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2011年7月 5日 (火)

M&Aと企業買収契約の錯誤無効

先日、orzさんからコメントをいただき、私も知りましたが、循環取引によって8割から9割の売上が架空だったとされるアイ・エックス・アイ社(東証二部-当時)をTOBによって購入したインターネット総研(IRI)社が、IXIの元親会社であるシーエーシー社を訴えていた裁判におきまして、このほど和解が成立し、CAC社は和解金として30億円をIRI社に支払うことになったようであります。

注目すべきはCAC社のリリースでありまして、裁判所から和解による解決を強く求められ、代理人からも錯誤無効が成立する可能性が高いとの意見が出たため、和解に応じたとのことであります。請求金額と和解金の比率からみて、たしかにIRI社の実質勝訴といえそうな和解にも思えますので、ひょっとするとこのまま裁判を継続していた場合には、(返還すべきIXI社株式の評価額などが問題となるものの)M&Aの世界において錯誤無効の主張が認められるという、かなり興味深い判決が下される可能性があったということになります。動機の錯誤、ということでしょうから、そのような動機が契約自体に表示されており、要素の錯誤と認められる事態というのが一体どのような事実によって認められようとしていたのか、これは極めて重要な問題かと。

ご承知の方もいらっしゃるとは思いますが、IRI社がCAC社からIXI社株式を購入するにあたっては、日本を代表する著名証券会社、アドバイザー監査法人、法律事務所、などがフィナンシャルアドバイス、財務デューデリ、法務デューデリに関与しておられ、「間違いなく、IXI社はいい会社。お買い得です」との太鼓判を押されて購入したものであります。子会社を売る側としても、これだけ万全の体制で買主に株式を譲渡するわけですから、後日、当該子会社の粉飾決算が発覚して、錯誤による契約の無効を買主から主張され、それが裁判所で通ってしまいそうになる・・・ということは夢にも思っておられなかったのではないでしょうか。本件訴訟において錯誤無効の主張が通ってしまいそうな状況に至った経過を理解したいところでありますが、錚々たるメンバーが株式評価を行ったとしても、売買契約が錯誤無効となるリスクが発生する、ということは重大な出来事かと思われます(その割には、あまり世間では騒がれていないような気もします)。

IRI社は、CAC社だけでなく、売買当時IXI社の監査を担当していた新日本有限責任監査法人に対しても、おそらく監査見逃し責任を根拠に損害賠償請求訴訟を提起され、このほど1億5000万円を新日本監査法人がIRI社に支払う和解を成立させ、粉飾会社売買の責任の一端を同監査法人に負担させることとなったそうであります(リリースはこちら)。そして、いよいよ7月1日には、IXI社を東証二部に上場させて「信用」をつけさせ、粉飾決算判明後には、問答無用でIRI社を上場廃止とした(として)東京証券取引所を相手とする裁判を提起されたようです(ニュースはこちらです。債務不履行責任を追及するとか)。

IRI社の代表者としては、本件売買に関与していた数多くの利害関係人に対してIXI粉飾事件による損害を分担してほしい、との気持ちが強いと思われます。おそらく東証を訴えた事件においても同様の気持ちからではないかと。また、内容はいろいろと理解したいところでありますが、いまなおIXIの亡霊がうごめいているような気がいたしますね。IRI社による執念の裁判の結果が開示され、「ドキ!」っとされておられる関係会社の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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