関西企業のBCP(事業継続計画)は役に立っているのか?
いよいよ「買占め」が我が街、堺市にも到来(お米がない・・・)。
(3月20日追記:買占めなのか、物資輸送が不十分なのか、ちょっと判明しづらくなっていますね)
そういえば2年ほど前、パンデミック対策として、関西の大手企業さんはどこもBCP(事業継続計画)の推進に躍起になっていたように記憶しております(関連エントリーはこちら)。当時は大手損保系のリスク・コンサルティング会社さんのご指導のもと、各企業において地震対策のBCPも積極的に策定されておりましたが、果たしてこのたび、これが大手企業さんにとって役立っているのでしょうか。
昨日、本日と、数社のBCP担当役員の方々とお話しする機会がございました。会社の利益を越えて、我が国の国力維持のためのCSRとして推進している、とのお話は共通しておりましたが、実際のところでは想定外の事象が発生しているため、効果のほどは「?」といったところではないか、との印象を持ちました。
たしかに社員の安否確認、生産拠点の分散化、サプライチェーンによるBCP推進、輸送ルートの分散化あたりは奏功している企業さんもあるようです。しかし自社で生産できても、停電によって部品製造会社の製造がストップしている、また輸送ルートを確保できたとしても、そこに走らせるトラックのガソリンが調達できない、といった想定外の事象に直面し、結局のところ生産がストップしている企業は多いのではないでしょうか。
このたびの震災は、関西企業には無縁のようにお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実情はかなり厳しいようであります。計画停電や原発事故からは、たしかに距離がありますが、自粛ムードと買占め騒動、そしてなによりも経済の停滞は確実に街中に波及してきております。(ちなみに関西電力さんの場合、原子力への依存度は48%ということですから、東電さんのような事態が発生した場合、もっとスゴイことになるのでは?などと危惧しております。)さて、皆様方の会社におかれましては、BCPは今のところ、お役に立っているのでしょうか?
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コメント
サプライチェーン、これが目下一番の悩みのタネです。
国内のみで活動している中部圏の中小企業ですが、現時点において、クオリティ・コスト・デリバリーのレベルをGW以降、保てる保証、見通しがありません。リソースが確実に存在するGWまでが勝負です。
特に東北地方の兵站が、絶望的です。
みんながつながっているんだ、みんなでがんばらなといけないんだと、気持ちを新たにしてがんばるだけです。
BCPは放射能漏れの事態をまったく想定しておりませんでした。
BCPを作成し、モックディザスタ(災害模擬演習)を行い、ブラッシュアップをしていた分、マシなBCPで、ないよりかはマシだったと考えております。
リスクが顕在化した現在、代替手段のバックアップが浅かったと痛感しています。
ただ、自社で自立したリソースに基づき商売する、卵はひとつの籠に盛らないようにしていこうとしていた矢先なので、ダメージは少なく、立ち直りは早いのかもしれません。
投稿: unknown1 | 2011年3月18日 (金) 21時28分
事業継続計画は、損害保険会社にとって自社の保険金支払い(損保の費用・損失)を、正当に削減・合理化する手段でもあると思います。損保にはBI(ビジネス・インターラプション・ポリシー=利益保険)という商品がありまして、事業が継続できない(インターラプトされた)状態になった場合に、喪失利益や固定費などを補償、俗に休業補償するものです。日本では多くの一般向けのものは、地震や津波による事故は免責=支払い対象外となっていますけども・・。ご利用いただければ・・。
損保にも事業継続計画の知識はあるのですが、BCPの「実務」(=BIの事故調査の裏返し)を理解している事故調査係はほとんどいないのが実情かと思います。
損保には法律関連の業務が多いのですが、地震と法律のQ&Aの本はとても役立つ(普段は地震は対象外であまり勉強していない)と思いますので、是非とも増刷が待たれるところです。
ところで、地震に何か役立つもの、とのアイデア=思い付きですが、先生のブログぐらい影響のあるところで、ピンク・リボンの地震版、ディープグレー・リボンとかブラック・リボン(喪章)のようなものを流行らせていただけない・・・ いま一歩ですね。
