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2011年6月29日 (水)

キッコーマン野球賭博事件にみる形式的違法放置のリスク

東電の株主総会が開始される時刻に、私が役員を務める会社も株主総会が始まりましたが、お昼前には終了しました(ホッと一息・・・・・)。

さて、「コンプライアンス経営は難しい」シリーズでございます。すでに各社ニュースで報じられておりますとおり、キッコーマン食品(キッコーマンさんの関連会社)の工場勤務社員64名(元社員4名を含む)が、野球賭博被疑事件で書類送検された、そうであります(たとえば産経新聞ニュースはこちら)。胴元となった社員は逮捕されたものの、他の職員はほぼ事実を認めているとのこと。1口500円で総額135,000円、「ほんのお小遣いかせぎ」のつもりだったのでしょうが、これだけ大きく報じられますと、企業コンプライアンス問題として無視できないものとなってしまうようであります。

このニュースに触れた方々の印象としては、「この程度のお遊びで、なんで書類送検なの?どこでもやってるでしょ。これくらい大目に見てやれよ」というところではないでしょうか。胴元となった社員は、トイレや食堂などで参加者を募っていた、とのことですから、胴元に限らず書類送検された64名の方々も、同じような感覚で10年前からの恒例行事として遊興していたのではないでしょうか。発覚したのはおそらく工場職員による内部通報もしくは内部告発があったものと推測されます。

私の拙い講演をお聴きになった方でしたら、すでに企業リスクについておわかりかと思いますが、実はこういった現場社員による形式的な不正を放置するリスクというのは結構、会社にとっては問題でありまして、最近でも、某上場会社の代表取締役の方が「現場社員による工場廃棄物の無断持ち帰り」について、自社の内部通報制度を活用した、というお話もございます(当番を決めて、工場から出る廃棄物を持ち帰り、処理業者に売却したお金を現場職員の送別会費用に充てている、というもの)。

こういった不正を放置するリスクといいますのは、現場の軽微な不正を放置していては社内にコンプライアンス意識が徹底しない、という「もっともらしい」理由もあるのですが、実はもっと深刻なものがございます。それは、先の廃棄物処理問題もそうですが、せっかく全社あげて反社会的勢力との絶縁を実現した、という矢先に、現場において反社会的勢力との癒着が生じるリスクがある、というものであります。ひょっとすると、キッコーマン事件におきましても、警察・検察が小さな野球賭博にも厳格な対応を示したのは、大手企業において反社会的勢力との癒着の温床となる賭博からは隔絶させる必要がある、と考えたためではないでしょうか。

また内部通報窓口の経験から申し上げますと、昨今のパワハラ問題への社会的関心の高まりもコンプライアンスリスクとなります(この7月からは厚労省においてパワハラ円卓会議が設立され、今年度中には提言がなされるとか)。たとえば外食産業におきまして、頭の痛いコンプライアンス問題のひとつが現場社員の無銭飲食、残食品持ち帰り、というものがあります。現場では「持ち帰り、ただ飯あたりまえ」という風潮などもあり、まじめな社員や新入社員にも、これを勧誘するのであります。こういった違法行為の強要は、まじめな社員さんにとっては非常に苦痛を感じるものであり、最近はパワハラにまで発展するケースもあります。もしキッコーマンの件が内部通報・内部告発によるものだとしますと、こういった社員の精神的苦痛から生じたものと思われます。現場の雰囲気に耐えきれず、内部通報を行う社員も増えており、そのようなところから現場における長年の不正が発覚する、ということもございます。

そしてもう一つのリスクが「二次不祥事リスク」であります。力士の野球賭博事件における警察の捜査(携帯電話の解析)がきっかけとなり、協会に蔓延する八百長事件が大騒動となった大相撲協会の事例が典型例です。軽微かつ個人的な不正について警察や検察が捜査をすることにより、いままで表面化していなかったような(別の)大きな不正が見つかる、という例は企業不祥事でも数多く見受けられます。警察や検察としても、見つけた以上は黙認するわけにはいかず、会社自身で調査するなり、告発するなりして、不祥事の公表を勧める事態となるわけであります。これは結構シビアな問題でありまして、まさにコンプライアンス経営のむずかしさを物語るものです。

今回の件も、実際に個々の社員の刑事処分とまではいかないものと思いますが、「この程度なら」という軽い意識のもとで職場の不正を放置しておりますと、大きな企業不祥事に発展してしまう可能性があることが理解できるものと思います。コンプライアンスリスクは、社内の至る所にころがっていることを認識していただければ、と。

6月 29, 2011 コンプライアンス経営はむずかしい | | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年6月28日 (火)

事業報告「社外役員に関する事項」の有用性ってどうよ?

また今年も暑い中、定時株主総会のため、D市民会館にやってくる季節となりました。昨年は180名ほどの株主の方々が会場におみえになりましたが、今年はおそらく(諸事情ありまして)200名を超えるのでは・・・・と思いながら、社外監査役として、前日の会場リハーサルに参加いたしました。

最新号の日経ヴェリタス(172号)では、日本経済研究センター主任研究員の方が「社外役員、姿の見える活躍を」と題して、会社法上では社外役員の活動状況の開示が義務付けられたにもかかわらず、取締役会への出席状況程度しか活用されていないことを指摘され、

「質的な貢献に関して事業報告に抽象的な記述しなないのは、特筆するほとどのすばらしい活躍をしていないからだと考えてもいいのかもしれない」

と締めくくっておられます。   

私はといいますと、招集通知記載の「社外役員の状況」欄を確認したところ、取締役会出席率はちょうど80%、ということでして、まずます・・・といったところかと。ただ今年は諸事情により、監査役と会計監査人との連絡協議会や経営者を交えてのミーティングが多数回ありましたので、いろいろ考える時間も含めますと、7年間でもっとも監査役としての業務に時間を割いたことは間違いないと思います。

ところで、「活動状況が義務付けられた」とされる根拠であります会社法施行規則124条4号では、社外役員の活動に関する開示事項が規定されておりまして、役員会への出席状況のほか、発言状況、当該社外役員によって重要な業務執行の決定が行われた場合にはその事項について、また不当、不正な業務執行を予防したようなことがあれば、その事項について記載することが求められております。こういったことを開示することで、社外役員の活動状況を株主が把握でき、社外役員の選解任権行使に役立てることが期待されているものと思われます。

しかし、これは前からずっと思っているところでありますが、実際に自分が社外役員を経験してみると(とても活躍しているとは申しませんが)、はたして社外役員の活動、とくに「質的な貢献」というのは「開示規制」になじむものなのか、常に疑問を感じるところであります。そもそも社外役員が発言した内容によって重要な業務執行が決定される、といったことは、インサイダー情報に関わるようなものであって、会社として「おいそれ」と具体的な内容を記載できるようなものではありません。たとえすでに公表されたものであったとしても、社外役員の意見を受けて、実質的に業務執行を決定するのは社内役員でありますから、社外役員の発言はあくまでも「参考意見」として扱われるのではないでしょうか。ましてや、「不当、不正な業務執行」につきましては、事後対応くらいであれば記載できるでしょうけど、「予防しました」など、はたして不祥事が早期に発見されて、重大事に至らなかったことをどこの上場会社が事業報告に記載するのでしょうか?(不祥事公表義務などというものを、取締役の善管注意義務のひとつとして認めるのであれば別ですが・・・)また、私もそうですが、社外役員の中には「独立役員」として証券取引所へ届出をしている者もいるわけでして、独立役員である旨も事業報告に記載されております。いろいろと株主のために発言するのは、私の意識としては独立役員だからこそ発言する意識が強いわけで、これは会社法上の開示の対象とはならないようにも思われます。質的な貢献という意味では、この独立役員としての発言のほうが株主の関心が高いと思われるのですが・・・。

役員会への出席状況、というものにしても、「名ばかり社外役員」を防止するインセンティブ程度にはなると思いますが、ホンネで申し上げれば、あまり社外役員の有用性判断には役に立っていないと思います。もちろん取締役会が実質的な経営判断を決する場となっている企業もあることは承知しておりますが、すでに回覧済の議案についての形式的な決議の場となっている企業も多いと思われます。そのような企業において、社外役員が本当に当該会社の人事、報酬、監査に影響を及ぼす、たとえそこまででなくても、重要な意思決定に参画するためには、経営会議や常務会、執行役員会、(監査役ならば)会計監査人との報告会に参加することのほうがよほど重要でありましょう。そのあたりは開示規制というよりも、説明責任を果たすなかで語られることでありますから、現実は「出席状況」「発言状況」程度の開示規制でやむをえないのかもしれませんね。

ダスキン株主代表訴訟で、ひとりだけ被告とならなかった(当時の)社外取締役の方のように、問題が発生してから社外役員の活躍が見えた、というのが真実ではないか、と。社外役員の「姿の見える活躍」というものは、平時の開示規制では期待できないように思えて仕方がございません。

6月 28, 2011 株主総会関連 | | コメント (2) | トラックバック (2)

2011年6月27日 (月)

買収防衛策の廃止(非継続)は片道切符か?

