ゼンショー社の経営判断とレピュテーションリスク
「すき家」を運営するゼンショーさんが、警察庁による防犯体制強化の要請を受け、来年3月からは深夜の営業店舗に複数従業員体制を敷くことを発表されたそうであります。私は体調面への配慮から、深夜に食事をすることを控えておりますので、あまり存じ上げないのですが、「すき家」の店舗では深夜の従業員一人体制が恒常化していることが要因となり、外食店舗における強盗事件の8割から9割程度が「すき家」で発生しているとのこと。だとしますと、まぁ常識的に考えますと警察から防犯体制について要望が出るのも当然のことかと(読売新聞ニュースはこちら「警察庁指導受けた『すき家』、夜間勤務を複数に」 )
私は、かつてのヤマハ発動機さん、プリンスホテルさん、ファッションしまむらさんのような「闘うコンプライアンス」を敢行される企業さんが大好きなので、警察庁からの要請に対して、ただペコペコするだけではなく、正しいと思うところがある時には、堂々と主張はすべきと常々考えております。そこで今回の件でも、ゼンショーさんのコメントにも期待していたのでありますが、
「経営を度外視してまで防犯体制を強化する必要があるのか考えたい」
と、当初は広報されていました(たぶん、ホンネではないかと・・・)。ただし、ゼンショーさんの公式ツイッターでは、読売新聞の報道内容について否定しておられます。念のため。 しかし、従業員の職場環境配慮義務を負う企業が「経営を度外視してまで防犯体制を敷く必要があるか?」と開き直ることは、「闘うコンプライアンス」が大好きな私からみましても、さすがにちょっと・・・と思われます。2009年に、労働法違反をパートの女性店員から指摘され、刑事告訴をされたことへの反攻として、この女性店員が「ごはん5杯」をただ食いした事実を(ビデオ撮影を証拠として)「窃盗罪」として逆に刑事告訴したゼンショーさんの姿勢をひさしぶりに思いだしました(^^;;。(ちなみにこちらのエントリーです)。
しかしレピュテーションリスクを考慮されたのでしょうか、当日のうちに、ゼンショーさんは先の広報を一転して撤回し、
「深夜の複数従業員制を採用しても、牛丼の価格に影響を及ぼさないことが経営判断として明らかになったので、防犯体制に全面的に取り組む」
と公表されたそうであります。従業員の職場環境配慮だけでなく、強盗事件にお客様が巻き込まれる可能性もあるわけですから、ここは防犯体制への取り組み姿勢を示す必要があると思います。とくにゼンショーさんの場合は、カップルや女性のみのお客さまも多いと聞いておりますので、そのあたりの配慮は不可欠かと(ただ、よくよく考えますと、撤回前の広報内容と、撤回後の広報内容とでは、「一転して」といえるほどの違いがあるのかどうか、私には理解困難なのでありますが・・・・)
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コメント
ゼンショーの場合、この「一転」すること事態が最大のリスクと思えますがいかがでしょうか。
対外的なリリースが、こんなにも“軽くて”よいものとは言えないではないでしょう。
うろ覚えで恐縮ですが、件の裁判の際の主張は、非常に端折った書き方をすると、「雇用契約ではなく業務委託契約。但し、業務委託契約書は存在しない。しかも、社内には同様事例もない。」等の、上場企業らしからぬものではなかったかと思います。
投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2011年10月14日 (金) 01時54分
読売の報道について、すき家の公式Twitterは否定していますが、その辺はどう思われますか?
http://twitter.com/#!/zensho_pr
投稿: Unknown | 2011年10月14日 (金) 12時08分
ご指摘ありがとうございます。。私自身の見解については付記しませんが、一部、内容を追加いたしました
投稿: Toshi | 2011年10月14日 (金) 13時24分
ひねくれた意見です。
警察が自分の防犯体制の限界を企業に押し付けているようにも見えますが、これ如何に。
一人でも安全な街を作るのが警察のお仕事かと思っていました。
それを「襲われるかもしれないから2人にしろ」というわけですね。
いえ、ゼンショーを擁護するつもりはこれっぽっちもありません。
ただ、世の中の意見が一方的に流れるときほど、真実から遠ざかっていることも多く、アンチテーゼを提供するのも意味があると思っているからこその書き込みです。
日頃、コンプライアンス業務を行っている際に、自戒を込めて必ず自己の内心的作業の一環として行っている過程でもあります。
投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年10月15日 (土) 01時40分
場末のコンプライアンスさんのご意見は「ひねくれた」ものではないかもしれませんよ。2人体制でも襲われてしまう事件が発生してしまいましたね>吉野家事件
少し事件報道が短絡的ですが、おそらくゼンショーさんと警察とのこれまでの交渉の結果・・・ということが大きかったのかもしれません。
投稿: toshi | 2011年10月16日 (日) 02時15分
今さらではありますが、やはり思うところをコメントさせてください。
すき屋さんの件につきましては、隙屋さんがあるべき防犯体制を取っておけば、警察などの公務員費用が必要でなかったように感じるのです。
強盗の通報があれば、指紋採取とか何らかの業務が必要になりますし…
他の牛丼店がそれなりの防犯体制を構築する中、1社がそれにフリーライドするのは、いかがなものかです。
単純にレジのお金を心配するだけでなく、短絡的な犯行に従業員が巻き込まれることを考えれば、警察が警告していることは、意味が無いとか、企業努力を無視しているものではないと思います。
ファーストフードを愛好する私にとって、安価に食事ができることは良いことですが、それが犯罪を助長するのであれば、それは私にとって望むところではありません。
性悪説な言い方ですが、すき屋さんの最終のコメントは良い方向への方針転換に思えました。
投稿: B型が苦手 | 2011年10月18日 (火) 02時22分
今更ですが…
強盗被害は会社が掛けている保険によって回収できます
通常30万円程度が限度ですが、店舗の売上ですから満額回収できるでしょう
つまり、強盗被害に合っても会社の金銭的被害は少ないのです
(休業時の売上と事情聴取の人件費くらいです)
総額が大きくなれば次年度の保険額が高額になります
が、常時2名を配置する人件費に比べればたかがしれてます
ですから強盗にあった従業員の精神的被害など考えてないので
2名の配置を行わないのです
投稿: よこた | 2012年10月24日 (水) 09時26分