 01時14分

こんにちは。思想が右左だとか体制反体制という人間ではなく
偏屈なド素人が思った事です。法律論ではないですが・・・・

京大は被害届けを選択して告訴しなかったのか?

カンニングで業務を妨害されたという理由で偽計業務罪で警察が動けるなら、大学教授の研究費不正流用や警察による不正会計も
調査委員会等組織を立ち上げ調べていることを考えれば
犯罪になるのではないか?

カンニング受験生よりもよっぽど悪質だと思うのですが・・・・

投稿: om | 2011年3月 4日 (金) 12時04分

 逮捕状の発給条件である「犯罪の嫌疑」とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることとされ、最高裁は「犯罪を犯したことが相当程度の可能性をもって認められれば足りる」(最決H19年12月13日)として、発給条件を緩和しています。
 今回のカンニング事件で予備校生の嫌疑は偽計業務妨害罪ですが、上記の「相当程度の可能性」からすれば、予備校生の逮捕が直ちに違法とは言えないものの、今回の逮捕は、次の点で大きな問題があると考えます。

(1)試験でのカンニングを偽計業務妨害罪における「偽計」と解して構成要件該当性を認めると、業務妨害罪は危険犯とするのが通説・判例(最判S28)だから、業務妨害の結果を立証することなしに(あるいは経済損害の発生の有無にかかわらず)、あらゆる試験における不正行為が偽計業務妨害罪の構成要件に該当することになる(ただし、これまでは経済損害が軽微な場合は不起訴となることが多かったようである)。

(2)業務妨害罪における故意は、「業務妨害についての認識(あるいは予見)」とすることに争いがないと考えられるため、試験に合格することだけを考えている受験生は、故意がないということになり、結局、犯罪は不成立(多分、不起訴処分になる)。

(3)犯罪が不成立となる可能性が高いカンニング事件で、警察が偽計業務妨害罪で逮捕する前例を作ると、同種の事件で、逮捕・勾留→事件送致→不起訴が繰り返され、いたずらに人権侵害が行われる。さらに、被疑者が「合格することが主目的ではなく、入試事務を妨害する意思もあった。」と供述すると、故意が認定され、偽計業務妨害罪が成立するので、取調段階での自白強要が生じやすい。

(4)カンニングや相撲の八百長を取り締まる明確な罰条がないため、社会的に注目をあびる類似事件では、処罰の必要性から業務妨害罪における「業務」範囲が拡張解釈され、処罰範囲がいたずらに広がる虞れがある。

(5)なお、首都大学東京の前田雅英教授は、マスコミ取材に対して「大学入試での不正行為は、偽計業務妨害罪が成立する」と発言したと伝えられている。彼は東大・平野龍一門下で、犯罪論について「結果無価値論」を採用しながらも、刑法解釈に「国民の規範意識」を持ち込んで、理論よりも実務との整合性を重視する立場であり、学説としては通説とは言い難いが、警察・検察などの司法実務家から圧倒的な支持を受けており、発言の影響は大きい。これによって類似事件で偽計業務妨害罪の適用が定着することが、強く懸念される。

投稿: tochan | 2011年3月 4日 (金) 14時21分

仮に「業務妨害」を「採点から合格発表までの業務の円滑な遂行の妨害」と捉えるならば、私も本件では故意の認定が困難であると考えます。

しかし、本件が仮に起訴に至った場合は、検察側はおそらく未必の故意の存在を主張するのではないでしょうか。
すなわち、被疑者が過去にも頻繁にYahoo!知恵袋を使用していたことから、
「掲示板を使用して質問をすれば即時に正解を得られることを熟知していたため実際の試験でも利用した。
そして、このような行為が露見した場合に大学側の業務に混乱が生じる可能性も認識していた。」
と主張するのではないかと予想します。

しかし、カンニングをする未成年の受験生は、
「ちょっとした誘惑に駆られてやったのであり、それが露見した暁のことなど想像だにしていない」
ことが通常でしょうから、このような立論は無理があると思います。

やはり本件では入試自体の公正が害される危険性が生じたことを業務妨害と捉えることが自然であり、
すると、従来型(?)のカンニングが偽計業務妨害罪で立件された前例がないことと整合性がとれない、
というのが私の感想です。

投稿: Y.T. | 2011年3月 5日 (土) 00時06分

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