いよいよ定時株主総会のシーズンも佳境を迎えておりますが、サンケイビジネスアイの記事によりますと、今年は買収防衛策導入企業(上場会社)のうち約15%が防衛策を廃止(もしくは継続しない)するようであります。とくに取締役会決議で廃止や非継続を決定できるところも多いわけですが、この時期に有効期限到来・・・ということもあり、「総会には継続についてお諮りいたしません」ということで、こういった集計がなされるのでしょうね。企業のホンネとしては、この記事にもあるように「経費削減」というところがやはり大きいのでしょうか。

いまから3年前に事前警告型の買収防衛策の非継続を決定した会社の独立第三者委員を務めていた者からしますと、当時はブルドックソース最高裁判決の検討結果と金商法ルールの改正を斟酌して、もはや防衛策は不要・・・という判断だったと思います(当時の私の意見は こちらのエントリーにて記載しております)。そして現在はといいますと、金商法ルールの改正によってある程度の手続き的担保が図られた、という理由と同時に、昨今の経営環境の変化に伴い・・・という理由が付されているのが一般的です。

ところでこの「経営環境の変化」というのはとても曖昧な表現であり、いったい何を意味しているのかよくわかりません。リーマンショック以降、いわゆる投資ファンドの圧力が減退し、以前のような敵対的な企業買収の機運が失せてきた、ということを意味するのか、それとも機関投資家との対話尊重の機運が高まり、とりわけ海外の投資家の要望(ここでは買収防衛策の撤廃要請)には最大限配慮しなければならない状況になってきたことを意味するのか、あるいはこの両方を意味するのでしょうか。数社の最近の適時開示を読みましたが、どこも意外と短い文章で締めくくられておりまして、この「経営環境の変化」がどういった意味で用いられているのかはよく理解できないところです。

レナウンやラオックスの買収事例などがあるため、中国企業あるいは政府系ファンドによる買収を警戒するところは大きい(菊池=鳥飼「株主総会徹底対策 平成23年度版」158頁)ので、まだまだ買収防衛策継続の必要性はある、とのご意見もあり、また「猛犬注意」の看板を掲げていること自体の効果(サメよけ効果)も否定できませんので、まだまだ防衛策を残す企業も多いものと推測されます。したがって、やはりいったん買収防衛策を導入しながら、なぜここに至って廃止するのか、そのあたりも一応の説明が必要なのではないかと思われます。

とくに、法制度の充実や「株主との対話促進」を理由として買収防衛策を廃止するのであれば、いったん防衛策を撤廃しながら、再度導入する、ということは株主への説明がつかず、困難なのではないか、と思われます。震災後の業績回復に全力を挙げている企業さんにとりましては、もはや買収防衛策のようなものは無用の長物に見えるのかもしれませんが、個人株主比率の高い東洋電機製造さんに対する日本電産さんの提携失敗事例、支配株主の強い意向が大きな影響力を持ったパルコさんに対するイオンさんの事業提携事例(いずれも買収防衛策導入企業)などをみますと、いったん防衛策を廃止する以上は、個人株主比率を高めるとか、独立役員の数を増やして経営の透明性を高めるといった手法により、安定的な株主作りと対話促進をもって防衛策に代えることが肝要ではないかと思う次第であります。

6月 27, 2011 事前警告型買収防衛策の承認決議 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2011年6月26日 (日)

提携契約の実務(シチュエーション別)

今朝(6月25日)の日経新聞によりますと、日本企業が関わるM&A金額は、昨年と比べて約80%増ということで、国内外を問わず企業買収攻勢を強めているそうであります。企業買収とまではいかなくても、事業効率化や震災後の収益源分散のため、アライアンス(企業間提携)もさかんに行われているようです。私がときどきお邪魔する会社さんも、JV事業体のガバナンスをどちらの出資会社がコントロールするのか・・・といったことで大いに悩んでいるところでして、いまになって、もっときちんとガバナンスに関する取り決めをしておけばよかったのに・・・と後悔しているところであります。

Teikeikeiyaujitumu ということで、アライアンス、企業買収における提携交渉について、ビジネス条件の面からではなく、法律的な側面からノウハウを示した本は、これまでなかったのではないかと思いますが、今回書店で目に留まりましたのが本書であります。

シチュエーション別-提携契約の実務(淵邊善彦 編著 商事法務 3,400円税別)

淵邊先生のご著書は、以前にも「企業買収の裏側-M&A入門」(新潮新書)をご紹介させていただきましたが、今回はTMI総合法律事務所に在籍していらっしゃる弁護士の方々の共著となっております。本書には、弁護士の著作にありがちな「膨大な注書き」がほとんどございません。つまり、著者の実務経験に基づく第一次情報がほとんどであります。こういった本は正直、「当たり・はずれ」がありますが、販売提携や技術提携をはじめ、提携交渉にあたって基本的に押さえておくべき筋道、また柔軟に対応すべき勘所がきちんと記述されており、「即戦力」として有用性の高い本でありまして、まさに「当たり」の一冊です。とくに各所で述べられている「交渉&落とし所」は、実際に問題が発生するリスクを念頭に、当事者が(提携交渉時点において)可能な対処レベルをつかむことができます。これは企業の法務担当者などにも大いに参考となるのではないでしょうか。

私自身はガバナンスにも配慮された「資本提携(合弁会社)」がもっとも参考になりましたが、全体を一読して感じましたのは、こういった提携契約のコツというものは、普通はコンサルティングする事業者が自社の「秘伝」として、あまり外部に伝えたくないのではないか・・・と思うところです。たとえば私も大手の監査法人さんのコンサル部門の方々と一緒に「子会社不正を防止するための内部統制構築」の作業などを、何カ月にもわたって行うわけですが、監査法人の担当者の方と「本にしたら売れるかも。でも、これって公表したらもったいないですよね」などと、かなりセコイことを語ったりしております(ホンマ、せこい 笑)。しかし、そういった秘伝を堂々と公開する、というのは、懐の深さを感じさせますね。本書で語られているところは、基本的なところであり、たとえば海外企業との提携交渉など、もっと奥が深いところもあるのでしょうね。

ただ、コノテの本は(前にも述べたことがあるかもしれませんが)、アライアンスや企業買収に反対派の人たちにも有益になる、という面がございます。事業提携はからなずしも、企業が一枚岩になって行われることではなく、組織力学上これをつぶしたい、と画策する社内一派もいらっしゃるわけで、提携話をつぶしにかかる人たち、あるいはそういった人たちを支援する専門家にも、どの段階でつぶすのが効果的なのか、「次の一手」がとてもよくわかり、参考になりそうであります(ひとつの事業提携に参画する法律事務所は、かならずしもひとつではない、ということであります)。想定すべき相手方は提携先、買収先企業だけではない・・・・ということも、けっこう配慮する必要があるのではないか、と。いずれにしましても、実務担当者の方々にはたいへんお勧めの一冊です。

6月 26, 2011 本のご紹介 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2011年6月24日 (金)

法務部門の分離革命(すでに実施企業もあるとか・・・)

(6月24日午前:追記あり)

いま某企業の法務部の方と、新しいコンプライアンス・ハンドブックの作成に取り組んでおりますが、実際に法務部の方と作業をしていて感じますのは、(どこの会社でもそうだとは申しませんが)法務部門には異質な仕事が混在していますね。

いわば「品質管理」の問題と「リスク管理」の問題。前者の典型例が契約審査であり、瑕疵担保責任条項の中身など、細かくチェックして、どんな事態となっても自社が不利益を被らないように細心の注意を払って契約条項を作りこんでいく作業。実際の交渉において、その条項が通るかどうかは、また力関係や説明能力によるところもありますが、こういった品質管理に力を発揮する法務部担当者がいらっしゃいます。

そして後者はといいますと、まさにコンプライアンスのお仕事であり、全社的なリスクに精通して、企業活動の統制を図るというもの。企画本部や営業部隊が投げ込んでくるボールについて、ギリギリでストライクと審判に判定してもらえるように理屈を考える、いわば企業の戦略を法務面において支える実行部隊の役割です。実際、ハンドブック作成に関与して、「経営企画本部にモノが言える法務であるためには、この戦略法務のところで活躍する必要がある」ということのようです。ですからコンプライアンス・ハンドブックの大きな役割は、社員が「気づくこと」そして「気づいたことを伝達すること」に重点を置きます。不正かどうかは、ゴーサインを出す専門部隊が最終的に受け持つことになります。こういった業務が得意な法務担当者もいらっしゃるとか。

