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2011年3月 7日 (月)

架空循環取引-法務・会計・税務の実務対応

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(3月7日午前 追記あります)

昨年8月27日にリリースされましたメルシャン株式会社の不適切取引に関する第三者委員会報告書は、会計不正を早期に発見できなかった原因が詳述されており、今後の不正取引の未然防止のためにはたいへん有益なものだと思います。この報告書では、同社熊本工場における架空循環取引を追い詰める監査部長と常勤監査役の姿が記されておりますが、残念ながら架空取引のスキームに関する知見に乏しかったために、熊本工場責任者を追いきれなかったこと(同報告書18ページ)、そして不正行為の確証が得られなかったために取締役会で報告ができなかったこと(同42ページ)を重大な問題として指摘されております。

不正調査に携わる者の一人として、架空循環取引は、まことに発見することは困難であり、また民事・刑事責任追及のための確証を得ることも容易ではありません。したがって、一般企業の担当者や監査責任者が確証をもって架空取引を発見することもまた非常に困難を伴うものであります。しかしながら、架空取引の「異常な兆候」を知ること、またその兆候を合理的に疑わせるに足るだけの証拠にアクセスすることは可能なのでありまして、これはまさに、上で述べたとおり、他社事例などを丹念に検証し、取引の発端となった「機会」「動機・プレッシャーの存在」「正当化根拠の有無」などを推測することも有効な手段であります。また、こういった作業の結果、たとえ確証がなくても(異常な兆候を示す合理的な証拠さえあれば)担当者が「取締役会に報告する勇気」が付与されることにも大きな意義がございます(実はこれが一番大きい、と私自身は考えております)。

このような架空循環取引の未然防止、早期発見、そして事後処理の実務対応に向けて、CFE(公認不正検査士)の方々による「架空循環取引-法務・会計・税務の実務対応」(霞晴久 中西和幸 米澤勝 著 清文社 3,200円税別)が出版され、書店に並び始めました(大阪でも旭屋本店で確認しております)。それぞれ会計、法務、税務の専門家の方々による共著でありまして、皆様CFEの資格保有者であるとともに、東京の「不正早期発見研究会」の中心メンバーの方々であります。霞会計士はジーエスユアサ社の不正会計事件で第三者委員を務めた経験を有し、中西弁護士は商事法務の研修等でおなじみの企業法務を専門とする方であり、そして米澤税理士はIT関連企業ご出身、日本における不正調査業務の第一人者といっても過言ではございません。とくに後半部分は架空循環取引の原因究明や再発防止策の検討にあたり、事例検証から得られた知見が披露されており、ぜひ経理・総務・法務・内部監査等の方々にはお読みいただきたい一冊であります。

なお、僭越ながら私も巻頭で「推薦の言葉」を書かせていただいております。またお読みになった方々には忌憚のないご意見をお寄せいただければと。

追記:本日の日経朝刊法務インサイドでは偶然にも「特命会計士活躍-不祥事を調査・解明」なる記事が掲載されております。このなかでインタビュー記事に応じておられる会計士の方にもCFE資格をお持ちの方がいらっしゃいます。記事にありますように、特命会計士の活躍は「有事」になってからでないとむずかしいのが現実でありまして、「有事」になるまえの「気づき」こそ企業の「特命」ではないか、と。

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コメント

山口先生、いつも勉強させていただいております。新聞も読みましたし、ご紹介されておられる書籍もこれからじっくり読み込んでいきたいと思っております。
ところで、公認不正検査士と循環取引の関係でいえば、企業不正対策ハンドブックに循環取引に関する記述がなかったかのように思います。日本特有の取引なのでしょうか。

投稿: cpa-music | 2011年3月 7日 (月) 15時34分

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