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2011年3月 4日 (金)

組織的資金流出事件と社外取締役、監査役らの法的責任

京大入試漏洩事件と偽計業務妨害罪に関するエントリーには多数のアクセスが続いている状況でございますが、私とは反対の有益なご意見もコメントでいただいておりますので、どうかそちらもご参照くださいませ。

さて、市場関係者の方々から、最近たいへんご関心の高い「企業不祥事発生時における第三者委員会制度」でございますが、3月1日fonfun社(JASDAQ)の不正会計事件に関する第三者委員会報告書(要旨)が公表され、同日、大証より監理銘柄に指定されました。(同2日には監査役会の発案によって経営監視委員会が発足する旨のリリースが出されております。)この第三者調査委員会の調査目的は、主に代表取締役を含む、経営陣による不正行為の実態解明および経営陣の法的責任の有無にあるようです。

第三者調査委員会の調査結果のお知らせ(3月1日付)

「経営監視委員会」発足のお知らせ(3月2日付)

fonfun社の経営状況や大株主との関係などは、とくに存じ上げているわけではございませんし、調査委員会の委員の皆様は、たいへんご高名な方々ばかりでありますので、とても私などが偉そうに意見を述べられる立場にはないことは承知のうえでありますが、素朴な疑問が生じましたので、あえて一言だけ読後の感想を述べさせていただきます。

当該調査委員会報告書では、売上約150億の上場会社において、6億ほどの資産が流出しており、社長を含めた3名の社内取締役が不正に加担していることが認定され、これを「組織ぐるみの不正行為」と断定しています。また原因として、同社の内部統制の欠如についても指摘があります。しかしながら同社の社外取締役、監査役らについてはその責任を追及することは困難である、と結論つけておられます。また会計監査人についても法的責任を追及することは困難とのことであります。

責任追及が困難とされる理由について、16名に及ぶヒアリングの結果と思われますので、現時点ではとくに意見を述べるつもりはございませんが、もし社外取締役や監査役の方々が社内取締役らの組織ぐるみの不正を見抜けなかったことについて「無理もない」とのことであれば、それではなぜ社外取締役や監査役の方々に内部統制構築義務違反や、内部統制に関する監査懈怠の責任追及はできないのでしょうか?

たとえ1億円以上の経費支出であっても、それは代表取締役の独断で執行されていたのが常態であり取締役会へ上程されることはなかったとのことでありますが、それ自体が上場会社として異常な状況にあり、とりわけ財務報告の信頼性確保のためのシステムの整備自体に明らかに問題があったのではないかと思うのでありますが、この点について社外取締役や監査役の方々が、これまで何等の指摘もしておられないとすれば、これは法的責任とは無関係なのでしょうか?

もし結論的に、責任追及が困難であるのならば、この点についての詳細な説明が必要であると考えます。そのような説明がないために、その後の「再発防止策」の内容も、なにゆえこのような防止策が効果的なのか、まったく記載内容からは理解できないと思われます。(本当は報告書全文を読むと理解でき、これは要旨なので理解できない、ということも考えられるのでありますが。)

名目的監査役に対して損害賠償責任が認められた判決例などもありますし、今回の事例はすでに会社法や金商法で内部統制に関する厳しい規制が施行された後の不正行為に関するものでありますので、せめて上記のあたりについての解説が最低限度必要なのではないでしょうか。たいへん影響力のある委員の方々が、こういった組織ぐるみの不正行為が発生しているにもかかわらず、監査・監督を行う立場の方々に責任追及が困難、と認定することは同種事案への先例的な意味合いが強いものと思います。ぜひとも、このあたりをどの程度委員の方々が考慮されたのか、是非知りたいところであります。

