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2011年11月14日 (月)

オリンパス社は上場廃止を免れるのか?(あくまでも個人的意見)

オリンパス事件につきましては、先週来、多くの方にコメントをいただいております。お寄せいただいているコメントの内容でもおわかりのとおり、オリンパス事件の関心は「オリンパス社の今後の問題」と「損失隠しに関与した方々の責任問題」に分かれておりまして、本ブログにお越しの皆様方は、どちらかといいますと後者のほうに関心が高いようです。ただ、週末あたりから気になるのは行政当局が(第三者委員会の報告結果が前提ですが)、有価証券報告書虚偽記載の件については、過去の決算訂正をオリンパス社が行うことにより、刑事告発はせずに課徴金処分によって対応する方向で検討を始めた、との報道です。これはオリンパス社の上場廃止問題にも関係するかもしれませんので、オリンパス社の今後の問題にとって重要な情報かと思われます。

いつもブログを拝読しておりますzaimaxさんは、オリンパス社が上場廃止にならない、という結論には絶対に賛成できないとされ、「O社の上場廃止は社会的影響が大きいとして会社が救済され、一般株主だけは自己責任ということでしょうか?」と疑問を呈しておられます。

私個人の意見としても、今回のオリンパスの件は虚偽記載の程度が重大であり、間違いなく上場廃止になるのでは、と予想しております。過去の虚偽記載の程度もさることながら、社長反乱後のオリンパス社の開示態度はひどいの一言です。社長解任を「外国人社長には日本文化を理解できなかった」と一蹴し、海外のメディアに社長が反論をすると、その反論に必要最小限度の情報開示で反論し、さらには社長の主張を紹介する者に対しては「憶測で不確かな情報を流布する者には名誉棄損で法的措置も辞さない」と恫喝、最終的に逃げられないとみるや、損失隠しがあったと謝罪をして情報を開示という有様。私にはとても自浄能力のある企業には思えません。

つまり損失隠しを主導していた3名の方以外は「損失隠しは知らなかった」のが事実だとしても、会社を代表すべき社長が解職されたときの解職理由に関する情報開示(あれで十分と考えたのか?)、社長が内部告発をしたときの情報開示の在り方(2年前の監査役意見だけに頼りっきりで、新たに何も調査せずに開示してよいのか?)、株主をはじめオリンパス社のステークホルダーが情報を共有することを単純に恫喝によって妨害するという対応に、だれも異を唱えなかったわけでして、全社的内部統制が今後しっかり構築されたとしても、再び開示統制が機能不全に陥るであろうと予想されます。これは関係者の刑事処分や過去の決算訂正だけで再発が防止できるわけではなく、すなわちまた投資家・株主、銀行等に迷惑をかける可能性が高いことを示しているとしか言いようがないと思われます。

そもそも「組織の隠ぺい体質」なる開示統制の機能不全は、ダスキン事件のように裁判等によって表面化しなければ評価はできないのですから、原則として上場審査の対象にはならないはずです。しかし今回のオリンパス社のように、堂々と世間に「組織としての隠ぺい体質」示してしまった以上、社長反乱後の一連のオリンパス社の経営判断について、廃止すべきかどうかの審査の対象からはずす、ということは困難ではないでしょうか。むしろ、「ここまで悪質なことをやっても上場廃止にはならないのか。それなら今後はオリンパス社の件を、仮処分事件で廃止決定を争うときの有力な証拠にしよう」と考える上場会社が出てきてもおかしくはないと思われます。

以上が個人的な意見ですが、少し冷静に考えまして、もし(報道されているとおり)私の個人的な予想に反して、上場が維持される結果となるのであれば、どういった理由で維持されるのでしょうか?私は利害関係者ではありませんので、こちらも客観的に検討しておこうかと。

オリンパス社は自浄能力が発揮されたのか?