被災者のことを思っています、あなたの身近にいますという気持ちを、そっと伝えたいのですが・・。バッチ(襟章)やヒラヒラでも良いのですが。(このコメントを載せていただくだけでも十分でした。)
神戸の住吉ですれ違ったに違いない者です。
投稿: オープン・セサミ | 2011年3月19日 (土) 00時50分
東京からアクセスしています。
テレビを見るとえらいことになっているように見えますが、日常は平和そのものです。確かに物はないですけど、贅沢しなければいいだけです。
もちろん、埼玉以北、茨城以北は、えらいことになっています。
犠牲者の方には謹んでご冥福をお祈りするとともに、自分自身も、速やかな復興に少しでも寄与できないかと、考えているところです。
ただ、いい加減、マスコミの「マス・ヒステリック」はどうにかしてほしいと思っています。このせいで買いだめが起きていると確信しています。
さて、BCPですが、確かに一時期、こぞって作成機運が盛り上がって、さんざん、コンサルフィーを払った企業を見聞きしています。
が、コンサルに払った対価をきちんと回収できたところは、寡聞にしてしりません。思うに、所詮、社内の実情を知らないコンサルに、形式的な、紋切りのBCPの作成を依頼したところで、屁のツッパリにもならないことは自明だと思うのですが。ま、コンサルに頼む意味があるとすれば、検討項目の抜けがないか確認するぐらいかと。
閑話休題。
そんなこともあって、私自身はBCPについては、はっきりと懐疑論者です。究極的には作成しても意味がない、とまで思っています。
むしろ、社内でしっかりするべき点は、次の点で、それさえあれば、電話帳みたいなBCPを作る意味はないです。本当の災害時にはBCPを見ることすらできないですので。
・情報(誤報を排除した正確な情報)入手の確保、その手段の確保
・指揮命令系統の維持、代替ルートの確保
・社業撤退の適切な判断
ま、ある意味BCPを見るような余裕のある状況だったら、BCPは要らない程度、という自己矛盾だと理解しています。
投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年3月19日 (土) 12時47分
会社でコンプライアンス推進担当をしています。今、仕事は開店休業状態です。コンプライアンスは平時の仕事で、今回のような人の生命・財産、会社の事業継続そのものが問われる状態では不要不急の部署ということです。関東では計画停電が実施され、最小限の業務遂行を残して無理に出社して通勤災害にあったりしても困りますし自宅待機を命じられています。
投稿: unknown2 | 2011年3月19日 (土) 13時26分
BCPは顧客から請われて仕方なく作ったりしてるんですよね…
そういう意味ではBCPは「不可欠」です。実際に役に立つ立たないは
関係なく。
「千年に一度」の事態に対応できるBCPなんて(費用対効果的に)
ありえません。「千年に一度」の大津波に耐えられる港町や漁港なんて
作りようもないとの同じです。
在庫を国内外に分散して一年分持つとか、東京と大阪とNYとシンガ
ポールと…に同じレベルの本社機能を持つようにするとか、
そんなことは空想でしかないですよ。
但し、東京への一極集中についてはもっと考え直すべきです。
どういうわけか、そういう声を寡聞にして知りませんが。
投稿: 機野 | 2011年3月19日 (土) 23時16分
今回の件で初めて対策本部を設置した企業は多いのではないでしょうか。有事で機能すべきは臨機応変な現場判断と対策本部を中心とした臨時ガバナンスです。予測できない外部リスクに対して事前に分厚い規定を作っても、すべてはケースバイケースで処理されることが今回わかったので、さしあたり有事ガバナンスの根拠規範たる危機管理規程とその下位ルールがあれば十分だという意見です。
投稿: JFK | 2011年3月20日 (日) 01時29分
皆様、ご意見ありがとうございます。私自身、あまり得意分野ではないところでしたので、ひとつひとつのご意見が勉強になりました。まだ現在進行形のお話なので、またとりあげたいと思います。
ところで、昨日の産経ニュースで、やはり70%の関西企業が業績に大きな影響を受けていることが報じられています。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110318/biz11031820470040-n1.htm
関西に住んでおりますと、かなり実感できます。
投稿: toshi | 2011年3月20日 (日) 11時46分
