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2011年6月 7日 (火)

架空循環取引事例における「不正早期発見」型再発防止策の登場

本日(2011年6月6日)のTDNETでは、某監査法人さんの登録申請不認可に関連する開示情報が一番の話題だと思われます。(すでに多くのブログで取り上げられており、「品質管理」なる言葉が踊ってますね・・・)ただ、そんな中で、東証・名証1部の株式会社ゲオ社による「不適切な会計処理に関する関係者の処分と再発防止策について」なるリリースが、私的には最も関心の高いものであります。

すでに5月19日付け「当社連結子会社における不適切な会計処理に関する調査結果等のご報告」において、過年度決算訂正を要する不正行為(架空循環取引)の事実が報告され、また再発防止策の提案についても記載されておりましたが、外部調査委員の方々(東京の大手法律事務所の弁護士の方々)の発案による再発防止策をほぼ全面的に受け入れる形で、このたびのリリースとなったようであります。

この不正会計事件の再発防止に向けた諸策として、もっとも注目すべきは「早期発見型」の再発防止策が盛り込まれていることであります。これまで、会計不正事件の再発防止策といえば、精神訓示型(コンプライアンス意識の徹底、研修制度の充実)、未然防止型(ローテーションの実施、職務分掌の徹底、上司による再チェック等)がほとんどであり、早期発見型というと、わずかに内部通報制度の充実、という程度でありました。

しかしながら、ゲオ社の再発防止策には、「原因行為を早期に発見するための方策」としての不正取引発見のための制度的手当て、不正取引の兆候を把握する施策が具体的に掲示されております。また、これとは別に「不適切な会計処理を早期に発見するための方策」も別途掲示されております。調査委員からの提案のうち、社内リーニエンシー(自己申告者へのペナルティの軽減)は採用されなかったようですが、それでも、これだけ具体的に不正早期発見型の再発防止策が盛り込まれたリリースは、これまでほとんどなかったと思います。

「不正はどこの企業でも発生するものである」というところから出発し、これを過年度決算訂正に至るほど重大なものになる前に、その兆候を発見することによって財務報告の信頼性を確保する。こういった「モニタリング重視型」の内部統制システムは、このたびのJ-SOXの見直し(経営者における創意工夫に関する監査人の尊重)と親和性が高く、「費用対効果」を重視した次世代型モデルとして非常に有効かつ効率的なモデルであります。こういった再発防止策が今後も次々と登場することが予想されますし、なによりも本件施策を講じたゲオ社において、このシステムが財務報告の信頼性向上に資するものとなることを期待しております。

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