もう少し大局的に全体をみた場合、オリンパス社は元社長の反乱があってこそ、今回の不正事件が発覚したわけですから、この「元社長の反乱」自体、内部からの自浄作用とみるべきではないか。過去に上場廃止となった事案、たとえばカネボウ事件、ライブドア事件にしても、産業再生機構の調査や外部からの調査によって粉飾が明らかになったわけでして、そのあたりはオリンパス事件とは少し異なるものと思われます。大きな目でとらえるならば、今回の件も自浄作用が機能したものと評価できるのかもしれません。

また、第三者委員会による調査を積極的に導入し、その報告結果を尊重して自主的に過去の決算訂正を行う、という対応が「自浄作用」と評価されるのかもしれません。そもそも第三者委員会への期待というのは、世間的には「行政当局による不正摘発」に代わるもの、つまり事後規制への代替を果たすと思われがちですが、そうではありません。むしろ行政当局のもつ事前規制(投資家・株主が損害を被る危険のある状況を迅速に取り除くための規制)の趣旨を代替するものであり、企業が自主的に間違った開示を正すために(第三者委員会が)果たす役割こそ期待が寄せられるところであります。したがいまして、第三者委員会の調査に企業が協力し、最終的に間違いを認めて速やかな開示情報の訂正を行えば、これは「自浄能力が発揮された」と評価できることとなり、この対応を行政当局も見守ることになります。

開示統制システムの改善が明らかであること

たとえば損失隠しを主導した関係者への刑事処分(偽計取引として金商法違反の刑事責任が問われる)や、競争入札から法令違反企業として排除される、といった企業としのオリンパス社が社会的な制裁を受けることも、上場廃止を免れるための条件になるかもしれません。しかし、もっと大切なことは「不都合な情報を隠ぺいする組織風土・企業体質が一掃された」といった事情が認められることが必要、ということであります。たとえば本件においては、①オリンパス社の取締役会が、損失隠しを主導した者への刑事告訴を決めること、②(主導した)元役員らに対して会社として断固とした態度で損害賠償請求訴訟を提訴すること、③いったん解職した元社長を再びボードに復帰させること、④今回の損失隠しのスキームに協力した者、法人等の情報をすべて開示すること(これは第三者委員会報告で明らかになるかもしれませんが)などを実現することで、はじめて「隠ぺい体質からの脱却の兆し」が国内外を通じて理解されるのかもしれません。

上場維持という結論となりますと、どう説明しても海外の投資家からの不信感はなかなか拭えないものと思いますが、それは企業統治の抜本的な改革を実現する方向で解決する以外にはないのでは・・・・(このあたりは、まだどうも整理がついておりませんが・・・・)

そもそも上場を廃止するか否かは取引所が判断することであり、行政当局が刑事責任を追及しない以上は、単純に廃止事案とはしない、それ以上の理由は不要ということも結論としてはあるかもしれません。しかし、コンプライアンスの視点からすれば、いったん開示統制の機能不全を露呈した以上、二度と同じことを繰り返さないことを世間的に示すことが必要ではないでしょうか。そういった不退転の決意が「形として見える」ことで、ひょっとすると上場廃止が免れることになるのかも・・・・・と思う次第であります。

11月 14, 2011 商事系 |

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コメント

■DMORIです。
この件は山口先生がしっかりご指摘を書かれましたので、私が付け足すポイントはございません。まったく同感です。証券委員会の人たちは法学部系よりも経済学部系なのでしょう。
粉飾のカバーをはがしたら債務超過だったというなら、経営は成り立たないから上場廃止はやむを得ず。本件は粉飾だったけれども、過去の損失隠しは処理が終わっていて、現在債務超過ではなく、経営そのものは存続できる。さすれば罰としての上場廃止よりも、経営を存続させるほうが市場の混乱は少ない。といった判断を優先するのでしょう。
しかし法学部系の感覚では、「盗んだけど返したからいいじゃないか」がまかり通ってよろしいのか、という社会正義を優先したいところです。
上場廃止を避けるなら、その代わりに経営陣の法的処罰をどのように進行させる、という方針をセットで示さないと、まずいでしょう。