企業内弁護士の方も相当増えましたが、企業内弁護士も、どちらが得意なのか分かれるのではないでしょうか。また、最近の企業では、戦略法務的な業務を受け持つ部署と、契約審査などを中心として受け持つ部署で、分けているところも増えているそうであります(コンプライアンス部、CSR部などを独立させているもの)。仕事の性質がかなり違うようですから、人的資源が豊富であるならば、法務部門を充実させて、上記ふたつを分離する、ということも検討されるかもしれません。(別にタイトルにあるような「革命」というほどのこともないかもしれませんが・・・)

最後になりますが、政治的配慮に長けておられる法務部門の方もいらっしゃいますね。経営トップがコンプライアンスに熱心な方であればよいのですが、実際には「コンプ」まで聞いたところで「もういい」と拒絶反応を起こす社長さんの場合、法務部門としてはとても仕事がやりづらいことになります。そこで、そもそも社内で政治力を持った役員(執行役員)の方から社長に意見を提案してもらえるよう、当該役員さんに向けてプレゼンを行う法務部門の方もおられるようです。やはり仕事がやりやすい社内環境作りはきわめて大切だそうですね。

(追記)昨年10月、ソフトバンク社の法務部長さんの「ビジネス法務」での記事についてコメントしたエントリーがあります。本件エントリーにご関心のある方は、こちらもご参考ください。「法務部員が元気になる記事」

6月 24, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2011年6月23日 (木)

エントリーのお詫び

昨日エントリーいたしました、「IFRS(国際財務報告基準)の強制適用時期は延期されるそうで・・・」の記述におきまして、インサイダー事件関連で問題とされた会社名を誤って記述いたしました。(早速削除しております)

関係者の方々には、たいへんご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます。今後とも事実関係の指摘につきましては、最新の注意を払うようにいたします。<m(__)m>

6月 23, 2011 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月22日 (水)

ACFEセミナー(大阪)のお知らせ -6月25日土曜日-

本日の日経新聞の解説で、IFRSの導入に合わせて、英語が堪能な会計人材が不可欠、とありますが、国際的感覚が必要なのは語学だけでなく国際的倫理観も当然に必要になるわけであります。IFRSの準備期間中に、各企業はIFRSに求められる会計倫理観をどうやって学ぶのか、海外から「粉飾だ」「詐欺会社だ」と言われて反論できなければ、日本では粉飾決算として摘発されずとも、国際的な信用を失うわけでして、そのあたりをどのように習得するのか、とても気になるところであります。

さて、私が理事を務めておりますACFEでは、企業会計上の倫理感が今後重要なものとなることから、CFE資格者のCPE(継続研修義務)に、昨年から「企業倫理」が新たに必須科目となりました。とりわけCFEの本場である米国からみた「企業倫理」(とくに会計上の倫理、誠実性)を学ぶことになるわけですが、この6月25日(土曜日)、大阪で「専門職に求められる職業倫理」と題するセミナーを開催いたします。講師は甘粕さんです。また、午後からはかつて検事として組織犯罪捜査で活躍され、現在は第三者委員会委員等として不正調査に従事されていらっしゃる木曽先生のセミナー「ワンランク上の不正調査スキル」が開催されます。

いずれも、一般の方もご参加可能でございます。企業倫理、不正調査にご興味のある方、またCFE(公認不正検査士)の資格にご関心のある方は、今度の土曜日、セミナーに参加されてはいかがでしょうか。くわしくは、ACFEのWEBよりご覧ください。

6月 22, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

IFRS(国際財務報告基準)の強制適用時期は延期されるそうで・・・

(6月22日午後、備忘録として追記あり)

本日(6月21日)の日経夕刊1面をみてビックリしましたが、金融担当大臣がIFRS(国際財務報告基準)の強制適用時期について、2015年はなくなり、準備期間を5年から7年程度に延長することを明言されたそうであります。しかも、いつも閲覧しておりますIFRSフォーラムニュースによりますと、強制適用するかどうかの判断を来年(2012年)行う、とされていたにもかかわらず「一番早くて2012年」、今後の議論によってはそれ以降になることも示唆された、とのこと。また毎日新聞ニュースによりますと、金融担当大臣は、「他国では一部の上場会社に適用を限定しているところもある」と説明されたそうですから、部分適用、ということも(次の企業会計審議会にて)制度として検討されるようであります。ということは我が国における連結決算会計にIFRSが適用されるのは、限定された企業に対して、しかも、ひょっとして2020年代になってしまうのでしょうか?また、すでに強制適用を前提に動き出している企業さんは、いったいどのような対応をとるのでしょうか?

強制適用時期延期の要因として、日経のニュースではインドも適用時期を延長したことが引用されております。そういえば、昨年8月4日の当ブログのエントリー「いよいよ法制審会社法改正論議にIFRS登場か?」でも、インドの政府高官の方が、IFRS解釈のための自国の解釈基準を作りますと宣言されているのを経営財務で読んで私はビックリしたことを綴っておりますが、やはりビックリは当たっていたようで、インドは今年3月に適用時期延長を決めたそうであります。米国の事情も少し変わってきているようですが、そのような他国の事情とは別に、震災による経営資源の問題も、やはり影響しているのかもしれません。また、さきごろIASBとASBJが「コンバージェンスは概ね良好」と確認しておりましたので、強制適用が遅れても、とくに日本企業の資金調達には影響はない、との判断があるのでしょうか。

震災復興や原発問題等、現在の我が国の抱える問題状況からみて、マスコミでもイマイチ本問題が盛り上がっていないようですので、IFRS推進派の方も、導入反対派の方も、もしご意見がございましたら(私も勉強になりますので)ご自由にコメントをいただければ幸いでございます。<m(__)m>財務会計士制度の廃案(?)などもあり、どうも政治、経済、行政の思惑の違いが最近目立っているのではないでしょうか。

ただ、専門外の私が申し上げるのもナンですが、たとえIFRSの適用時期延期という方向性が定まったとしても、IFRS導入積極派の方々は、あまりションボリしていないのではないかと推測いたします。なんといっても、会計の世界の歴史をみると、政治的な背景でグローバル化の機運が過去にも収縮してしまったことがありましたし、また、突発的な会計不正事件などによって、にわかに機運が盛り上がって懸案だった制度が実施されることもあるわけでして、このあたりが会計の世界の魔訶不思議なところではないかと。これで本当に日本の資本市場の信頼性が揺らぐ事態にでもなったら、今度は経済団体や政治のほうから早期強制適用の提案が出てくるもののようにも思えます。

信用が揺らぐといえば、日本基準とIFRS基準では異なるとされている「引当金」の基準適用をめぐり、東電さんが(3月期決算において)原発設備の改修費用を正しく見積もっていないのではないか・・・というニュースが出ております(毎日新聞ニュースその1  その2)。監査法人さんから今期の負債項目として引当金を計上しないことの指摘を受けないように、合理的な見積もりができる程度の準備をしない(監査法人からの指摘を回避したい)、というのは本末転倒ではないでしょうか。(会計は事実を移す鏡である・・・・と思うのですが)会計基準の国際化が日本の上場企業にとって重要な課題であること、そのために準備期間が十分に必要なことは理解いたしますが、それだけ準備期間が十分にあるのであれば、今年初めに「週刊経営財務」(1月24日号)で八田教授が述べておられたように、「細則主義から原則主義への転換は、基準依存の体制から離れて、それぞれ個々人の誠実性、倫理観の保持がさらに強く要請される」ことへの準備期間でもある、と考える次第です。

キャッツ事件、ライブドア事件、村上ファンド事件など、最高裁判決が出そろい、規制当局のフォレンジックは過去に例をみないほどに自信をつけています。インサイダー事件でも、最近はバスケット条項を自信をもってバンバン適用しています。犯則だけでなく課徴金リスクも含め、もうすこし企業側も会計基準ではなく、会計事象(会計事実)のほうへ目を向ける必要があるのではないでしょうか。IFRSの時代は、ますますフォレンジック(法廷会計学、不正会計の規制論)優勢の時代となり、最高裁では覆らない規制当局による会計不正摘発が増えるものと思います。会計に携わる方々の倫理観、誠実性が求められる所以であります。

6月22日 追記あり

本日の日経ニュースによりますと、米国も、IFRSの適用時期を先送りするような気配が感じられます。米国の経済情勢が芳しくないことが理由のようです。とりあえず備忘録として追記いたします。

6月 22, 2011 IFRS関連 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2011年6月20日 (月)

東電の原発事故直後の対応と有事における情報開示の意義

このたび、旬刊商事法務最新号(1934号)の巻頭論文として「内部統制報告制度の見直しと今後の実務対応」なる論稿を掲載していただきました。金商法と会社法の交錯部分といわれる「財務報告に係る内部統制」について、法律実務家の視点から整理を試みたつもりでありますので、内部統制実務に携わる企業実務家の皆様、ご関心のある法律家の皆様にお読みいただき、また忌憚のないご意見、ご批判をいただければ幸いでございます。<m(__)m>

