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2011年6月24日 (金)

法務部門の分離革命(すでに実施企業もあるとか・・・)

(6月24日午前:追記あり)

いま某企業の法務部の方と、新しいコンプライアンス・ハンドブックの作成に取り組んでおりますが、実際に法務部の方と作業をしていて感じますのは、(どこの会社でもそうだとは申しませんが)法務部門には異質な仕事が混在していますね。

いわば「品質管理」の問題と「リスク管理」の問題。前者の典型例が契約審査であり、瑕疵担保責任条項の中身など、細かくチェックして、どんな事態となっても自社が不利益を被らないように細心の注意を払って契約条項を作りこんでいく作業。実際の交渉において、その条項が通るかどうかは、また力関係や説明能力によるところもありますが、こういった品質管理に力を発揮する法務部担当者がいらっしゃいます。

そして後者はといいますと、まさにコンプライアンスのお仕事であり、全社的なリスクに精通して、企業活動の統制を図るというもの。企画本部や営業部隊が投げ込んでくるボールについて、ギリギリでストライクと審判に判定してもらえるように理屈を考える、いわば企業の戦略を法務面において支える実行部隊の役割です。実際、ハンドブック作成に関与して、「経営企画本部にモノが言える法務であるためには、この戦略法務のところで活躍する必要がある」ということのようです。ですからコンプライアンス・ハンドブックの大きな役割は、社員が「気づくこと」そして「気づいたことを伝達すること」に重点を置きます。不正かどうかは、ゴーサインを出す専門部隊が最終的に受け持つことになります。こういった業務が得意な法務担当者もいらっしゃるとか。

企業内弁護士の方も相当増えましたが、企業内弁護士も、どちらが得意なのか分かれるのではないでしょうか。また、最近の企業では、戦略法務的な業務を受け持つ部署と、契約審査などを中心として受け持つ部署で、分けているところも増えているそうであります(コンプライアンス部、CSR部などを独立させているもの)。仕事の性質がかなり違うようですから、人的資源が豊富であるならば、法務部門を充実させて、上記ふたつを分離する、ということも検討されるかもしれません。(別にタイトルにあるような「革命」というほどのこともないかもしれませんが・・・)

最後になりますが、政治的配慮に長けておられる法務部門の方もいらっしゃいますね。経営トップがコンプライアンスに熱心な方であればよいのですが、実際には「コンプ」まで聞いたところで「もういい」と拒絶反応を起こす社長さんの場合、法務部門としてはとても仕事がやりづらいことになります。そこで、そもそも社内で政治力を持った役員(執行役員)の方から社長に意見を提案してもらえるよう、当該役員さんに向けてプレゼンを行う法務部門の方もおられるようです。やはり仕事がやりやすい社内環境作りはきわめて大切だそうですね。

(追記)昨年10月、ソフトバンク社の法務部長さんの「ビジネス法務」での記事についてコメントしたエントリーがあります。本件エントリーにご関心のある方は、こちらもご参考ください。「法務部員が元気になる記事」

6月 24, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 |

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コメント

私の「ささやかな本業」に関わる点なので、コメントをすこし。

世間一般では、コンプライアンスが「法令遵守(順守)」の訳語から入った感があり、法務部のお仕事から派生して行われていることが一般です。小さい企業であれば、そもそも法務部門がないので、管理部門が賄っている企業もあります。

「コンプライアンス」が日本に定着してきた歴史的背景や、実際的な業務的親近性の観点から、法務業務に近いことは否めないと思います。
ですが、実務に携わっていると、「法律があるから」ということが免罪符的になってしまい、本来的な「コンプライアンス=社会的な要請に応える」の意義から遠ざかってしまう傾向もあると思っています。
特にBtoC企業などの場合は最終顧客と直接対峙するので、より顕著ですが、BtoBであっても最終顧客が個人顧客等の場合には、その差が顕在化しやすいと思っています。

本当に「コンプライアンス」を追求するならば、法律的素養が全くない、「ズブの素人」の方が良いと最近は考えるようになっています。
法律面は顧問弁護士でも法務部でも支援を得ればよく、法律に「染まらない」ことも重要だと思っています。(自戒をこめて。)

ですので、「分離革命」は表層的にはその通りだと思いますが、本質的には本来的状況への回帰、と捉えたほうが良いと、思っている次第です。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年6月24日 (金) 09時34分