投稿: DMORI | 2011年11月14日 (月) 09時01分

一般株主とはどういう存在なのでしょうか。究極的には経営者も株主が選任したものであり、その経営者によって社会に対して会社が負うことになった責任は、本来株主が負うべきですが、株式会社においては出資の範囲内という有限責任までで免除されている存在でしょう。
会社の収益は最終的には全部株主が享受できるということに対しては非対照的で、優遇された存在とも言えるのではないでしょうか。
経営不祥事による株価下落は社会に対してはあくまで株主の自己責任であり、それを取り戻すのは社会に対して要求するのではなく、経営者に対する株主代表訴訟で行うというものではないでしょうか。
上場廃止となっても、会社業績が順調に推移すれば長期的には再上場による流動性の回復、或いは他の企業によるM&A(その際には適正な価格での株式処分が可能かもしれない)などもありうる訳です。
経営者に経営を委ねて収益分配に与ろうとする以上、この程度のリスク負担は株式投資に必要な覚悟と考えます。

投稿: unknown1 | 2011年11月14日 (月) 09時47分

近視眼的な発想による解決ではなく、市場の信頼性の維持、市場ルールの維持が重要と考えます。

一旦上場廃止となり、監査を受け、適正な会社情報を提供して、再度上場することも、会社のあり方として一つの姿と思います。「上場廃止=株主が損をする」ではない。上場廃止になっても、株式売買は不可能ではないし、再上場をして、高値の株価になることもありうる。そのようになるかどうかについては、取締役、監査役の選任が重要とは思います。

オリンパスについて、そのように思うのは、やはり世界一の医療内視鏡メーカであり、この強みを、どう生かせるかにあるかと思うからです。上場廃止になっても、ファンドや企業(日本、欧米に限らず中進国も含め)も大いに関心を持っていると思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2011年11月14日 (月) 11時49分

最近の流れを見ていますと、上場「意地」のように見えてきます。

こんなことを言うと「市場原理主義」者と思われる可能性もありますが、仮に上場廃止の場合、医療機器事業だけでも会社分割の上売却する以外に株主への責任は免れない様な気がします。

上場維持(意地?)の場合でも事業価値>企業価値となっている可能性があるので、best interest of the shareholders の観点だと、M&Aされるのが筋かと。

上場ステイタスはいざ知らず、その後は全ては株主と取締役が決めること。ポイントは株主にそれが出来るルールと経営者がそういったリスクを常に感じるルールと運営かと。

株主代表訴訟はやっぱり、取締役に追求するようにすべきだと思います。

投稿: katsu | 2011年11月14日 (月) 11時50分

どうもよく分からないのは、「上場廃止にならぬよう課徴金処分にとどめる。飛ばし実行者は別に刑事処分も。」のような報道ぶりであるということです。

かつて、カネボウ(?)で、東証の上場廃止決定に対して金融庁が異を唱えたことがありました。金融庁は、悪質性自体は争わず(告発もしました)、いわば政策的・裁量的見地で主張を展開したように思えます。

今回、上記リーク(と言っていいでしょう)が大々的にされているのは、金融庁側に諸々の理由で「廃止はいいだろう」との考えがなぜかでき、東証に政策的考慮を求めるのでなく(求めても無理だと思って)、「悪質性が劣るよ」という考えを、処分の軽重をいわば「だし」にして伝えようとしているような気がしてなりません。

そして、そのために、一体と捉えられるべき事象を、「決算数値」と「個人の行為」で切り分けて処理しようとするのは、まったく腑に落ちません。

憶測に基づいた憤慨ですが。。。

投稿: ponta | 2011年11月15日 (火) 00時45分

市場の信頼を維持する、という観点でいえば、正直いって、もはや手遅れだと思います。

市場開設者としてすべきだったことは、オリンパスが自ら不適切な会計処理を認めた(自白)した時点で、上場規程にしたがって速やかに監理銘柄(審査中)としたうえで、結論を得る作業を行うべきでした。
また、金融庁の行政処分や検察による刑事処分等の結論を待つなどということなく、市場開設者として規定している「規程類」と「開設者としての見識」に基づいて、独自にかつ可及的速やかに結論を得るべきでした。