さて、同じ商事法務さんですが、7月に発売されます法律雑誌「NBL」におきまして、このたびの東電さんの安全確保体制の構築と有事対応、とりわけ情報開示の在り方に焦点をあてた論文を掲載させていただくことになり、ほぼ原稿を書き終えたところで、東電さんから6月18日、重要な報告書がリリースされました。新聞等でも報じられておりますので、皆様もすでにお読みになった方もいらっしゃるかとは思いますが、震災直後の原発事故への東電の対応に関する時系列的報告であります。

東北地方太平洋沖地震発生当初の福島第一原子力発電所における対応状況について

上の(NBL)論文でも若干触れているのですが、私はこのたびの東電さんや、震災で大きな損害を受けた上場企業さんの情報開示を読み、また数社程度ではありますが、震災時のBCP(事業継続計画)の実効性検証などから、あらためて有事における企業の危機管理としての情報開示の意義はいくつかに区別することができるものと考えております。あるときは、ステークホルダーの生命・身体・財産への切迫した危難を回避するためのもの、またあるときは、経営陣の経営判断を監視するために、良好なコーポレートガバナンスを実現するためのもの、そしてまた、時には社外第三者と協力して、社内における危機を乗り切るための方策を検討するためのもの、といったところであります(これがすべてではありませんが)。

上記の東電さんのリリースを読んで感じたところではありますが、震災直後の原子炉緊急停止から、手動によるベント作業に至るまで、専門用語がかなり頻繁に使われており、また原子炉別に区別されてはいるものの、時系列に沿って淡々と発生事実が語られているので、おそらく一般の方々には何が発生し、東電さんがどのような対応をしたのか、またそれが誰の意思決定によってなされたのか、というあたりは一回読んで理解するのが困難ではないでしょうか。

これは社外の第三者の叡智を結集して、東電の事故原因を調査し、さらに今後同様の事故が発生した場合に、どのように対応すべきか、その再発防止策を検討するためには有意義な情報開示であると思います。しかし、周辺住民や原発事故の被災者、周辺事業者に対して、発生している事態がどのようなものであり、ステークホルダーがどのように対応すべきか、を自己判断できるための情報開示としては不十分なものではないかと。また、そこで報告されている内容が、どういった指揮命令系統によって、判断されたのか、という詳細にまで及ぶものであれば時間を要するものと思いますが、発生事実を淡々と記述しているところが多く、たとえ現場作業員の証言に基づくものといいましても、開示に至るまで3か月を要するものであるのかどうか、疑問を抱くところであります。

震災以降の3か月、東電さんの情報開示に疑問が呈される事件はいくつかございましたが、東電さんの役員の方々の責任問題とは切り離して、危機対応としての情報開示の在り方を論じることは重要なことだと思っております(2002年の東電さんの原子炉点検データ改ざん事件の際は、経営トップ含め数名の責任問題によって情報開示に関する構造的な問題が語られることはなかったのではないかと思われます)。元社長さんは毅然と「東電の情報開示はベストを尽くしてきた」と記者会見で語っておられましたが、東電の抱いている「ベストな情報開示」とは何か?このあたりをぜひ、知りたいところであります。今後、震災直後の東電さんの事故対応については、平時における東電さんの安全確保体制の整備問題や、役員さん方の責任問題も絡めていろいろと検証される機会が増えるとは思いますが、二度と電気事業会社のコントロール不能となるような原発事故だけは発生させてはならないことを今回十分に国民が認識したわけですので、東電さんには、(HPを閲覧すれば、これまでも相当に情報開示の姿勢は真摯なものであることは理解できますが)企業の社会的な責任としてどうか詳細な情報公開を果たしていただきたいと願うところです。

6月 20, 2011 商事系 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2011年6月17日 (金)

会計検査院のおしごと

本日(6月16日)、虎ノ門の会計検査院にて、調査官の方々向けの「企業不正防止のための内部統制構築の実務」なる講演をさせていただきました。検査官や調査官の方々とは、仕事上の接点もほとんどございませんので、合同庁舎7号館はほとんどアウェー状態でありましたが、院長さんはじめ、たくさんの調査官の方にお越しいただき、不祥事の原因究明と分析、再発防止策の検討を中心に具体例を交えてお話させていただきました。

会計検査院の調査官といえば、ご存じ「プリンセストヨトミ」・・・・、ということで堤真一さんや、綾瀬はるかさんのような調査官が実際にいるのかなぁ。。。。と会議室を眺めておりましたが、うーーーん。(ー_ー)!!

やはり現実の会計検査院のお仕事と映画の世界では少し違うのでしょうね。実際、大阪での実地調査は3人ではなく5人程度が1グループとなるそうです。また、独立行政法人でも複式簿記を採用するところが増えておりますので、最近は国家公務員試験合格者だけでなく、公認会計士試験合格者にも調査官の門戸が開かれているそうですね。講演終了後、室長さんから会計検査のイロハについて1時間ほどレクチャーを受けましたが、なるほど、最近はプリンセス・・・ではありませんが、地方公共団体の不正根絶のための仕組み作りなどにも関心が高まっているそうであります。

お話を聞いてみますと、公共団体の不正(とりわけ資産流用)・・・というものは、また民間企業のそれとは少し性質が違いますね。たとえば不正のトライアングル(動機、機会、正当化根拠)に分析してみると、とてもオモシロイことに気づきますが、また長くなりそうですので、これはまた別の機会に、ということで。

6月 17, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月16日 (木)

エフ・オー・アイ被害者株主、会計監査人・監査役を提訴

エフ・オー・アイ事件といえば、株主の方々が引受証券会社や証券取引所に損害賠償請求訴訟を提起されていることは知っておりましたが、このたびエフ・オー・アイ社の元会計監査人、監査役の方々を被告として「監査見逃し責任」を追及する訴訟を提起されたそうであります(東京新聞ニュースはこちら)。以下では、とくに監査役さんの「監査見逃し責任」追及について一言。

原告の方による「不正会計の兆候についての確認調査を怠った」との会見内容から推察されるところでは、当ブログで従来から申し上げておりますとおり、監査見逃し責任の追及では、「おかしな兆候」の存在、そしてこれに対する「監査役の気づき」が争点となるものと思いますので、争い方としては正鵠を得たものではないかと思われます。

ただ、アイ・エックス・アイ事件の監査役3名の代理人を務めた経験からいたしますと、監査役、会計監査人の責任追及のハードルはめちゃくちゃ高いです。原告側に「不正の兆候」の立証責任がありますので、膨大な記録から、なにが不正の兆候なのかを裁判官に説明しなければなりません。いっぽう、まじめに監査役を務めていた方からすれば、いかんせん社内の事情に精通していますので、「それは不正の兆候ではない」と、合理的な理由をつけてあっさりと反論してしまいます。

私の感想として申し上げますと、監査役が敗訴するのは、①経営執行部と粉飾を共謀していた場合、②明らかに粉飾を知っていて、これを放置していた場合、③上場企業の監査役としての、ごく普通の職務すら怠っていたような場合、のいずれかのケースではないかと。ですから、「異常な兆候」で争う「正道」でいくよりも、少し荒っぽいかもしれませんが、「監査役もグルだった」的な争点形成の戦法でいくほうが勝てる見込みがあるかもしれません。

たしかに、ライブドア株主損害賠償訴訟、大原町農協事件、釧路生協事件、大和銀行株主代表訴訟事件、ダスキン株主代表訴訟事件等で、まじめに勤務していた監査役さんに任務懈怠が認められたケースもありますので、これらを工夫して引用して、いかにして「異常な兆候」が監査役の目の前に存在していたのか、説得的な主張を展開する必要がありそうですね。

できれば、会計監査人と監査役が同一の訴訟で審理され、「会計監査人の第一次的責任」や「監査役による会計監査人監査の相当性判断」あたりの論点にまで踏み込んだ判決がでることを期待したいと思います。

6月 16, 2011 不正を許さない監査 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月15日 (水)

フツーの会社も「焼肉酒家えびす」と同じ運命をたどるのか?

