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2011年6月 8日 (水)

管理部門はつらいよシリーズ(その1 社内ADRの巻)

昨日、とある独立行政法人の理事の方と、お仕事の合間に雑談をしていたときのこと。

「先生、うちの法人、最近セクハラやパワハラの調査で管理部門はヘトヘトなんですよ。どんな判断にしたって、最後はどっちかから恨まれてしまうわけでしょ。最近は下手な調査をしたら社員から法人が訴えられるっていうじゃないですか。もう、これ以上、管理部門にストレスをためさせないように、なんか会社のなかにADR(裁判外紛争解決機関)みたいなものを作ることはできないでしょうかね?社内調査だけじゃなくて、その裁定まで含めてそこに丸投げできたらどんなにありがたいか。。。」

なるほど、たしかに我々弁護士が社内調査に加担したり、外部の者だけで調査委員会を設けることはありますが、社内における紛争の仲裁裁定を行うような、紛争解決業務を行うことはあまり聞いたことがありません(金融ADRは顧客と会社の紛争を前提としますので、少し違いますよね)。ためしに「社内ADR」でグーグル検索をしてみましたが、まったくヒットしませんね。ハラスメント関連の社内紛争が発生した場合など、①調査担当社員の方々の精神的疲弊は非常に高いものであること、②会社主体による調査自体、その公平性が保たれにくいこと、③会社に二次セクハラ、二次パワハラのリスクが発生するおそれがあることから、こういった社内ADRへの要望というものはあるのかもしれません。

解決方が多少あいまいなものであったとしましても、弁護士やメンタルヘルスの専門家などが仲裁委員になって、完全独立な立場で仲裁や調停を行うということですと、その解決について会社が恨まれずに済みますし、管理部門にストレスも溜まりませんし、なにより紛争が外部に漏れずに処理できる、というメリットがありそうです。こういった「社内ADR」の制度のようなものは実際に作れないものなのでしょうか?

問題は守秘義務との関係や、「法律事務」を弁護士以外の者が取り扱うことについての弁護士法違反に関するところではないかと。弁護士以外の者が仲裁に関与するとなりますと、ADR法による認証手続きも必要になってくるものと思いますので、かなりハードルは高いかもしれません。社員どうしの紛争を解決するとしても、会社自身が使用者責任や職場環境配慮義務違反を根拠付ける事実を公正に認定できるかどうか(外観的な独立性)、といったことも問題となりそうです。

ただ、認証ADR(大阪弁護士会・民事紛争処理センター)で仲裁人や示談あっせん人を長くやっている経験からしますと、当事者が仲裁手続きに合意した場合には、その調査も判断も早く、裁定内容も、社内の関係者の意見を聴取したうえで合理的な解決案を提示できる、という意味では結構有益な運用が可能ではないかと思います。社内のだれもが紛争の存在を知ってしまったケースなどでも、管理部門は安心して手続きの顛末を社内で公表できるかもしれません。上記のとおり、克服すべき諸問題はありますが、一度検討してみてもよいのではないか、と。

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