« 当ブログのコメントにつきまして(お願いとおことわり) | トップページ | 監査役に期待されるITガバナンスの実践 »

2011年9月12日 (月)

主任航空管制官の守秘義務違反疑惑事件(その2)

本件につきましては、土曜日のエントリーにて「この航空管制官の情報漏えいには何か特別な意図があったのではないか?」と書きましたが、週末のマスコミの続報などを読んでおりますと、JFKさんやkawakawaさんがおっしゃるとおり、当該管制官には特別な目的とかはなく、もっと属人的な「どこにでもある」理由で画像をアップしてしまったような気配であります。当該管制官は2001年ころにブログを開設し、「知人に知ってもらいたかった」との理由から管制塔内の写真画像をアップしてしまったようで、しかもこの9月5日になって、ブログを閲覧した人からの匿名通知によって発覚したとのこと。私の推測に反し、単純に「面白半分」で機密情報を画像としてアップした可能性が高いようであります。

どこにでもあるようなリスク意識に乏しい社員の失態・・・ということで一笑に付すことができればよいのですが、これほど重大な国家間の問題に発展していることからしますと、なぜ組織内でもっと早く問題にならなかったのでしょうか。当該管制官の方は、管制室では個人のデジカメを持参して人物や風景なども撮影しているわけですから、ほかの職場の方々も「情報漏えいの可能性のある行為」程度は問題意識をもっていたのではないでしょうか(個人のデジカメを持参すること自体、禁じられているはずであります)。30年以上、同一の職場に勤務しており、管制業務のスキルも高かった、ということで、他の職員の方々も、面と向かって物が言えないような雰囲気だったのでしょうか。

しかし、そんな雰囲気だったとしても、省内(組織内)の内部通報制度を活用して、こういった行為がなされている、ということが省内の窓口に届くことはなかったのでしょうか。kawakawaさんも指摘しておられますが、この7月には別の管制官の方が、同じくブログにて社内事情を公表し、省内でもブログによる情報漏えいリスクが告知されていたところですから、第三者から匿名の告発がなされる前に、組織内で通報があってもおかしくないのではと。当該管制官の方は、この7月の時点ではすでに画像投稿を終えていたそうですが、管制室内での写真撮影だけでも、やはり部署内では問題意識は生じ得たように思うのでありますが。。。この9月まで、なんら社内で問題意識を持つ方が登場されなかった、というのは、組織としてかなり問題があったのでは・・・との疑問を禁じ得ません。社内ルールがあったとしても、これを「形骸化したもの」としか認識できないような組織の体質があったのではないでしょうか。

情報漏えいに関する組織のリスク感覚が問われている事例のように思えますし、正直申し上げて、もし皆様がおっしゃるとおり「リスク感覚に乏しい、どこにでも一人くらいは存在する人」の存在をゼロにすることが困難だとすれば、どこの会社においても、同様の事態に直面する可能性はあるわけです。民間企業としては、今回の国交省の対応として、単に当該管制官に対する懲戒処分の可否を検討するだけでなく、(確実にまた発生するであろう)情報漏えいのリスクを、どのようにして低減させていくのか、検討される具体的手法こそ知りたいところであります。

9月 12, 2011 未完成にひとしいエントリー記事 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/52707776

この記事へのトラックバック一覧です: 主任航空管制官の守秘義務違反疑惑事件(その2):

コメント

一部マスコミが一億総のぞき見趣味を助長し、
平和ボケで国家機密の保護に対する意識が低いわが国においては、起きるべくして起きた事件ということでしょうか。
くだんの管制官は、エアフォースワンの運行計画が米国と敵対する国にとってどれだけ価値ある情報か、もしそれが悪用されたらどの様な結果を招くか全く判ってなかったのでしょうか、それともそこまで考えが及ばなかったのでしょうか、9・11の10周年の追悼式典を見つつ、改めて考えさせられてしまいました。
どこの企業さんでも、社員による機密情報の漏洩には頭を痛めていることと思います。
個人所有のパソコンや記憶媒体を事務所に持ち込まない、自宅のパソコンで仕事をしない(会社情報を転送しない)、これに違反した場合は厳しく処分するなどの情報管理規程を設けておられるでしょうが、情報漏洩の完全な抑止力とはなっておらず、最終的には社員のモラルを信じるしかないのが現状かと思います。
性善説に則った規程を設けているところが問題なのでしょうが、情けないことに、情報漏洩リスクの低減に結びつくこれといった妙案が思い浮かびません。
悪いことをしているという意識もなく会社の機密情報を漏洩してしまい、それが発覚し処分を受けてはじめて事の重大さに気づくというのが現状なのです。
企業法務担当者としては、社員への啓蒙活動を更に徹底するしかないのでしょうか、、、。