本日(6月15日)より、いよいよ2011年の株主総会シーズンが本格化するため、本業に近いお話を書こうかと思っておりましたが、ちょっと気になるニュースが報じられておりますので、ユッケ食中毒事件関連についてのエントリーとさせていただきます。169名の食中毒被害者(6月10日現在)を出したユッケ集団食中毒事件に関連するニュースでありますが、昨日(6月14日)深夜の各紙報道によりますと、生食を提供している52%の飲食店が国の衛生基準を満たしていなかった、とのことであります(厚労省の調査結果の発表によるもの)。ちなみに東京や大阪では約80%の飲食店に違反がみられた、とのこと。

「焼肉酒家えびす」を運営するフーズ・フォーラス社は経営再会を断念し、60名の社員全員を解雇した、とのことであります。提供した生食肉により4名もの犠牲者を出した以上、これはやむをえない事態といえるかもしれません。ただ、被害者に対する損害賠償金の支払も困難になったと思われますので、被害者の方々はやり場のない怒りが残ることとなります。

ただ、冒頭の調査結果、および警察の捜査経過(まだ明確な結論は出ておりませんが)などを考えますと、フーズ・フォーラス社と同じように、生食の衛生面に十分な配慮をしていない飲食店は全国に多数存在するわけでして、固有の違法事実が特定されていないフーズ社の経営者としては、なぜ自分の店だけでこのような事故が発生したのか、本当に運が悪かった、という気持ちになっているのではないでしょうか。現に、解雇されたフーズ・フォーラス社の従業員の方々には、すでに大手飲食チェーン店より採用募集の声がかかっているそうで、「従業員は何も悪くない」といった気持ちをお持ちの同業者の方々もいらっしゃるようであります。

もちろん、国の衛生基準を満たしていない生肉の取扱いをしていた以上、フーズ社は悪くなかったとは言えないはずであります。しかし、なぜフーズ社の提供した生食だけに、このような惨事の要因が潜んでいたのか、そのあたりが解明されない以上は、どこの飲食店でも起こりえた事件であり、他店としましては、たまたまY商店から生食用牛肉を納入しなかったことで助かった、だけに過ぎないのではないかと思われます。

コンプライアンス経営に関する講演をさせていただくなかで、よく「形式的違反を放置しますか?」というお話をいたします。どこの会社にも、「同業者も同じように放置しているから」とか「違反していても、とくに誰かに迷惑をかけないから」といった理由で、そのまま放置されている形式的な行政取締法規違反が存在します。建築基準法違反の建物、消防法違反の付属設備、労基法違反の労働慣行、風営法違反の営業形態、そしてマニュアルに反した遊戯施設の運営などなど、挙げればきりがありません。それらの形式的な法令違反状態は、たしかに普段の企業活動では何も問題となることはなく、事業リスクに直面する可能性に乏しいものであります。

しかし、今回のフード社のように、他の飲食店でも同じように衛生基準は満たしていないから、というだけで普段は問題がない企業活動であったとしても、いざ自社内で事故が発生し、消費者に多大な迷惑をかけてしまえば、これが命とりになってしまうわけであります。「俺は悪くない、たまたま運が悪かっただけだ」と人から同情してもらおうとしても、やはり形式的にでも法令違反(もしくはルール軽視の企業対応)が見て取れるのであれば、「それはルールをきちんと守らなかった自分が悪い、人もやっているから、というのは理由にならない」わけでして、だからこそ、平時より社内を見回して、放置されているような形式的な法定違反は存在しないか、十分に配慮する必要があると考えます。

どうしても、このように悲惨な事件が発生してしまいますと、だれの責任なのか「犯人捜し」が始まります。そして一般社会的な見地から、犯人と思われるものが特定されますと、そこに批難が集中してしまい、その背後にある構造的な問題が見失われてしまいます(つまり、効果的な再発防止策が検討されなくなるため、また同じように悲惨な事故が発生してしまいます)。とくに今回のフーズ社の事件では、代表者が特有のキャラクターの持ち主であったようにも見受けられましたので、その責任批難の対象が容易に特定できたように思われます。しかし(前にも書きましたが)ひとつの責任追及のターゲットがみつかった場合には、運よく摘発を免れた同業者は胸をほっとなでおろすことになろうかと。そう思いますと、ユッケ食中毒事件というのは、ゾッとする事例であります。このフーズ社と同様の運命のたどり方は、おそらく当ブログをご覧の皆様の会社でも十分に発生可能性があるのではないか、と考える次第であります。

6月 15, 2011 コンプライアンス経営はむずかしい | | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年6月13日 (月)

原発事故・「想定外」と情報開示に関する素朴な疑問

日曜日(6月12日)の夜、高濃度のストロンチウムが(福島第一原発地域で)地下水や海水から検出された、とのニュースに触れ、汚染水処理施設ができたとはいえ、いよいよ原発事故もたいへんな状況となってきたことを覚悟いたしました(朝日新聞ニュースはこちら)。ご承知のとおり、ストロンチウムは半減期がとても長く、放射線を体内から浴びて白血病を起こす危険性が高いわけで、今後は放射性物質が混入していることをあえて承知の上で食品を摂取しなければならないことになるんですよね。これによって今後、工程表のとおりに福島第一原発が冷温停止状態に至ったとしても、土壌や海水汚染によって長期にわたり、健康被害が持続することになるようであります。もはや東電さんの「健康に影響が出ないレベル」との意見情報は誰も聞く耳を持たなくなったのでは、と。

事故から3か月も経過しますと、テレビに登場される専門家の方々がおっしゃることが全くアテにならないことが判明し、もはや自分が信用できると思われる専門家の方の判断基準をモノサシとして、そこに東電さんや政府の事実情報を集めて判断するしかなさそうな状況であります(今頃認識しても遅すぎたかもしれませんが・・・・)。まさに今回の原発事故で正確な情報と、自己責任による判断の重要性を痛感いたしました。ついに私のように(事の重大性にわざと目をそむけて)ノホホンと暮らしていた一般庶民も、家族と今後のことをきちんと話し合う時期になってしまったようであります(関電の15パーセント節電要請もありますし・・・)。

原発事故にあまり詳しいほうではありませんので、これは素朴な疑問なのですが、東電さんは今回の福島第一原発の事故発生は「想定外」「不可抗力」という言葉をお使いになるようですが、なぜ想定外の事態に至ったのにもかかわらず、事故発生当初から情報開示に積極的でなかったのでしょうか?想定外ということは、専門家軍団である東電さんでも、今回の事故収束に向けて原発をコントロールできない、ということですから、海外なり、街場の専門家なりの支援を得られるよう、たとえ正確なものでなくても、事実情報を速やかに開示しなければならなかったはずであります。素人的発想としても、なぜ製造元のGEの支援をとりつけなかったのか、とても疑問であります。この疑問は、事故発生当時の状況を斟酌したうえでのものであり、けっして「後だしジャンケン」的発想ではございません。これは東電の役員の方々の善管注意義務にも影響を与える可能性が高いのではないでしょうか。

かりに、東電さんが開示すべき情報を自社で選択し、かつ正確性を調査したうえで開示していた、ということ、つまり東電としての情報開示が適切であったとするならば、それは原発事故が自社の能力においてコントロールできていたことを示すものであり、当然に想定内の事態への対応をしていたということになるのでは?との疑問が湧いてまいります。もし想定外の事態に至ったにもかかわらず、消費者、専門家、海外諸国に向けて適切に情報開示をしていなかったとするならば、それは(組織の社内力学としては、そういったことがあり得ても)経営判断としてはあり得ない選択ではないか、と。

ホンネで申し上げますと、この高濃度ストロンチウム拡散の情報のように、適時適切な情報開示は東電さんしかできないと思いますので、これからも東電さんには頑張ってもらうしかないと思っております。しかし、原発事故の法的責任という視点からみると、東電さんの情報開示の在り方は、①情報開示の対応自体に過失がなかったかどうか、②情報開示の対応の稚拙さから平時における安全対策の過失が推定できないか、という二つの重大な問題に結びつくのではないか・・・・・と、考えたりしております。

あと、余談ではありますが、関電の株主総会で「脱原発」が株主提案で審議されるそうであります(ニュースはこちら)。社長さんの解任議案等は別としましても、脱原発議案については、関西では50%を原子力に依存しているものの、もはやイデオロギー的な問題とは言えないですね。私は関電の大株主である各企業さんが、この株主提案について賛成票を投じたのか、反対票を投じたのか、開示してほしいと思います。賛否いずれにせよ、各企業がどのようにエネルギー問題を考え、社会的責任を果たそうと考えているのか、ぜひお聞きしてみたいところです。

6月 13, 2011 情報管理と内部統制 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2011年6月10日 (金)

インサイダー取引規制の現状とその最新論点(大証セミナー)

「管理部門はつらいよシリーズ」をアップしておりましたので、すっかり出遅れてしまった感のある村上ファンド、インサイダー刑事事件最高裁判決でありますが、村上氏らによる上告が棄却されたそうであります。日経新聞の6月8日朝刊には有識者の方々のコメントがたくさん掲載されておりました。①立法の不備を解釈で補った日本商事事件判決、②インサイダー規制を「効率的な価格形成や取引倫理というよりも、一般投資家が市場から去らないために、不公平な取引を規制する趣旨」とみて、その趣旨に合致した解釈指針を展開した日本織物加工事件判決の流れからするならば、今回の最高裁判決の内容はごくごく当然のことと思われます。「実現可能性」が構成要件の内容になってしまったら、おそらく今度は故意犯(規範的構成要件事実)の解釈が大問題となってしまって、金商法を含めた全法律体系にゆがみが生じてしまうことになるのでは・・・と考えておりましたので、至極穏当な解釈に落ち着いたものと考えております。