3月 4, 2011 独立第三者委員会 |

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コメント

確定申告が一息つきまして(というか,作業に飽きて),調査結果やら,有価証券報告書,株主総会の招集通知などを眺めておりますと,疑問点がいくつか目につきました。
小職も本件会社に関する知識はまったくなく,リリースを見て,初めてその存在を認識したものですが,監査役や監査法人に責任を追及することが困難であるという,調査委員会の結論には大いに疑問が残りました。
何より,3人しかいない取締役全員が辞任というわけにもいかないとは思いますが,この調査結果を資金流出の首謀者名でリリースするのは,いかにも株主を軽視したものではないでしょうか。
また,会計監査人にも「特段の任務懈怠」を認定することは困難としていますが,引き続き監査を委嘱して大丈夫でしょうか。
たとえば,平成22年3月期決算では,ソフトウエア仮勘定161百万円が,前期から同額で引き継がれておりますが,1年間,開発がストップしたソフトウエアって……(報告書の第3行為に基づく支出と同額ですが)。
おまけに長期未収金が8Ⅰ7百万円あって,前期(896百万円)からは減少しているものの,同額の貸倒引当金が設定されています。これってなんでしょうね。流動資産の部にも貸倒引当金が30百万円あって,対象は売掛金と未収入金,前渡金(合計で262百万円)くらいですが,貸倒引当金繰入額が多いような気がします。貸倒引当金については,監査人の指摘のもとに計上したもののようですが(報告書より),引当金を計上しているから適正意見,ということにはならないのではないでしょうか。
また,「財務及び会計に関する相当程度の知見」を有していらっしゃる(株主総会招集通知より),監査役のみなさんは,こうした財務諸表を見て,何も感じなかったのでしょうか。

投稿: Tenpoint | 2011年3月 4日 (金) 12時10分

訂正です(自分のコメントが見られないので、記憶で書いています)。
社外取締役2名は不正行為当時、在任中でした。従って社外取締役も社外監査役も効用はない(場合もある)ということになってしまいました。また20年3月末の監査役は社内1名,社外2名でした。
いずれにせよ6億円の不正支出のうち、「A関係者」の株式取得は2億円なのに、「報告書(概要)」がこの事案を「株式取得資金等を流出させた」としているのが不思議です。その「等」こそが問題だと思うのですが。

投稿: skydog | 2011年3月 5日 (土) 08時55分

tenpointさん、おはようございます。ご意見ありがとうございます。
調査委員会が関係者の責任追及を目的とする場合、ご指摘のように会計上の知見をもとに「異常な兆候」の有無にまで立ち至る必要があると思います。なので委員会報告書ではそこまで突っ込むことは避けたほうが良い場合がありますね。もし責任の有無について検討するのであれば、それだけを目的とした報告書のほうがいいと思います。私もtenpointさんと同様の意見でございます。

skydogさん、コメントありがとうございます。
たいへん恐縮ですが、先にお書きになったというコメントが見当たらないのです。間違えて消去することは決してございませんので、アップされなかったのかもしれません。ご面倒ですが、サマリーだけでも結構ですので、またお手すきのときにでもお教えいただければ幸いでございます。

投稿: toshi | 2011年3月 5日 (土) 09時58分

Toshi先生。訂正を織り込んで再度コメントします。なお引用した報告書(概要)の文は一部省略してあります。

報告書(概要)1ページの(1)‐①によれば「平成20年6月ころ、当時当社の大株主A及びAの関連法人等が保有していた当社株式を、受け皿会社Bに譲渡させるにあたり」とありますが、当時の四季報を見ると「8月に筆頭株主の榎本氏や投資組合が全株売却。投資会社ASKが26.7%保有し筆頭に」とありますから、このことですね。
平成20年3月末の当社大株主1~3位は榎本大輔氏(!),アストリックスチャレンジ1号投資事業組合,同2号で計25.6%のシェアですから、当時の当社株価で確かに約2億円の資金を必要としています。ちなみに三浦社長は第10位で1.5%のシェア。

また報告書(概要)2ページの(1)‐③によれば「平成21年1~2月にかけて、Bを清算させるにあたり、Bが譲り受けた当社株式を取得することを目的として」とあるので、自社株取得でもしたのかなと思いきや、平成21年3月末の当社大株主の1~4位は三浦社長・津田(現)取締役・佐藤(現)取締役・小松(前)取締役で、計28.5%のシェア。当時の当社株価で約1億円の資金を掛けて経営陣が買い取ったという訣です。

ですから6億円の不正支出のうち、経営陣がB社経由で当社に1億円支払ったとすれば、本件不正行為は報告書(概要)3ページの(2)にあるような「当社から株式取得資金等を流出させたもの」ではなく、5億円の「等」とは一体何なのかが問題なのだと思います。
まさか報告書にはその辺が明記されていて、この報告書(概要)では伏せているとは思いたくないのですが・・・・・