場末のコンプライアンスさん、むずかしいエントリーにコメントありがとうございます。
法務部の方のホンネのご意見がお聞きできて幸いです。普段からうっすらと考えていたことの輪郭がつかめてきたような思いです。このてのエントリーはこれからも思い出したように時々書き続けていきますので、次回にでもご紹介したいと思います。
今回の震災におけるBCPの効用なども、よく似た感覚を持ちました。

投稿: toshi | 2011年6月28日 (火) 01時59分

法務関連の機能は、分離すればするほど仕事がやりづらくなると思います。たとえば契約審査ですが、いったい何を見ているのかといえば、署名欄は課長じゃだめだとか損害賠償範囲が広いだの管轄裁判所を本店所在地にしろだの、専門職でなくても慣れればできるような形式的なチェックをしているだけでしょう。回ってきた段階ですでに相手方との実質的な契約交渉がフィックスしてしまっていることすらあります。事実上、審査段階で突き返すのは難しく、型どおりのことだけ言ってあとは決裁者判断で逃げているのが現実ではないかと思います。コンプライアンスにしましても、本来、ビジネス周りの法務とは重なる2つの円のような関係にあるわけで、それを組織で分断してしまうと「遅すぎ、かつ強すぎるブレーキ」になって競争力を阻害するような気がいたします。ビジネスをダイレクトにリアルタイムに多面的にサポートする法務機能が理想だと思います。もちろん内部統制や内部監査といった機能を本籍とする別部署のチェックは必要ですが。

上記した意味での法務機能の一端を現場に下ろしていくことも重要だと思います。現場と法務という2極化は、下手をすると法務部の自己満足になります。法務部には、自社のビジネスを理解する努力とともに、現場に広く気付きを与えるような教育活動が望まれると思います。

今回もとりとめのない意見ですみません。

投稿: JFK | 2011年6月29日 (水) 01時01分

JFKさんのご意見は、現場でも感じる弊害ではありますが、そこまで(「専門職でなくても慣れればできるような形式的なチェックをしているだけ」)いうとさすがに法務部が可哀そうかと(笑)。
ご指摘の点は、仕組み(system)ではなく運営(operation)の問題かと思います。
例えば契約審査のご指摘は、法務機能を現場におろしても集約しても、いずれにせよ決裁権者の意識次第であると思われます。コンプライアンスの点の機能分断とのご心配は、現在はそれが無さ過ぎるように感じています。(法律判断に引きずられすぎている。)
極端な例ですが、浜岡原発停止の事例などは、法律判断を超えている部分があると思われますが、法律上の観点は参考にしつつも、経営者が判断したという事例ではないかと思います。賛否両論あると思いますが、マスコミやネット等を見ても、賛意が多いかと思いますが、法律論としては疑義があるとのご指摘も多くある(昨日の総会でも質疑があったやに仄聞しています。)ところです。
法務部のほかに違う観点からの意見具申ができる体制は、多角的な事実や意見を集約して、経営が判断する基礎を整える意味で重要かと思います。
もちろん、JFKさんの法務部の教育活動の重要性はあるのですが、それによる「判ったつもり」の判断が現場に横行するリスクもある(現実に起きることが多い)ので、程度が難しいところです。
この点も、やはり決裁権者の意識次第なので、むしろ決裁権限者の教育が勘所であると思っているところです。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年6月29日 (水) 09時35分

経験に裏打ちされたご意見を拝見しとても勉強になりました。
契約審査に関しては、審査段階で予防法務を実現する例ももちろん目にします。日常発生する多くの型どおりの処理について、忸怩たる思いでしょりしている法務部員も多いのではないかという私見でした。

現場に対して色々と指摘や異論を唱えるのは、法務(コンプライアンスを含む)の立場からすると判断のプロセスを充実させるためですが、それを理解してくれる決裁者はまだまだ少ないと感じます。mustかbetterかと問われれば「better」のほうが圧倒的に多く、指摘した段階で落とし所は見えているにもかかわらずあえて指摘することに対して疑問を持つ社員も居ります。
教育は大事だが勝手な判断が横行するリスクもあるという点は肝に銘じたいと思いました。

投稿: JFK | 2011年6月30日 (木) 07時42分

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