いずれにしましても、有識者の方々が、「今後はインサイダー取引規制が厳格化する可能性が高く、企業としても情報管理を徹底する必要がある」と指摘されておられます。私も同感でありますが、こんなときにタイミングよく、7月11日(月)のインサイダーセミナー(大証、大阪弁護士会共催)のお知らせでございます。大証のホームページにて広報されておりますとおり、原先生(北浜法律事務所)、小西氏(大証上場管理グループリーダー)の講演とともに、今回は宇澤先生(宇澤公認会計士事務所)を交えてのインサイダー取引規制の現状とその最新論点と題するシンポを開催することとなりました。3月のセミナーとは異なり、今回は大証JASDAQ上場企業の役職員の皆様向けのセミナーでありますので、多数ご参加いただければ幸いです。

以前ご紹介いたしましたとおり、宇澤先生(公認会計士)は、約12年間にわたり、財務捜査官として警視庁、証券取引等監視委員会で犯則事件の摘発に従事されてきた方でして、インサイダー事件、粉飾決算事件の立件に関わってこられた方であります。最近ではあのエフオーアイ、プロデュース等の粉飾決算事件の立件にも関与され、また私も事件の代理人として関与しておりましたアイ・エックス・アイ事件の立件も手掛けられた方です。もちろんインサイダー事件も間近で見ておられたので、摘発する側からみたインサイダー事件の現状と課題について、いろいろと語っていただこうと思っております。小西さんを交えて、取引所審査と行政当局の特別調査との連携などについても実務的なところをお話いただければ、と。また、原先生には個人犯罪にすぎないインサイダー規制につきまして、なぜ最近は企業の内部統制構築の問題としてとらえられるようになったのか、企業のリスクという視点からわかりやすく解説していただきたいと考えております。

モデレーターは不肖私ですが、関係者の方々に、守秘義務スレスレの濃いお話(ただし個別案件にわたるお話は無理ですが・・・)をしていただくよう尽力いたしますので、どうか皆様(お時間の都合がつきましたら)7月11日午後2時から5時まで、大阪弁護士会館2階ホールにお越しいただきますよう、お願い申し上げます<m(__)m>

6月 10, 2011 村上ファンドとインサイダー疑惑 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年6月 9日 (木)

管理部門はつらいよシリーズ(その2-社外取締役制度の巻)

(6月9日午前:追記あります)

昨日の「管理部門はつらいよ・その1 社内ADRの巻」につきましては、メールや、本業でお会いした方々から反響をいただきましたので、引き続き、第2弾(社外取締役制度の巻)をお送りいたします。こちらは昨日(6月7日)、皆様よくご存じの某上場企業の総務部長さん(6月に役員にご就任予定の方)とお食事をご一緒したときのお話。

先生、うちの総務の者に聞いたら、なんや「社外取締役なんとか」のシンポやりはったらしいですなぁ。社外取締役導入積極派・・・ということですか?でも、そないなったら、管理部門はたいへんですよ。うちも社外取締役さんが一人いてますけど、私が役員会の直前にむこうの会社まで行ってレクチャーせなあかんのですよ。そら、役員会に来てもらって積極的に意見出してもらうためには当然でしょう。重大な案件のときは、月に2~3回役員会開きますけど、そのたびにレクチャーに行きますから。先生、もし社外取締役が3人とかなったら、もう今の総務の体制では無理ですわ。そういうこと考えて議論は進んでいるのですか?

なるほど・・・。企業価値向上のために社外取締役制度を導入し、社外取締役の人数を増やす・・・ということを真剣に考えるならば(つまり、お飾りではなく、積極的に社外の役員に経営判断に参画してもらう、という気概があるならば)、たしかに執行役員会や常務会といった、実務レベルでの経営会議の状況や、経営判断の根拠となる社内状況を事前にレクチャーする機会というものは必要になってくるでしょうね。これは、おそらく取締役会での上程事項がもう少し絞られて、実質的に人事や報酬等に関わる案件こそ審議の対象となる場合においても、あまり変わらないものと思います。

今月号の「月刊監査役」の座談会記事におきまして、東証の元専務のNさん(社外取締役や社外監査役を複数務めていらっしゃる方)が、社外監査役のほうが、社外取締役よりも、執務時間は多い、監査は事業全般に関わるものであり、社外といえどもカバーする範囲は広いからである、とおっしゃっておられます。社外監査役の場合は、常勤監査役さんとの情報共有によって、ある程度カバーできるわけですし、最近は「監査役スタッフ」が充実している企業も増えつつあります。しかし、社外取締役の場合には、社内の取締役さんも自身の担当業務で忙しいわけですから、そんなにカバーできるわけでもなく、したがって総務や法務等の管理部門に負荷がかかることになるのですね。「なにも、そんなに頑張らなくても・・・・」といった声も聞こえてきそうではありますが、ガバナンスの向上に積極的な企業ほど、社外取締役の方も意欲的となり、また会社自身も社外の方に積極的な経営参加を要望するわけですから、こういった管理部門の方々の悲鳴にも似た声が聞こえてきそうであります。社外取締役候補者を探すこともやはり管理部門のお仕事だったりするわけでして、このあたりの人的・物的資源問題について、会社法制の審議においてはほとんど語られていないのが現状ではないかと思われます。

そういえば、ボードの半数が社外取締役で占められているニッセンHDさんなどは、このあたり、どうされているのでしょうか?社外取締役ネットワークの勉強会に、同社の優秀な事務方責任者の方が参加されておられるので、一度お聞きしてみたいものであります。また、大規模な上場企業であれば、こういった負荷に耐えられるかもしれませんが、中小規模の上場企業においては、管理部門の体制からみてレクチャーすら、まったくできないのではないか、と。いつも社外取締役ご本人のご負担には関心が寄せられるものの、こういった事務方のご苦労についてはあまり語られてこなかったように思います。中国、韓国、インドをはじめ、証券市場が活性化している国では3分の1以上が社外取締役でなければならない、と会社法もしくは取引所ルールで義務化されているわけですが、社外取締役に期待される役割を明確にして、もうすこし権限移譲を含めて制度設計に「割り切り」が必要なんでしょうか?このあたり、またじっくりと考えてみたいと思う次第であります。

(6月9日午前:追記)

ここ2日のエントリーには多くの反響がありまして、コメントだと社名がバレる、ネットワーク制限によりコメントが書けない、としてメールを頂戴したり、お電話まで頂戴しております。賛否両論あるとは思いますが、お読みいただければおわかりのとおり、一弁護士の個人的な意見でありまして、しかも問題提起の域を出るものではございません。こういったことを社内の議論のネタにお使いいただければ結構でございます。

なお、ある上場企業(JQ)の監査役の方より、有益なご意見といいますか参考事例をメールにていただきました。社内から掲示板への投稿は禁じられている、とのことですので、こちらへアップさせていただきます。

監査役就任以来、こちらのブログでいろいろ勉強させていただいております、上場企業(非大企業)の常勤監査役です。初めて書き込みされていただきます。
監査役会の監査役基準にも社外取締役との情報交換や連携について検討するようにとの条項がありますが、弊社では取締役会で重要な案件がある場合は、常勤監査役の判断でその前の監査役会に社外取締役もオブサーバーとして参加していただき、情報共有を図っております。

私が必要と判断した際には監査役会とは別に、常勤監査役が直接社外取締役と意見交換することもあったり、時には監査役会+社外取締役で代表取締役と意見交換会の場を持つこともあります。常勤監査役の裁量範囲は考えようによってはとどまるところがなく、社外取締役はある意味監査役の味方でもあるので(社内取締役が敵という意味ではなく)積極的に利用させてもらっているとも言えます。監査役としてのマルチステークホルダーとのコミュニケーションの一環ではありますが、取締役だからと言って管理部門任せにしているよりも、自分で動いたほうが早いです。ちなみに、ニッセンHDさんの事例に勇気付けられて、昨年、社外取締役増強に関して提案しましたが、社外監査役からも反対されてしまい、実現できずにいます。改革には時間がかかりますね。

少し長くなり、恐縮ですが、参考にしていただければ幸いです


6月 9, 2011 管理部門はつらいよシリーズ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月 8日 (水)

管理部門はつらいよシリーズ(その1 社内ADRの巻)

