福岡魚市場株主代表訴訟判決と取締役の子会社不正調査義務
東日本大震災関連の話題が続きましたが、ひさしぶりに当ブログらしいエントリーを書かせていただきます。といいましても備忘録程度でありますが、株式会社福岡魚市場の取締役3名が、株主代表訴訟において18億円ほどの損害賠償を命ぜられたそうであります。(朝日新聞の「法と経済のジャーナル」で知りました。ちなみに西日本新聞ニュースはこちらです。恥ずかしながら、これまで全く気付いておりませんでした)すでに最高裁のHPより、判決全文が閲覧可能であります。
同社の100%子会社であるF社が「グルグル回し取引」(架空循環取引の一種)を平成11年ころから行い、不良在庫が異常に積みあがっていたにもかかわらず、親会社取締役(F社の非常勤取締役や非常勤監査役も兼務)ら3名は、十分な調査もせずに15億円ほどの貸付債権を放棄し、また新たに3億円を融資して、これも焦げ付いたため、結局同社に18億円ほどの損害が発生した、被告3名はグルグル回し取引を早期に発見していれば、このような損害は発生しなかった、というのが原告側の主張のようであります。被告側は、このような架空取引は相手方のある不正行為であるため、なかなか不正を発見することができなかった、よって善管注意義務、忠実義務違反の事実はないと反論しておりました。判決は、取締役らは従来から不良在庫の存在を認識していたこと、あるいは公認会計士より子会社の在庫について確認の必要性を指摘されていたことなどから、親会社取締役らは不正の疑惑解明のための作為義務は存在した、と認定されております。
またきちんと判決全文を読んだうえで整理をしたいと思っておりますが、子会社における不正会計問題が頻繁に発覚する昨今、親会社取締役の不正調査に関する法的責任を論じた貴重な判決ではないかと思われます(まだ、ざっと目を通しただけですが)。具体的には公認会計士から「不正在庫」の調査等を指摘された時点(まさにこれが子会社不正に関する「異常な兆候」への取締役のアクセスの時点)以降の親会社取締役の作為義務(善管注意義務違反の根拠)の内容が注目されるところです。ライブドア株主損害賠償請求訴訟の第一審判決において、監査役の監査見逃し責任が認められる根拠も、会計士からの粉飾の疑惑を監査役が知った時点でありました。
そういえば福岡魚市場さんは、平成8年ころにも代表者の有価証券投資による多大な損害に関する取締役の法的責任を問う裁判がありました。しかしこのたびの代表訴訟では、取締役らが不正に関与していたから、というのではなく、監視義務を怠っていた、ということで損害賠償が認められておりますので、(同社は上場会社ではございませんが)おそらく今後の子会社調査に関する損害賠償請求訴訟等にも影響を及ぼす可能性がありそうです。
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