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2011年8月16日 (火)

会計ドレッシング-10episodes(東洋経済新報社)

いよいよ16日から日本監査役協会主催の恒例長浜合宿でございます。全国から新任の監査役の皆様が風光明媚な琵琶湖畔の長浜の地で1泊2日の勉強会(A日程、B日程合計4日間)に参加されます。今年は6月の定時株主総会で改選される監査役の方が多い年でしたので、やはり参加者は多いそうで、どちらもほぼ満席のようです。今年もお手伝いをさせていただくことになり、新任の監査役の方々にお会いできるのを楽しみにしております。

さて、本の御紹介ですが、すいません、多くの新刊書をご献本いただいているにもかかわらず、読む時間が限られているものでちょっとご紹介できておりません。<m(__)m>。読まずに「はしがき」だけをちらっと眺めてご紹介だけする・・・というのも、著者の方に失礼だと思いますので、とりあえずきちんと拝読してから・・・と思っておりまして、なにとぞご容赦ください。

Kaikeidore 本日、東洋経済新報社の編集部の方より「ご献本いたします」とのことで「山口弁護士にぜひ読んでいただきたい!」と推薦いただいたのが、村井会計士の「会計ドレッシング-10episodes-」(村井直志著 東洋経済新報社 1680円税込) 。知り合いの会計士の方にお聞きしたところ、「ドレッシング」というのは普通に粉飾を意味する言葉として使われているそうであります。

ご推薦いただいたのはありがたいのですが、実はこの新刊は日経新聞の広告に掲載された当日、脊髄反射的に阪急ブックファーストで購入しておりまして、もうすでに読み終えております。当ブログで今年3月にお勧めの一冊としてご紹介した「決算書の50%は思い込みでできている」の著者による第二弾ということで、今回もたいそう興味深く読ませていただきました(あのときも「会計トラップ」という言葉が新鮮でした)。

題名のとおり、近時の会計不正事件を10件取り上げ、それぞれの章末に、事件の教訓をもとに会社を強くするためのレシピが掲載されております。私は不正調査を仕事としておりますので、当然掲載されております10件の会計不正事件については承知しておりますし、当ブログでもこのうち8件についてはご紹介させていただいております。ただ、本書が素晴らしいのは(前回の「決算書の50%は・・」のときも同様のことを書きましたが)弁護士、会計士等による第三者委員会報告書などをもとに事件を紹介しておられるにもかかわらず、物語調に整理し直し、一般の方々にもわかりやすい内容で書かれていることであります。時折著者による推測も入っておりますが、会計不正事件が発覚するまでの事案の紹介は流れがあっておもしろいですよ。私自身も、紹介されている10件の報告書はすべて読んでおりますが、これを時系列にしたがってわかりやすく紹介することは、著者に事案分析力がないと書けないと思われます。とくに、なぜそういった会計処理をしたのか・・・というあたりは、監査人として会社の経理処理に普段から接しておられる会計士の方でないと自信を持って書けないのです。ここに解説されている10件の事案について、私なりに解説することは可能でありますが、本書を読んで「なるほど、経営者はこういったことに配慮してドレッシングしたのか」と(これまで気づかなかった視点に)納得するところが多々ございました。

10件の会計不正事件のほかに大阪ガスさんの会計不正事件を紹介しておられるのはスルドイ!これは産経新聞だけが記事として取り上げた、やや特徴的な事案なのですが、本件については私自身、諸事情ございまして(笑)、ブログではとりあげられませんでした。どこが特徴的かというのは、お読みになればおわかりになると思います。また、前書「決算書の50%は・・・」ではあまり著者の考える「不正発見」「不正予防」の効果的手法については触れられていませんでしたが、本書では(CFEの資格をお持ちの方には少し物足りないかもしれませんが)企業の管理部門の方々向けにかなり突っ込んだ解説が「第2部」でなされており、こちらも有益かと。とりわけ著者が紹介されているBS重視による異常点監査技法につきましては、社内のモニタリング部門に「不正発見までは求めない、ただ異常な兆候だけは気付いてほしい」とする私自身の意見にも関連するものであり、とても興味を持ちました。

最近、会計士の方が、こういった不正調査や不正事件の原因分析等に専門家的アプローチで迫る本が増えつつあるようですが、当ブログの管理人としてはたいへんうれしく思っております。「決算書の50%は思い込みでできている」と同様、今後も適宜ブログエントリー作成のうえで参考にさせていただきます。

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