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2011年5月 6日 (金)

ユッケ食中毒事件-その事前規制と事後規制-

3日前に広報コンプライアンスの視点から雑感を述べておりましたが、あれからまたFF社運営にかかる系列店でユッケを食された方の犠牲者が増え、相当深刻な事態となっております。予想通りマスコミの報道は混迷を極めており、なにゆえここまで大きな事件となってしまったのか、その責任や原因が特定できないため、加害者としてのターゲットが見つからない状況が続いております。FF社の代表者は犠牲者が出た時点で直ちに、ご遺族のもとへ謝罪に出向き(お父様は謝罪を拒絶されましたが)、4人目の犠牲者が出た時点の記者会見では土下座をして今後の精一杯の補償を誓いました。

事後規制としての「業務上過失致死」の立件ですが、誰のどのような行為によって今回の痛ましい事件が発生したのか、食中毒事件の証拠はあっという間に散逸してしまって因果関係の立証が困難になりますので、当局としては強制捜査(身柄というよりも証拠確保のため)に乗り出す可能性はあるのではないかと思われます。(追記:6日午前のニュースでは強制捜査の方針とのこと)

そして前回のエントリーの最後で懸念しておりました「事前規制」、つまり食品衛生法改正ですが、本日あたりの報道内容からしますと、厚労省は今回の事件を機に、食品衛生法の衛生基準を満たさない生肉の流通販売に罰則規定を設け、合わせて抜き打ち検査も行うよう行政規制を厳格にすることを決めたそうであります。つまり、特定の誰かを厳罰処分として事件を終結させるだけでは不十分であり、二度と同様の事件が発生しないよう、抜本的な方針で臨むということです。

フグの食中毒で死亡された方のご遺族が自治体(国や兵庫県)を相手取って国賠訴訟を提起された事件の判決(昭和55年3月14日大阪高裁判決 判例時報969号55頁)におきまして、原告はフグの肝の流通販売を行政で禁止するのではなく、行政指導で対応していたことに過失がある、と主張したのですが、裁判所はこの主張を棄却して原告敗訴となっております。そのときの裁判所の判断理由では、フグのように高価なもので、これを食する消費者は限られており、なおかつフグの肝が危険であることは、消費者は十分に認知している、また流通販売においてフグを取り扱う業者は認可もしくは届出制とされており、自主的な規律が期待しうる、したがってこのような食品については現行の食品衛生法の弾力的運用(つまり検査の厳格化や行政指導など)によるか、行政取締(罰則や販売流通の禁止)によるかは行政の裁量にゆだねられている、しかしそれ以外の食品については、国民の安全を確保するために行政取締をしない、という場合には国の不作為が違法行為と評価される場合がありうる(国賠法1条1項)、と明示されております。

フグの場合と異なり、ユッケというのは、本事件の販売価格をみてもわかるとおり、多くの国民に提供される商品であり、また消費者がフグほどの「命の危険性」を感じながら食するものではないと思われます。そうしますと、上記昭和55年の大阪高裁判決を前提とするならば、ユッケについて食品衛生法上の取締りに行政裁量の範囲は狭く、これを事前規制として厳格に規制しなければ国の違法性が問われることになるのではないかと。このように現実に事故が発生するとなれば、もはや行政が規制強化に乗り出さないのは「不作為による過失」に該当するのではないかと。こう考えますと、今回の厚労省の素早い対応も、当然のことのように思われます。また、規制の厳格化によって、事後規制(業務上過失致死罪)の立件も容易になります。

ユッケは出しません、とするお店も実際にはあるそうでうが、そのようなお店は消費者から「あの店は古い肉を使っているから、メニューにユッケがない」との風評が立つそうです(むずかしいですね・・・・・)。事前規制によってユッケが食べられなくなる、ということではなく、今後は馬肉(馬刺し)流通の現状基準に沿った形の運用になるのではないでしょうか。生肉による提供に関する運用基準に合致したもの(生食用)は消費者に提供されることになるでしょうけど、維持管理に非常に大きな負担を要しますので、ユッケだけが非常に高価なものとして提供される、ということになるのではないかと。

ただ、事前規制が厳格化されると、今度はまた別のコンプライアンス上の悩ましい課題が発生します。これはまた別の機会に。

5月 6, 2011 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

ご無沙汰しております。報道を見聞すると生肉を食べる方が多いようですが、やはり肉は火を通して食すのがようと思います。今朝のニュースでも自己責任でリスクを取るのは自由だがという趣旨のコメントをされた大学教授がいました。安い肉、魚にはやはり理由があるというか、値段なりの味と安全があるかと思います。GW中に大塚耕平がTV生出演していましたが、厚生労働省も本気で取り組むようです。

投稿: starprince | 2011年5月 7日 (土) 10時03分

ご意見どうもありがとうございます。

まだまだユッケ事件は捜査がどのように進展するかわからないですね。規制問題についても賛否両論のようで、大阪ローカルの土曜朝のワイドショーでも、「子供にユッケとはいかがなものか」といった意見が何名かの方から出されていました。本件は一般の方々の意見もいろいろですね。また続編を書きますので、ご意見あればお願いいたします。

投稿: toshi | 2011年5月 8日 (日) 01時02分

焼き肉食中毒ユッケの問題で焼き肉業界、厚生労働省など大変ですね。
厚生労働省も生肉に関して変な規制など出して情け無いですね。
たばこ等は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺ガン等の害があると言いながら規制は無いですよね。国民は自己責任で、喫煙してますよね。
だから、国はユッケなど生肉を食べたい人は、自己責任でどうぞお食べ下さいと、言えば解決するのでは、無いでしょうか?食中毒にかかりたい人は、食べるし、注意する人は焼いて食べたり煮て食べますよね。
こんな簡単なこと、国、マスコミ、国民は、解決出来ないんでしょうかね。
焼き肉店の経営者さんも、ユッケや生肉等を出した方が儲かりますか?
それより、美味しく肉を食べて頂ける様に、考えて料理を提供してください、だってプロでしょ!!
皆様はどう思いますか。

投稿: 誉駕金太郎 | 2011年10月 1日 (土) 17時24分

私はユッケ事件での被害者です。自治体(国、県)に対して生肉が流通していないことをわかっていて、危険性が非常に高いとわかっていたのに十数年間もガイドラインのままで法規制をしなかった国の「不作為による過失」及び、衛生指導を徹底しなかった県に対して訴訟した場合勝訴できるものでしょうか?

投稿: 匿名希望 | 2011年11月 6日 (日) 17時12分

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