« 九電やらせメール(依頼文書)の送付と「規範意識の鈍麻」 | トップページ | ネステージ社 不公正ファイナンス事件と金商法「偽計取引」の活用 »

2011年7月13日 (水)

ボトムアップ型のインサイダー情報管理体制の整備とは?

月曜日は大阪証券取引所主催の「インサイダー・セミナー2011」が開催され、パネルディスカッションのモデレーターを務めさせていただきました。400名以上の方がお見えになり、たいへん盛況でありましたが、「企業の情報開示体制とインサイダー情報管理の巧拙」のテーマの冒頭、

「朝日新聞朝刊の一面に、『揺れる統合~東証が大証にTOBか』なる見出しが躍ったにもかかわらず(また、株価も9%も上昇したにもかかわらず)、当日の朝、大証は何の適時開示もリリースしなかったのはおかしいのでは??TOBかける側でなくても、なんか一言あってもいいのでは??」(もちろん個人的な意見です)

と私が口走ってしまい、会場で(多少)ウケした一方で、主催者(および主催者側パネリストの方)を困惑させてしまったことを反省しております。「まあ、こういったことを笑って流せるのが関西のいいところでして」とパネリストの方から後でフォローしていただきましたが(^^;;えらいすんまへんでした。その分、J-IRISSの広報は十分させていただきましたので、それで勘弁してください。。。

証券取引等監視委員会(特別調査課)の元統括審査官の宇澤さんにも、かなり踏み込んだお話をしていただけたのも関西ならでは・・・というところだったのかもしれません(もちろん、個別案件についてのお話は一切ございませんでした。ねんのため・・・)。法の理屈というよりも、摘発する側の論理を語ってもらうことは非常に有益ですね。

ただ、今回のインサイダーセミナーのモデレーターをさせていただいて、非常に貴重な勉強をさせていただいたのは、原吉宏弁護士(北浜法律事務所・外国法共同事業)のセミナーレジメの解説と、パネリストとしての回答であります。私が重要事実の管理体制については、子会社の社員にまで管理体制を整備する必要があるのか?と質問したところ、原弁護士はきっぱりと「必要です。今の時代は企業というよりも、企業グループでインサイダー防止体制を整備しなければならない」と発言されました。

そういえばここ数年、インサイダー規制は厳格さを増しており、とりわけ「バスケット条項」を用いた規制が増えております。(インサイダー取引におけるバスケット条項の適用事例と論点については、旬刊商事法務の6月25日号でも、石井輝久弁護士が解説をされていますね)リコールやPLなどの会社事故の発生、企業不祥事の発生などであり、このたびの震災直後も、多くの企業でインサイダー情報が飛び交ったものと推測いたします。また決算に絡んだ不適切な会計処理などの発覚もこれに含まれるものと思われます。原弁護士は、こういった重要情報については、従来からの情報管理、つまりトップダウン型による管理体制だけでは対処できないため、ボトムアップ型による情報管理体制を構築する必要がある、と解説をされておられました。

なるほど、たしかに企業不祥事や社内重大事故などは、経営トップが先に知るのではなく、現場の社員が知るところであり、また「投資判断に影響を及ぼすものかどうか」は、なかなか経営中枢で判断ができないところであります(ひょっとすると現場社員は隠ぺいするかもしれません)。こういった情報が適宜適切に伝達されなければ、まさに多くの社員によるインサイダー取引が行われる可能性があり、情報伝達プロセスの整備について、ボトムアップ型による体制整備が必要となるわけです。こういった発想は、おそらく実務においてインサイダー防止体制の指導をされているからでしょうね。現実には、なかなか効果的な内部統制が構築されるわけではありませんが、やはり先ほどの原弁護士の発言のとおり、企業グループあげて、インサイダー研修を行い、誘発型も含めて情報管理を徹底しなければならないものと思われます。雇用の多様化に伴い、リスク・アプローチの観点から、人事政策面にも踏み込んだ体制整備の提案にも、(最近売れ筋の本「人事部は見ている」※を読んだせいからか)納得いたしました。

※・・・この本はオモシロイですね。著者ご自身が、人事部の仕事は企業統治と密接な関係にある、といった意見をお持ちなので、法律家にも全編、興味深いお話が詰まっております。この本を読んで、電力会社ではなぜ「会長職」の力が強いのか、課長昇進が一番早い同期が、かならずしも役員昇格で優遇されるわけではない(社内政治力がすべて)等、いろいろと考えがまとまりました。

調査(審査)する側、摘発する側、会社を支援する側と、バランスよくお答えいただきましたが、もう少し時間が許されたならば証券会社の方にも参加いただければよかったなぁと、企画する側としては少々反省をしております。あと日本板硝子さんの事例(空売り規制問題)や金融審議会での改正議論なども触れたかったのですが、時間的に困難でした。また、司会進行役は進行に徹して、あまり出しゃばらないほうが良い!ということも、猛省しております(^^;;。

|

« 九電やらせメール(依頼文書)の送付と「規範意識の鈍麻」 | トップページ | ネステージ社 不公正ファイナンス事件と金商法「偽計取引」の活用 »

コメント

今回のセミナー参加させていただきましたが、大変楽しい時間を過ごすことができました。

「司会進行役は進行に徹して、あまり出しゃばらないほうが良い!」などと記載されていますが、

個人的には、今後もパネリストの方を困らせてしまうくらいの切れ味鋭い質問を続けていただくことを期待しています。

投稿: goo_n | 2011年7月14日 (木) 22時43分

ご参加、ありがとうございました。長丁場でしたので、かなりお疲れになったと思います。
どうしてもサービス精神が先に立ってしまって、あのような司会になってしまいました。楽しくご覧になられたのであれば良かったのですが、きちんと頭に残るものになりましたでしょうか?

また、おそらく来年も適時開示セミナーをやりますので、よろしければどうぞ。。。

投稿: toshi | 2011年7月16日 (土) 01時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ボトムアップ型のインサイダー情報管理体制の整備とは?:

« 九電やらせメール(依頼文書)の送付と「規範意識の鈍麻」 | トップページ | ネステージ社 不公正ファイナンス事件と金商法「偽計取引」の活用 »