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2011年2月14日 (月)

監査役監査とコンプライアンスの接点について考える

ときどきお仕事や研究会などでお世話になっておりますKPMGさんが「日本企業の不正に関する実態調査2010」を公表されたそうで、要旨を興味深く拝見させていただきました。不正の発覚経路につきましては、やはり「内部通報による不正発見」が一番多かったそうであります。また「業務処理統制」や「管理者によるモニタリング」で不正が発見される傾向もここ数年強くなったようですので、やはり内部統制報告制度の実施によって不正の早期発見および不正抑止の効果は、各企業とも、そこそこ出ているのではないでしょうか?

いっぽう監査役監査で不正が発覚する割合というのは極めて低いようです。監査役は本当に監査をしているのか?と言われそうですが、重要なのは、誰かが不正を見つけて、きちんと監査役のところへ報告されるかどうか・・・・・ということですので、まァ現実的な数字ではないかと思います。

さて、監査役監査とコンプライアンスの関係について、少し考える機会がございました。普段、コンプライアンスのお話は経営者向けのものが多いので、これまではあまり監査役さん向けにお話をしたことがありませんでした。どうしても「違法性監査」という監査役監査の本質が頭から抜けないものでして、「法に照らして取締役の職務執行を監視検証する」というところから出発しますと、「社会からの要請への対応」という最近のコンプライアンスの考え方が監査役監査とはあまりマッチングしないのではないか・・・と思っていたからであります。

しかし会社法382条は監査役の取締役会に対する報告義務について規定しており、そこには取締役の法令定款違反の事実と並んで「不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき」「著しく不当な事実があるとき」も監査役は(取締役会設置会社の場合)取締役会に報告義務があることが明記されています。ここで法令定款違反の事実とは別個に不正の行為やその「おそれ」が報告義務の対象になっていることがミソでありまして、たとえば新基本法コンメンタール2 235頁によりますと、「この不正の行為という概念は必ずしも明確ではないが、法令定款違反には該当しないが、社会的に不当な行為も含む概念として解釈するならば、監査役の報告義務の範囲は拡充されたものと理解できる」と解説されております(中央大学法科大学院の野村修也先生のご解説)。また「著しく不当な事実」というのも、法令定款違反ではないが、それを決定すること・行うことが妥当でない場合を指すと解されているおうであります(こちらは会社法コンメンタール8 402頁 砂田先生のご解説)。

もちろん、社内における監査役の活動として、取締役の職務執行の妥当性にまで意見を述べることについて法が規制しているわけではなく、むしろ監査役に期待される役割(ベストプラクティス)と考えることはできるわけですが、「報告義務」となりますと、むしろ監査役に課せられた法的責任、という意味合いが強くなります。そこに、不正もしくは不正行為のおそれがあると認められるときにも法的に報告義務があるとなりますと、やはり監査役さんはコンプライアンス的な発想を要求されるのかもしれないなァ・・・・・と、ぼんやりと考えるようになりました。つまり「違法」とまでは言えないかもしれないが、取締役の職務執行が社会的な評価を毀損してしまうおそれがあれば、それに監査役は気づく必要があります。また、取締役の違法行為だけでなく、コンプライアンス上疑義のある職務執行があれば、これを自ら調査することも法的義務として考えられるのかもしれません。

報告の対象が「法令定款違反の事実」ということになりますと、さきほどのKPMGさんの報告書ではございませんが、管理者のモニタリング結果がきちんと監査役さんに伝達される体制の整備が必要となってくるものと思います。(会社法施行規則100条3項3号等)。しかし不正の「おそれ」が報告義務の対象に含まれるとなりますと、今度は監査役さんのコンプライアンス的発想に基づく「気づき」が大切になってくるわけでありまして、今回の私の監査役協会でのセミナー主題であります「監査役さんの有事における気づき」というものも、ベストプラクティスを越えて、法的責任にも関連するテーマになってくるのではないか・・・と考えたりしています。

2月 14, 2011 監査役の理想と現実 |

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