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2011年9月24日 (土)

弁護士が懲戒請求されるときの気分とは?

本日は、とくにビジネス法務と関係のある話題ではございません。博多ぽんこつラーメンさんから、以下のようなご質問がありましたので、恥を忍んで「懲戒請求を受ける弁護士の心境」について述べてみたいと思います。私は懲戒処分を受けたことはございませんので、あくまでも「懲戒請求の申立を受ける」ことへの心境でございます(誤解なきよう・・・)。

普通の弁護士の方々は、ご自身に懲戒請求されることに対してどのような感触をお持ちなのでしょうか。通常の活動でも日常茶飯事的に遭遇するので大したことはないとお思いなのか、それとも“ちょっとは厄介だな”とお感じになるのか。蛇足かつ仮の話として、若干後ろめたいことがあった際のそれについてもお聞かせ願えないでしょうか。

弁護士としての職務を一生懸命に全うしようとしますと、懲戒請求を受ける・・・ということは十分あります。私の場合、22年ほどの弁護士経験のなかで、二度ほど請求をされ、もしくはされかけたことがあります。ひとつは弁護士の主張によって侮辱された、という相手方からの申し立てでして、これは懲戒を請求されても「弁護士の職務として正当な行為」であることが明らかでしたので、とくに問題にもしていませんでした。

しかし、もうひとつ、これは結構しんどかった。依頼者からの懲戒請求です。先日(9月13日)、大阪地検特捜部の元部長さんらが被告人となっている改ざん事件の初公判に関する日経新聞記事を読み、「ええ!?」と絶句したことがありました。案の定、週刊文春の今週号で、江川紹子さんが厳しく糾弾しておられますが、最高検の公判検事の方と被告人である元特捜部長さんらが、法廷の外で談笑していたそうです。いくら元上司、部下の関係があったとしても、関係者や第三者の目の前での「談笑」や「世間話」は絶対にいけません(江川さんは「最高検は本気で検察を変える気があるのか?単なる出来レースではないのか?」と批判しておられます)。かくいう私も、実は同じようなことがありました。もう17年ほど前の話ですが、民事事件の相手方代理人がたまたま知り合いだったために、証人尋問終了後に、関係者が全員法廷の外に出て行ったことで気が緩んだのか、つい法廷の中で冗談を言い合ってしまいました。・・・お恥ずかしいかぎりです。

一審で芳しい結果が出なかったこともあってか、控訴審係属中に依頼者から「先生は真剣に裁判をしてくれなかった。あの『高笑い』が法廷から聞こえてきたとき、この弁護士にまんまと金だけとられた、と確信した」と言われ、判決確定後に懲戒請求をする、と言われました。法曹の方ならおわかりのとおり、たとえ相手方代理人弁護士が知り合いであっても、依頼者からお金をもらえば弁護士は「パブロフの犬」です。まず第一に依頼者の利益を考えて行動する習性が染みついています。ですから裁判を片手間にしたり、ナアナアで済ませることは絶対にありませんし、むしろ相手方が知り合いの弁護士だからこそ、逆に負けなくないわけでして、現にその裁判も高裁では逆転勝訴となりました。

しかし、たしかに依頼者がいる前で、相手方代理人と親しげに会話をする、というのは軽率でありまして、猛省いたしました。あの懲戒請求によって、「人からみてどう思われるか、依頼者がどのような気持ちになるか」が弁護士にとってどれほど大切であるか、ということを学びました。あの出来事は、今でも忘れることはできません(なお、懲戒請求は結局されませんでした)。

ですから、普通の弁護士にとって懲戒請求を出されることについての心境は、事案によりけりだと思います。正当な職務の遂行と確信していることついて、相手方本人から懲戒申し立てがあってもあまり精神的に悩むようなことはありませんが、依頼者から・・・・となりますと、相当にこたえるのではないでしょうか。ちょっとどころか、かなり厄介なことだな、と思うこともあるのでは、と。後ろめたいといいますか、配慮が足りないと思うことがありましたら、やはり(懲戒の手前の綱紀委員会で棄却される可能性が高いとしても)精神的に重くのしかかることが多いと思います。そもそも人と争うことを商売としているわけですが、「人として人を傷つける」ことは絶対にあってはならないのでして、配慮が足りない点があれば、私の場合、「懲戒相当」事案とはならずとも、自責の念にかられることになるでしょうね。まぁ、しょっちゅう懲戒請求を受けている弁護士ならば「慣れっこ」になってしまっているかもしれませんが(笑)。

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コメント

まじめな弁護士はブログ内容のことで悩むのだろう。
しかし、結局は弁護士に業法がなく、懲戒を身内が行うことの弊害が、弁護士への信頼をなくしているのだろう。
(他業界に対してはいつでも第3者委員会なんて言ってるけど)

弁護士会という共同体は、参入障壁を高く高く築く。
しかし、一旦、共同体一員となった場合には、権力闘争(会長選挙の醜さをみよ)はすれど、こと自分たちの身分・収入に係わる問題では国会議員以上に結束し、自己利益を守る。(法科大学院設立のドタバタを見よ)

身内への懲戒処分は非常に軽く、遅く、そして信じられないことに処分はいつの間にか撤回されることがある。

これでは、無条件の信頼は得られない。

懲戒委員は現役の弁護士でなく、利害関係の少ない大学法学部のOBにさせればどうか。


投稿: Rascal | 2011年9月25日 (日) 08時24分

思いつきのコメントに丁寧な記事をいただき恐縮です。
先生のブログを拝見致しておりますと、様々な方のコメントを含め、勉強になります。
ありがとうございました。

投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2011年9月25日 (日) 19時48分

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