企業不正対応の実務Q&A(ACFE年次大会のご報告と共に)
タイの洪水で被災された企業の皆様には、謹んでお見舞い申し上げます。また事業再開にむけての有事対応を余儀なくされるところが多いそうで。今年は本当に厳しい年になりました。
さて、そろそろ書店に並んでいるようですので、新刊書をご案内いたします。10月7日、青山学院大学内のアイビーホールにて、第2回のACFE JAPAN年次大会が開催されました。おかげさまで募集人数を超えて満席状態となりました(詳しい報告はこちらをご覧ください)。
東証自主規制法人理事長のお話、証券取引等監視委員会事務局総務課長等をお招きしての鼎談、各界の有識者の方々による「日本と不正」をテーマとしたシンポなど、参考になるお話をいろいろと拝聴いたしましたが、なんといっても、私的に一番感銘を受けましたのは尼崎信用金庫国際部長(10月1日までは人事部長)の上野さんの「尼信でのCFEの取組み」でした。
「阪神タイガース預金」のお話は、尼信さんの営業面では重要な商品に関するものであり、会場でもずいぶんとウケておりましたが、関西人からみればどーでもいい「ツカミ」の話でありまして、とくに申し上げることもありません。しかし不正のトライアングル(動機、機会、正当化根拠)を金融機関なりに分析してお話された内容は、具体的なものであり、非常に参考になりました。とくに融資予約に絡む不正がどのような経緯で発生し、その後、どのように大きな不正につながっていくのか・・・というあたりは、「銀行員もしょせんは人間であり、その弱みにつけこまれる隙間がある」ことを事例をもって理解できました(もちろん他社事例を参考にされてのお話だと思います)。経営陣、フロント、バックそれぞれに「不正の芽」が生じる可能性があるからこそ、尼信さんでは、各部署にCFE資格者を配置できる体制を今後目指していかれるそうです(現在は6名)。
また、世間では「カレログ」が物議を醸しておりますが、「尼信では、もうすいぶん前からGPS付きの通信端末を全営業マンは所持しています」とのこと。導入当初は、金庫内でもいろんな意見があったそうですが、経営トップが金融マンの行動倫理を率先して説いておられたこと、営業マンの安全配慮(おそらく事故に巻き込まれるとか、企業情報を紛失することを防止することがメインかと思われます)のための仕組みが具備されていることなどから、今では職員の方々にも、前向きに受け止められているそうであります。
尼信さんのお話でも認識しましたが、どんなに厳格な金融検査を受けていても、不正が発生する隙間は絶対になくならないのでありまして、これはどこの組織でも同様であります。このたび、上記年次大会開催と同時に、ACFEの理事を中心として「企業不正 対応の実務Q&A」(八田進二監修 ACFE編集 同文館出版 1800円税別)を出版いたしました。企業実務家の方々向けですので、不正対応といいましても、平易に書かれており、社内研修や不正の予防、早期発見のスキル向上に役立つように心がけております。私も16ページ分ほど、執筆させていただきました。主に不正調査を手掛ける弁護士、会計士が中心ですが、不正調査に取り組む実務家の方や学者の方にも執筆いただいておりますので、企業のご担当の方だけでなく、これからCFEの資格を取得したい、と思っておられる方のテキストにも最適かと。
また、同時に「事例でみる企業不正の理論と対応」(八田進二監修 株式会社ディークエスト、ACFE編集 同文館出版 1800円税別)も併せて出版されました。近時の企業不正の事例紹介を中心に、不正対応の基礎理論と実務のあり方(実践編)をまとめたものです。ご執筆は、東大大学院を修了後、自衛隊で情報分析官をされ、その後リスクマネジメント会社を経て、現在ディークエストの課長でいらっしゃる高林真一郎氏によるものです。私も同じように関心を持った事例が出てきますが、専門の畑が違えば、これだけ違う視点から不正対応が考えられるのか・・・との印象を抱くと同時に、不正対応というのは、様々な専門領域を持った者による協働が不可欠であることを知らされました。こちらはまだ私自身読み終えておりませんので、また後日ご紹介させていただきますが、併せてご購入いただけますと幸いでございます<m(__)m>。
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