昨日、とある独立行政法人の理事の方と、お仕事の合間に雑談をしていたときのこと。

「先生、うちの法人、最近セクハラやパワハラの調査で管理部門はヘトヘトなんですよ。どんな判断にしたって、最後はどっちかから恨まれてしまうわけでしょ。最近は下手な調査をしたら社員から法人が訴えられるっていうじゃないですか。もう、これ以上、管理部門にストレスをためさせないように、なんか会社のなかにADR(裁判外紛争解決機関)みたいなものを作ることはできないでしょうかね?社内調査だけじゃなくて、その裁定まで含めてそこに丸投げできたらどんなにありがたいか。。。」

なるほど、たしかに我々弁護士が社内調査に加担したり、外部の者だけで調査委員会を設けることはありますが、社内における紛争の仲裁裁定を行うような、紛争解決業務を行うことはあまり聞いたことがありません(金融ADRは顧客と会社の紛争を前提としますので、少し違いますよね)。ためしに「社内ADR」でグーグル検索をしてみましたが、まったくヒットしませんね。ハラスメント関連の社内紛争が発生した場合など、①調査担当社員の方々の精神的疲弊は非常に高いものであること、②会社主体による調査自体、その公平性が保たれにくいこと、③会社に二次セクハラ、二次パワハラのリスクが発生するおそれがあることから、こういった社内ADRへの要望というものはあるのかもしれません。

解決方が多少あいまいなものであったとしましても、弁護士やメンタルヘルスの専門家などが仲裁委員になって、完全独立な立場で仲裁や調停を行うということですと、その解決について会社が恨まれずに済みますし、管理部門にストレスも溜まりませんし、なにより紛争が外部に漏れずに処理できる、というメリットがありそうです。こういった「社内ADR」の制度のようなものは実際に作れないものなのでしょうか?

問題は守秘義務との関係や、「法律事務」を弁護士以外の者が取り扱うことについての弁護士法違反に関するところではないかと。弁護士以外の者が仲裁に関与するとなりますと、ADR法による認証手続きも必要になってくるものと思いますので、かなりハードルは高いかもしれません。社員どうしの紛争を解決するとしても、会社自身が使用者責任や職場環境配慮義務違反を根拠付ける事実を公正に認定できるかどうか(外観的な独立性)、といったことも問題となりそうです。

ただ、認証ADR(大阪弁護士会・民事紛争処理センター)で仲裁人や示談あっせん人を長くやっている経験からしますと、当事者が仲裁手続きに合意した場合には、その調査も判断も早く、裁定内容も、社内の関係者の意見を聴取したうえで合理的な解決案を提示できる、という意味では結構有益な運用が可能ではないかと思います。社内のだれもが紛争の存在を知ってしまったケースなどでも、管理部門は安心して手続きの顛末を社内で公表できるかもしれません。上記のとおり、克服すべき諸問題はありますが、一度検討してみてもよいのではないか、と。

6月 8, 2011 管理部門はつらいよシリーズ | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月 7日 (火)

被災地相談関連-相続放棄熟慮期間の延長措置等

6月11日で震災から3カ月が経過するわけでありますが、議員立法で相続放棄に関する熟慮期間(3カ月)の延長等が検討されていると報道されております。「そんなんあたりまえやん!」と同業者の方からブーイングが出そうなネタではありますが、最近のマスコミ報道であまり触れられていない点についてコメントしたいと思います。

ひとつは、相続放棄は(自分のために)相続開始を知ったときから3カ月以内に最寄りの家庭裁判所に申述手続きを行うのでありますが、注意しなければいけないのは、法定の単純承認事項です。被相続人の財産について、何らかの処分をしてしまったら、それは相続を単純承認したものとみなされ、その後は相続放棄はできません(民法919条、921条)。相続人の預金を解約して使ってしまったとか、死亡された方の債務者から借金の返済を受けた、といった後に、実は被相続人の借金のほうが大きかった、というケースなどは注意が必要です。悪質な金融業者等は、こういった法定単純承認事項を活用して、後日、相続放棄できない状況にしてしまうことも、過去にありました。これは相続放棄の熟慮期間が延長されても解消しないリスクです。(ただ、そのようなケースでも法律専門家に相談して、なんとかなるケースもありますが)

もうひとつは「限定承認」ですね。相続した資産の範囲でのみ負債を承継する(つまり責任財産は相続資産のみ)、ということで、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのか不明なケースで限定承認が行われる、というものですが(民法922条)、これは結構、難しい手続きなので、弁護士の支援が必要ではないかと。とくに土地などが資産に含まれている場合、譲渡所得税が高額となり、これはそのまま限定承認者の個人資産に影響を与えますので、相続放棄すればよかった、単純承認すればよかった、という結果になるケースがあります(弁護過誤もときどき散見されます)。

最後は「震災の行方不明者、死亡届の受理簡易化を決定 法務省」との日経ニュース。これは被災地の法律相談でも一番多かったので、被災地でお困りの方々によってはビッグニュースだと思います。現実には死亡認定制度が活用しにくい、と言われていたので、相続問題や保険金受け取り問題などに大きな前進がみられるのではないかと思います。

実際に避難所に行ってみますと、(私の行った避難所では)4台ほどのパソコンがネット接続状態で提供されていたのですが、ほとんど使われていませんでした。被災者の方々には、こちらから直接情報提供しなければならないことを痛感しました。また今年度中にもう一回被災地相談に行きたいと考えておりますが、こういった情報を被災者の方々へどうやって届けるかが課題ですね。

6月 7, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

架空循環取引事例における「不正早期発見」型再発防止策の登場

本日(2011年6月6日)のTDNETでは、某監査法人さんの登録申請不認可に関連する開示情報が一番の話題だと思われます。(すでに多くのブログで取り上げられており、「品質管理」なる言葉が踊ってますね・・・)ただ、そんな中で、東証・名証1部の株式会社ゲオ社による「不適切な会計処理に関する関係者の処分と再発防止策について」なるリリースが、私的には最も関心の高いものであります。

すでに5月19日付け「当社連結子会社における不適切な会計処理に関する調査結果等のご報告」において、過年度決算訂正を要する不正行為(架空循環取引)の事実が報告され、また再発防止策の提案についても記載されておりましたが、外部調査委員の方々(東京の大手法律事務所の弁護士の方々)の発案による再発防止策をほぼ全面的に受け入れる形で、このたびのリリースとなったようであります。

この不正会計事件の再発防止に向けた諸策として、もっとも注目すべきは「早期発見型」の再発防止策が盛り込まれていることであります。これまで、会計不正事件の再発防止策といえば、精神訓示型(コンプライアンス意識の徹底、研修制度の充実)、未然防止型(ローテーションの実施、職務分掌の徹底、上司による再チェック等)がほとんどであり、早期発見型というと、わずかに内部通報制度の充実、という程度でありました。

しかしながら、ゲオ社の再発防止策には、「原因行為を早期に発見するための方策」としての不正取引発見のための制度的手当て、不正取引の兆候を把握する施策が具体的に掲示されております。また、これとは別に「不適切な会計処理を早期に発見するための方策」も別途掲示されております。調査委員からの提案のうち、社内リーニエンシー(自己申告者へのペナルティの軽減)は採用されなかったようですが、それでも、これだけ具体的に不正早期発見型の再発防止策が盛り込まれたリリースは、これまでほとんどなかったと思います。

「不正はどこの企業でも発生するものである」というところから出発し、これを過年度決算訂正に至るほど重大なものになる前に、その兆候を発見することによって財務報告の信頼性を確保する。こういった「モニタリング重視型」の内部統制システムは、このたびのJ-SOXの見直し(経営者における創意工夫に関する監査人の尊重)と親和性が高く、「費用対効果」を重視した次世代型モデルとして非常に有効かつ効率的なモデルであります。こういった再発防止策が今後も次々と登場することが予想されますし、なによりも本件施策を講じたゲオ社において、このシステムが財務報告の信頼性向上に資するものとなることを期待しております。

6月 7, 2011 架空循環取引 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月 6日 (月)

日本企業の人事評価制度とコンプライアンス

土曜日(6月4日)の社外取締役ネットワーク(関西勉強会)は、武富士事件最高裁判決にみる租税法律主義(租税回避・脱税のグレーゾーン)、そして「トヨタ危機の教訓」(ジェフリー・K・ライカーほか著 日経BP社)を題材としてガバナンス問題を考える、というもので、いずれも私的にたいへん興味のあるものでありました。弁護士としての本業からみると、武富士事件判決に関する諸問題のほうに断然関心がございますが、本日は後者(トヨタ危機の教訓)に関するお話であります。

この「トヨタ危機の教訓」によりますと、今回のリコール危機が広がった大きな要因のひとつに(豊田章男社長も認めておられるように)米国と本社との間で状況認識と危機感に約3か月のギャップがあったことが掲げられております。これは今回の原発事故における東電の危機対応にも共通する問題のように思います。

