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2011年4月14日 (木)

被災地法律相談の心構え(有事であることの意識をもって)

(本日はビジネス法務とは関係がありませんので、あしからずご了承ください)

大阪弁護士会より、岩手県における被災地法律相談の割り当てがありましたので(避難所の統廃合によって変動があるかもしれませんが、私は5月末です)、さっそく相談担当弁護士の必須条件であります「震災時における法律相談」のe-ラーニングを受講いたしました。東京の弁護士会館で過日開催されたものですが、講師の森川弁護士、津久井弁護士(いずれも兵庫県弁護士会)の講義内容は素晴らしかった!まだ現在進行形で災害が続く状況のなか、避難所へ向かう弁護士にとって「有事の法律相談」であることの意識を昂揚させるものであります。

すでに仙台弁護士会の法律相談による相談事例なども紹介されましたが、自分の意識に不足していたものが3点あることに気づきました。

ひとつは、このような状況で被災地で行う法律相談は「多方面にわたる被災者のメンタルケアにおけるひとつの領域にすぎない」ということであります。偉そうに「法律相談ですよ」といった意識ではなく、足りない物資のひとつとして「リーガルサービス」を被災者の方々に提供する、といった意識を持たなければならない、ということ。すでに復興という状況で青空法律相談を行っていた阪神淡路の震災以上に、「生きることへの意欲」のために我々は専門的知識をもって支援しなければならないということです。

つぎに、実際に避難所の方々の相談内容を各弁護士が聴取し、これを弁護士会でとりまとめ、本当に必要な法政策を国に提言する、という目的があることです。現地においてどのような喫緊の問題があるかを整理して、これを司法制度のなかで提言するのか、それとも行政や立法のなかで解決してもらうのか、たしかに重大な課題であります。こういった役割を担ったことはこれまでありませんでしたが、このたびの被災地法律相談担当弁護士にとっては重要な役割であることを初めて知りました。

そしてもうひとつが、できるだけ早期に法律相談を行い、「現場における法律知識の浸透を図る」ことであります。法律的な解決ルールが被災者に周知徹底されることで、ずいぶんと無用な紛争が回避されるそうであります(これは阪神淡路の震災のときの、もっとも大きな経験智だったそうであります)。なるほど、こういった視点については、私もまったく認識しておりませんでした。

保険実務に関する知識も、きちんと勉強してから現地に向かいたいと思いますが、それよりも重要なのは、「背中を押してあげるための相談」なのか「二者選択に迷って専門家にすがる方に、明確な結論をさしあげるための相談」なのかを明らかにすることです。自分がすでに進むべき方向を決めているときに、これを法律的な側面から後押ししてほしいのか、それとも進むべき道がわからず、ともかく専門家の意見にすがろうとしておられるのかは、本当に現地でじっくり話を聞いてみなければわからないと思います。現場はおそらく想像を絶する状況にあると思いますし、欲するところによって、ケアの仕方も変わる、と思います。

「不可抗力」に関する講義のなかで、ふと思いましたが、阪神淡路の震災においては、現場に証拠は残っていたのです(たとえば「全壊」か「半壊」かが争われている事案において、後日検証すべき建物の一部は存在する)。しかし、このたびの震災は津波によって現場の状況がまったくわかならくなっている可能性が高いようです。私は、後日の紛争をできるだけ早期に解決できるよう、いまできる範囲での証拠の保存について、現地で少しばかりお話できたらなぁ・・・・・と思っております。

お知らせ

先週広報させていただきました5月18日の震災支援特別講演の件、現在27名の申込みがございます。あと3名様、ご応募できますので、よろしければメールにてお申込みくださいませ。

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