いずれにせよ、当社の監査役はtoshi先生やTenpointさんが仰るように「取締役の内部統制構築義務の履行状況の監査」「事業報告の監査」を怠っていたとしか言いようがないと思います。この報告書(概要)のロジックがまかり通れば「監査役は三猿に徹した方が有利⇒下手に知ってしまうと責任を追及されるぞ!」ということになってしまうのではないでしょうか。

あと、この件で思うのは社外役員の効用と適格性です。不正行為当時の当社役員は、三浦社長+社外取締役2名,社内監査役1名+社外監査役2名という体制でした。それでこの体たらくでは「社外役員不要論」に棹差すようなものですね。

最後にトピック違いですが、3月2日の日本監査役協会の研修会で触れられた「裏ガバナンス」について。これは要するに「筆は1本、箸は2本。衆寡敵せず」「恒産なくして恒心なし」ということだと思っています。例えば私は年金受給までに10年近くありますが、社長から「skydog君、今年で任期だったね、ご苦労さまでした」と言われたら、どうやって食べて行こうかと考えてしまいます。株主総会での意見陳述権があっても、トライアイズさんのように総会で可決されればそれでお仕舞いですし。とはいっても私は三猿になるつもりはありません。テレビドラマ『jin-仁-』に出てくる多紀養春院のように、自分の置かれている環境の制約の中で誇り高く生きて行きたいと考えております。

長文失礼しました。

投稿: skydog | 2011年3月 5日 (土) 11時32分

skydogさん、ご意見ならびに詳細な分析ありがとうございました。
こういった開示情報は、私はとても関心を持つのですが、あまり世間的には話題にならないみたいで、「しょせん、適時開示はこの程度か」と、すこし落胆気味でした。
でも、私やtenpointさんのように問題を指摘していただける方がいらっしゃったので、少し元気になりました(^^!

裏ガバナンス問題につきましては、おっしゃるとおりで何の反論もございません。むしろ常勤と非常勤の役割分担こそ、今後検討されるべきかと思っています。今後とも、どうかご教示よろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2011年3月 9日 (水) 21時57分

fonfun社も報告書(概要)のリリースから10日間経つのに、続報がさっぱり出ないですね。今日(金曜日)まで待っていたんだけど。でも、これは出ないんじゃなくて、出せないのかも?

報告書(概要)のリリースでは「過年度決算の訂正事項の概要」として、21年3月期では「前渡金(他勘定振替済の前渡金を除く)74百万円の特別損失への計上」ほかを挙げていますが、そもそも当社の21年3月末の前渡金残高はゼロなのに、一体どのようにして損失に振替できるのでしょうか。また、22年3月期では「長期貸付金211百万円と引当金(これも21年3月期の訂正事項)との相殺」ほかを挙げていますが、当社の22年3月末期の長期貸付金残高は136百万円です。

有価証券報告書で見る限り、Tenpointさんご指摘の通り、財務諸表も凄いことになっていますね。22年3月期(単体)の年商は10億円なのに、8億円の長期未収入金があり、同額の貸倒引当金が計上されています。ソフトウェア仮勘定1.6億円は21年3月期末と全く同額です(今回の不正経理の一環であり、架空の資産ですから当然ですが)。
この長期未収入金を遡ると、20年12月末(21年3月期第3四半期末)に短期貸付金2.4億円,長期滞留債権2.3億円が計上された時点からの累積のように見えます。でも21年3月期第3四半期報告書の「財政状態の分析」には、短期貸付金2.4億円の記載はありますが、長期滞留債権2.3億円の記載はありません。

プレスリリースも有価証券報告書の作成も、取締役の重要な職務執行ですから、監査役が監査しなくてはならないのに、一体どうしたことでしょうか。これでは2,000人弱の株主が可哀想です。(少数株主の利益を保護するのは監査役の職務だと私は思います)

2期連続赤字で株価下落が必定という状況下、21年2月12日(リリースあり)に、その8ヵ月前に2億円で受皿会社が大株主から買い取った当社株式を、当社経営陣が1億円で取得しているのもどうかと思いますけどね。

投稿: skydog | 2011年3月11日 (金) 19時40分

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