企業の有事対応に不可欠なものとして、よく「危機感の共有のための情報伝達」ということが指摘されます。誰かが企業にとって重大なリスクを認識しても、これを「重大なリスクである」という認識が経営トップを含めて共有されなければ、指揮系統が機能せず、リスクに対応する有効な統制手法はとられない、ということであります。

私自身、リコール支援や不正調査の仕事をしていて感じますのは、「危機感の共有」というのは理念としては理解できるのですが、果たして日本の組織のなかで、現実に「共有」することは困難ではないか、との疑問であります。日本の企業における人事評価は「減点主義」であり、一回×(バツ)が付くと敗者復活戦はない、したがって自分に「×」がつきそうな情報、自分の上司もしくは部下に「×」がつきそうな情報については、これを全社的に共有せずに自分の中で抱え込んでしまう傾向にあるのではないでしょうか。自分だけでなく、自分の将来に影響を及ぼす人の問題についても情報は開示せず、だれも本当のことを言わない(思っていることを言わない)企業風土、というものがあるのではないかと。

私はこのような意見を勉強会で申し上げたところ、現役の社外取締役の方々からいくつかのご意見をいただきました。

意見その1:たしかにそういった風潮はありますね。ただ、自分に×がつきそうな情報を自分ひとり、または自分の部署で抱え込んで黙っていても、その×を別のところで埋め合わせできることも多いのですよ。自分の減点になりそうな情報を隠していたからといって、それが全部組織の失敗につながるのならば反省もしますが、「個人の失敗は個人の責任、個人の功績は部署の功績」という風潮に救われているところもあるのではないでしょうかね。

 

意見その2:たしかに減点主義は人事制度としては問題ですね。でもね、加点主義の人事制度とした場合、その加点は誰が判断するのですか?加点を評価できる人材が社内に本当にいるのでしょうか?そのデメリットを考えた場合、減点主義による人事評価がもっとも社員にとって公平な制度ではないでしょうか(いまのところ、これはやむをえないのではないか)。

 

意見その3:減点主義の最たるものが官庁や独立行政法人。民間企業はまだましなほうではないでしょうか。会社が順調に売り上げを伸ばしているときに、後ろ向きの意見を言える勇気のある人はまずいないでしょうね。ミスすれば個人の責任になりますが、その意見で会社が救われたとしても、それは個人の評価ではなく、組織の評価としかみなされませんね。

福島原発事故に関する東電の情報開示体制が批判されているところでありますが、東電幹部が事故当初から事故情報や対応に関する報告をわざと隠ぺいしていた、ということであれば言語道断であります。しかし、すでに当ブログでも述べておりますとおり、私はどうも①こんなに大きな問題に発展することは当初からは思いもよらなかった、②自社だけで解決できる問題である、との慢心があった、③まちがった情報を流して、後日問題にされることは回避したかった、といった正当化理由が複合的に存在し、先のトヨタリコールの事例と同じく、危機感や状況認識を共有できる状態ではなかったことが大きな要因だったのではないか、と考えております。

「あいつに今回×をつけてしまったら、将来にキズがつくから、今回はうやむやにしておこう」とか「今回私が真実を述べて、上司に迷惑がかかるのだったら、このまま黙っておこう」という考え方が、普通に社内の常識的判断であるならば、コンプライアンス経営に不可欠な「風通しの良い企業風土」「情報の自由な伝達」といったものは単なる美辞麗句に過ぎないものになってしまうわけでして、ここにも思考停止に陥らない具体的な問題提起が必要なのではないか、と。

たとえば「減点主義」の人事評価が避けられないものであるとすれば、その減点は「平面軸」と同時に「時間軸」をもって評価されるべきではないでしょうか。社内調査によるセクハラ認定は、セクハラ行動指針への客観的な該当性判断(平面軸)と同時に、当事者間の過去における属人的な関係事実(時間軸-たとえば教育的な行動があったかどうか、交際期間が存在したか否か等)も合わせ考慮して、最終的な判断を下します。人事評価における減点判断ということも、こういった時間軸要素も含めての判断、ということを明確にするといったことも考慮されるべきかもしれません。(この点は私にサラリーマン経験がないもので、あくまでも拙い知識経験によるものでありますが・・・)

6月 6, 2011 民事系 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2011年6月 3日 (金)

証券市場の監視、「未然防止型重視」に向けた企業の対応は?

今年1月11日の日経電子版ニュースにて、証券取引等監視委員会の不正開示に関する検査が強化されることが報じられ、この7月の機構改革と同時に専門部署が新設される、とのことでありました。おそらく、このSESCの検査強化に合わせて・・・と思いますが、東証自主規制法人(COMLEC)でも、同様に市場監視体制の見直しが進められているように思われます。

本年3月頃に、そのような動きを少しだけ知った次第でありましたが、月刊監査役の最新号(6月号)に、東証自主規制法人常任理事の方による「未然防止型上場管理の取組みと監査役に期待される役割」といった論稿が掲載されましたので、早速拝読いたしました。誤解のないように申し上げると、これまで通り、虚偽記載事案や不公正取引事案の事後的審査(調査)もこれまで同様に鋭意行っていくが、それに加えて今後はこれら証券市場における不正事件を未然防止するための取組みを積極的に行っていく、とのことであります。機構改革を行うSESCも、おそらくこういった未然防止型の市場監視を今後推進していくのではないでしょうか。

では一体「未然防止型」による上場管理とはどういったものなのでしょうか?この月刊監査役で例示されているところは、たとえば①市場関係者との連絡体制の強化、②企業による「不正の早期発見」への取組み促進、③内部統制システムの運用に関する企業のチェック④第三者委員会との連携による原因究明、再発防止策の提言、⑤第三者割当に関する適法意見制度、⑥独立委員の活用などであります。これまでは不正の匂いがするところへ入っていって審査、調査を行うものであったところ、不正の匂いがしなくても、チェック体制のなかで不正を嗅ぎ取る、といったところかと。

不正の早期発見というのは、過年度の決算訂正に及ぶほどの重要な虚偽記載となる前にモニタリングによって不正を見つけることであり、これは(企業の取組みとして)とても重要なことではないかと考えております。当ブログでも「不正の早期発見」についてはずっとこだわってきたリスク管理手法でしたので、やっと日の目を見るようになってきました。また内部統制の運用チェックについても、監査役や内部監査人による独立モニタリングの機能を重視すべきものであり、J-SOXを補完するものとして期待されるところであります(会計監査人、監査役、内部監査人の連携協調により、企業はどこに財務報告の信頼性を毀損するおそれがあるとみているのか、説明できるようにしておくべき)。

第三者委員会との連携といいますと、一見すると「不正発覚後の事後審査ではないか?」とも思えますが、最近の不正事件は複合型(虚偽記載とインサイダー、不適切第三者割当と虚偽記載等)によって一般投資家の利益を毀損することが多いわけでして、不正を小さいうちに発見し、さらなる被害を防止する、という意味では重要なところではないでしょうか。また、第三者委員会の情報を早期に入手することで、行政目的や取引所の規制目的に沿った対応が打てる・・・という意味でも「連絡体制の強化」に資するのではないかと思われます。そのあたりの理由で、月刊監査役の論稿と同時に、旬刊商事法務5月25日号において「虚偽記載事案における第三者委員会と上場廃止審査等の実務上の留意点」(自主規制法人の審査役、調査役の方によるご執筆)が同時に出稿されたように思います(もちろん私の推測にすぎませんが・・・)。

前記「月刊監査役」のなかで、新興企業だけでなく、老舗の上場企業においても未然防止の必要性は変わらない、とありますので、今後はこういった証券市場規制の変化について、上場企業がどのように対応していくのか、という点が課題であります。ソニー、トヨタ、東電など、日本を代表する企業が「情報開示の在り方」でとても苦労しておられますが、「重要な虚偽記載」はなにも故意的行動によるものとは限らないわけでして、効率性と有効性をバランスよく調和させた未然防止型システムの整備が望まれるところであります。

PS

企業法務を取り扱う弁護士のブログといいますと、私的には活字フェチさん、ともさん(池永先生)、森理俊さんのが好みでありますが、コメントをお書きになっておられる東京の川井信之さんも精力的なブログを開設されておられます。おお!日本レップの件、取り上げておられますね!?事案は日経新聞(法務インサイド)でも紹介されておりますが、川井先生も最後のところでお書きになっておられる「当事者と代理人」の関係がおもしろかったりして・・・・・(^^;;ブログを6年も書いておりますと、諸事情により(笑)、書きたくても書けないネタが増えてきたりするのですが、こういった話題に今後も鋭くツッコミを入れていただければ、と。とても今後に期待の持てるブログのようで(細く、長く頑張ってください)。

6月 3, 2011 商事系 | | コメント (2) | トラックバック (0)