いつも更新を楽しみにおります。先生のブログエントリーにはインサイダー案件も多い訳ですが、一歩進む議論が必要でしょう。現在の適時開示ルールは、Tdnetと大手新聞が基本となっております。しかし、大手新聞はいまや速報性ではネットに後塵を拝していることは明らかで、ツイッターをしていれば、儲かるとすらいう声もあります。
ツイッターの発言はインサイダーか?ツイッターやら掲示板に出た情報がインサイダーに当たるかどうかの議論は相当必要ですよね。
私はブログで、デイトレーダーはツイッターでいち早く情報を入手する術があること書きましたが、推奨するな発言をしましたが、法的に問題があるかもしれないと思いました。ツイッター規制は正しくないと思いますが、ツイッターで逮捕みたいなニュースが迫っている気がします。
投稿: Nuggets | 2011年3月20日 (日) 23時51分
東京一極集中について
解消されることはないと思います。
もはや、慣性というか、引き返すことのできるレベルではないほど、集中が進んでいると思います。
ですので、一極集中を前提として、そのデメリットをいかに穴うめするか、という点に頑張ったほうが、費用対効果としては、ふさわしいのではないかと思います。
コンプライアンス業務
私も自宅待機でありますが、このような状況下、確かに緊急性の低い部署であるために、手持無沙汰になりがちです。
が、東京のように、一部の物資難・交通難にはあるものの、日常生活は極めて穏便に過ごしている状況にあると、業務によっては、いま行うべきか、はたまた緊急時なので後回しでよいのか、という点で相談されることは多くなっています。
当社はコンシューマー向け業務ではないので、そういったことはないのですが、コンシューマー向けであれば、メールマガジンの発行一つをとっても、送信したことで非難を浴びるケースもあるようです。
プロ野球の開催問題も同様に、法令といった単純な問題ではなく、(社会の要請に応えるという意味で)コンプライアンスとしての判断もあると思っています。
こういった点は、まさにコンプライアンスの対象であると思いますので、在宅ながらも情報収集には気を抜けないと思っています。
投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年3月21日 (月) 01時21分
Nuggetsさん、場末のコンプライアンスさん、ご意見ありがとうございます。nuggetsさんのブログはときどき拝見させていただいております。私のブログが時々登場しますので、楽しみにしております。
ご指摘のツイッターやヤフー掲示板での「つぶやき」とインサイダー規制、私も問題があると思っています。ご意見のとおり、もう一歩踏み込んで、ブログの特性を生かして議論の俎上に乗せたいですね。
場末のコンプライアンスの実務感覚は参考になります。ただ、平時の社会的評価と有事におけるそれとでは若干、違うかもしれない・・・と思ったりしています。有事においてはマスコミの情報も混乱しています。まちがったマスコミ報道によって世間の声が「あっちいったり、こっちいったり」している状況がみえます。マスコミ報道の在り方も検討されるべきではないか、と。
投稿: toshi | 2011年3月22日 (火) 15時35分
はあー、「極めて穏便」ですか・・・
午後10時までの停電(街灯は勿論、信号も消えるんですよ)や「不測
の大規模停電の可能性あり」なんてことを言われ、パニック状態の電車
を経験した人間からすると信じられません。
東京(近郊)といっても色々ですね。
とにかく東電には計画停電をせざるを得ないのなら、管内全域を対象に
してほしいものです。(合わせてセ・リーグもパと歩調を合わせて4月
中の東日本でのナイターは止めるように)
*すみません、toshi先生のエントリーとは関係ないことで・・・
投稿: no name | 2011年3月22日 (火) 22時15分
ご指摘の通り、平時の社会的評価と有事におけるそれとでは若干、どころかだいぶ違うと思ってます。
ですので、せっせと、個人的には無意味と思いつつも、魂の入っていない仏像(BCP)だけは、掘り続けております。(笑)
投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年3月22日 (火) 23時16分
東京、水道水に影響がでましたね。
野菜、ミルクなど食物の放射線が話題ですが、
工業製品は放射線の影響がないのかと心配になります。
投稿: unknown3 | 2011年3月23日 (水) 21時49分