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2011年6月27日 (月)

買収防衛策の廃止(非継続)は片道切符か?

いよいよ定時株主総会のシーズンも佳境を迎えておりますが、サンケイビジネスアイの記事によりますと、今年は買収防衛策導入企業(上場会社)のうち約15%が防衛策を廃止(もしくは継続しない)するようであります。とくに取締役会決議で廃止や非継続を決定できるところも多いわけですが、この時期に有効期限到来・・・ということもあり、「総会には継続についてお諮りいたしません」ということで、こういった集計がなされるのでしょうね。企業のホンネとしては、この記事にもあるように「経費削減」というところがやはり大きいのでしょうか。

いまから3年前に事前警告型の買収防衛策の非継続を決定した会社の独立第三者委員を務めていた者からしますと、当時はブルドックソース最高裁判決の検討結果と金商法ルールの改正を斟酌して、もはや防衛策は不要・・・という判断だったと思います(当時の私の意見は こちらのエントリーにて記載しております)。そして現在はといいますと、金商法ルールの改正によってある程度の手続き的担保が図られた、という理由と同時に、昨今の経営環境の変化に伴い・・・という理由が付されているのが一般的です。

ところでこの「経営環境の変化」というのはとても曖昧な表現であり、いったい何を意味しているのかよくわかりません。リーマンショック以降、いわゆる投資ファンドの圧力が減退し、以前のような敵対的な企業買収の機運が失せてきた、ということを意味するのか、それとも機関投資家との対話尊重の機運が高まり、とりわけ海外の投資家の要望(ここでは買収防衛策の撤廃要請)には最大限配慮しなければならない状況になってきたことを意味するのか、あるいはこの両方を意味するのでしょうか。数社の最近の適時開示を読みましたが、どこも意外と短い文章で締めくくられておりまして、この「経営環境の変化」がどういった意味で用いられているのかはよく理解できないところです。

レナウンやラオックスの買収事例などがあるため、中国企業あるいは政府系ファンドによる買収を警戒するところは大きい(菊池=鳥飼「株主総会徹底対策 平成23年度版」158頁)ので、まだまだ買収防衛策継続の必要性はある、とのご意見もあり、また「猛犬注意」の看板を掲げていること自体の効果(サメよけ効果)も否定できませんので、まだまだ防衛策を残す企業も多いものと推測されます。したがって、やはりいったん買収防衛策を導入しながら、なぜここに至って廃止するのか、そのあたりも一応の説明が必要なのではないかと思われます。

とくに、法制度の充実や「株主との対話促進」を理由として買収防衛策を廃止するのであれば、いったん防衛策を撤廃しながら、再度導入する、ということは株主への説明がつかず、困難なのではないか、と思われます。震災後の業績回復に全力を挙げている企業さんにとりましては、もはや買収防衛策のようなものは無用の長物に見えるのかもしれませんが、個人株主比率の高い東洋電機製造さんに対する日本電産さんの提携失敗事例、支配株主の強い意向が大きな影響力を持ったパルコさんに対するイオンさんの事業提携事例(いずれも買収防衛策導入企業)などをみますと、いったん防衛策を廃止する以上は、個人株主比率を高めるとか、独立役員の数を増やして経営の透明性を高めるといった手法により、安定的な株主作りと対話促進をもって防衛策に代えることが肝要ではないかと思う次第であります。

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コメント

レナウン・ラオックスの場合は支配株主が中国企業に売却しただけで、猛犬注意とは意味が違うような気がしますが、そのように法曹界で解釈されるのは遺憾です(「経費削減」の敵だ)。ラオックスは中国人観光客で大賑わい(震災前ですが)。

導入継続にしろ、非継続にしろ、それなりの説明責任を とおっしゃる主旨はもっともだと思います(「経費削減」で辞める会社は、(有能な弁護士ではなく)自社で考えなければならないから、説明が曖昧なのでは?)。

会計原則にしろ、こういったことにしろ、ニーズあるから供給があるとはいえ、企業自身がしっかり判断できるようになってほしいなあと思います。

投稿: katsu | 2011年6月27日 (月) 16時30分

なかなか買収防衛策廃止をする企業が増えず今年新たに導入する企業もあります。しかも期間投資家から見て適正な要件を満たしていない企業が数多くあり、ここ数年改善が見られるとはいえ、企業サイドはさらなる検討が必要であると考えます。いろいろな方がもっと取り上げると企業の意識が変わる可能性があります。今日大和総研の藤島さんのレポートを見ましたが昨年やや緩めの機関投資家は今年は厳しい対応をするのではとの見解でした。

投稿: 星の王子様 | 2011年6月27日 (月) 18時50分

高株価の維持が一番有用な買収防衛策ではありますが、株価は市場がつけるものとして放置している経営者が多すぎます。株価はある程度作ることができるので、安すぎるような状況を放置してはまずいのです。
自社の企業価値に比べて株価が十分に高値を付けていれば、乗っ取りをしても損しますので乗っ取りリスクが減少します。

あとは、同業他社との経営統合による規模の拡大でしょうか?
規模が小さければ簡単に乗っ取りされますが、時価総額が何千億にもなれば、額が額だけに株を仕込めるプレイヤーが少なくなってきます。

買収防衛策を作ったことが株価の低迷につながり、かえって乗っ取りリスクが増してしまうケースもあります。

投稿: ターナー | 2011年7月 1日 (金) 01時47分

皆様、コメントありがとうございます。ラオックスの件は、最近それくらい中国企業のパワーが上がった、という意味で当該本では紹介されておりましたので、とくに敵対的買収事例として引用されているわけではございませんので、念のため>katsuさん

たしかに防衛策の話題、最近は少し下火ですよね。でもパルコとイオンの関係のなかで、結構プレッシャーにはなっていたりしたんじゃないかと。このあたりが妙味だったのかもしれません。>星の王子様さん

さすがターナーさん、解説がお上手!!どっかの講演で使わせていただきますね(笑)

投稿: toshi | 2011年7月 1日 (金) 02時22分

先生とは関係ないかもしれませんが、買収防衛で一番儲けたのは弁護士や投資銀行の筋である事実は動きません。

自分で抜け道な会社法を作って、その解釈を売り込んでいる弁護士もいるじゃないですか。

その世界の人がマッチポンプなことを言っているだけだということは当たっている。

企業の管理部門は少しは賢くなったということでしょう。

投稿: katsu | 2011年7月 1日 (金) 08時44分

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