投稿: 西村 千里 | 2011年9月12日 (月) 17時17分

運用を怠らなければ、抑止力が働かないことはないと思いますよ。
そのまま適用すると厳しいことになり過ぎるような教科書どおりの規程を作ると、運用しないことが常態となり、形骸化につながります。
規程は背伸びしない程度に作っておき、監視とインシデント管理だけでもやっておけばむしろ強力な抑止力になります。

軽いものは軽く、重いものは重く、実際に適用することが重要ではないかと思います。それには、現実的な運用ができる規程を自社で考えて作ることが必要です。

とは言いつつ、古い社内規程ほど上記のような理想とはかけ離れており、かといっていきなり改訂するわけにもいかず、難しい事情はあります。

投稿: JFK | 2011年9月12日 (月) 23時19分

はじめまして、BOOSKAと申します。
Googleで検索をしていたら、偶然行き当たり、興味深い内容なので
コメントさせていただきます。

自分は航空業界に勤務しており、今回の部隊となった航空管制の現場
にもある程度の知識を有しておりますが、全国の航空管制官の母校で
ある航空保安大学校では情報リテラシー(コンプライアンス)に関する
教育は全く実施しておりません。過去の内容ですが、航空保安大学校
学生が夜間にアルバイトを行っていた事象も散見されていました。
当然、国土交通省所属の国家公務員である航空保安大学校学生には
その当時から、兼業禁止の規則はあったのですが・・・
そもそも、コンプライアンスに欠ける育成しかされていない人材が
行ってしまった行為としては当然といえば当然だと思います。

また、当該管制官が30年にわたり羽田で勤務していた要因としては
労働組合(全運輸)の関与が強く疑われます。航空管制の現場は
組合の力が他の公務員と比べて極めて強く、組合と対立した場合、
業務に与える影響が極めて強く、組織は事なかれ主義に陥りやすく
なります。加えて、当該管制官の行為を危険視していた管制官が
存在していたとしても、彼を内部告発した場合、組合を通じた
報復を恐れていた可能性は極めて大であると思います。

乱文、失礼致しました。

投稿: BOOSKA | 2011年9月14日 (水) 04時14分

 ガラパゴス化という言葉をよく耳にしますが、何も一部に限ったことではなく、日本全体がそうなってしまったように思っています。そんなこともあってソマリア海賊を追いかけて4年が経ちましたが、軍事的若しくは安全保障に関する世界標準とのズレを強く感じることがたびたび起こります。
 それは軍事に強い“センセイ”方を始め、あらゆる階層に見られます。地政学的な要素もあるのでしょうが、毎日命や安全が脅かされて緊張の中にいる人間との違いですから、規制でどうなるといったことではないように思います。
 確かに今回の管制官の行動にはあきれますが、防衛大臣の「シロウト」発言も似たようなものです。これは当人だけというより社会全体の緊張感が緩んでいるといってもいいと思います。

投稿: tetu | 2011年9月14日 (水) 15時20分

皆様、有益なコメントありがとうございます。またBOOSKAさんのように、個別事情を教えていただけますと、深く検討する際の参考にもなります。今朝の日経新聞社説でもとりあげられておりましたが、ただの情報漏えいでは済まされない大問題だと私も思いますし、リスク評価においてもAランクのリスクとして扱われる必要があるのではないかと。この問題は、たわいもないこと・・で済ませることなく、社内の組織の状況を含め、それこそ調査委員会を立ち上げて検証していただきたいと思います。

投稿: toshi | 2011年9月15日 (木) 02時11分

コメントを書く