東証がいまだ(公式に)何もしていないということは、市場開設者としての怠慢にほかなりません。そのこと自体で、東京市場への信認を失っているとの意識が東証にはないのでしょうか?
行政処分や刑事処分とは基準も目的もことなる上場規律を維持することこそ、市場開設者としての存在意義だと思います。

なお、上場廃止について、被害者である株主が最も被害を受ける、という見解には与しません。
その損失は株主代表訴訟や通常の不法行為責任追及によって報われるべきものであり、市場一般の信頼とは異なる次元にある問題です。
言ってみれば一般株主であっても内部関係者であるわけで、その選任にかかる責任は応分に負担するべきものです。
一般株主の影響力は小さいかもしれませんが、それは内部関係における責任負担割合を議論する際には意味をなしますが、対外(対会社関係者以外)的には全く関係のない話です。
個人と会社の切り分けについても、一義的には会社が責めを負い、その内部負担割合の議論として、委任を受けた取締役の対会社責任として最終的負担をすべき話と考えます。

議論はマトリョーシカのごとく入れ子構造になると思いますが、その入れ子構造を無視した直感的、感情的な議論は、有害無益であるとともに、事案ごとに結論を異にしかねない、不透明さを醸し出す原因ともなりえます。

日本市場におけるこの点の事案の最大の問題点は、その不透明な基準設定とその経緯にあると思っています。
日興コーディアル、ライブドア、長銀、カネボウ・・・これらの有価証券報告書の虚偽記載事件に統一的な基準設定がなく、その場その場の妥当な(しかもこの「妥当」という点は論理的な「妥当性」でないと私は思っています。)結論を得るための逆算的な理由づけを行ってきた点が、日本市場への信認を失わせ、かつ、市場活力を削ぐ要因になっていると思っています。

日興であれば上場廃止になったときの市場への影響を考慮し、ライブドアについては逆に市場への影響を一切無視し、長銀・カネボウについては公的資金導入への国民的嫌悪感を配慮する。
その時々によって重視されるファクターが異なり、それ以外の要素はオマケのごとく扱われているように思います。
事実はそのような取り扱いではないとしても、そのように捉えられるような状況があるのは、市場開設者としての東証が自身の見解を明確に持ちえないことが問題にあると思います。

東証は強制調査権がないと、問題のあるごとに言い訳をします。
東証の調査に応じないこと自体を、上場契約違反として即上場廃止とする取り扱いにすれば良いだけではないかと思います。
東証にとって、本当に「市場」が大切であれば、それぐらいの姿勢を見せるべきです。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年11月15日 (火) 15時40分

理論的には先生の指摘の通り上場廃止が筋かと思いますが、個人的には7分3分で上場維持ではないかと予測します。
当局としては、色々なシュミレーションの結果からの大局的な見地(某大臣の政治的判断かもしれません)を東証へのサインとしてメディアへリークしたもとと推察しますが、もう一つ狙いがあるのかもしれません。元社長の内部告発以来、大量の空売りを仕掛けていたファンドがありますが、上場廃止となれば、個人株主が大損する一方で、これらのファンドは大儲けすることにます。無論、違法ではありませんので直接規制できないため、情報戦をおこなったのでは?予定通りここ2日間、ストップ高になりましたね。

報道通り、偽計取引で告発となると、両罰規定ですから法人自体が罪に問われるわけですから、上場廃止規定の抵触するのではないかとの疑問がわきます。「企業行動規範」に •流通市場の機能又は株主の権利の毀損行為の禁止という規定があり、偽計取引はこれに該当するのでは。この規定は、「企業行動規範」の遵守事項に当たり、違反した場合「上場契約」違反となりますから、上場廃止ではないかと。

あまり議論されていませんが、上場廃止審査において第三者委員会報告は重視されているようです。東京証券取引所自主規制法人の解説では、「第三者委員会による調査結果は、上場管理部の虚偽記載審査においても考慮すべき重要な要素となることから、第三者委員会と適切なコミュニケーションをとることは有用であるため、上場会社においては、第三者委員会を設置するに際し、上場管理部からの協力要請に応じることを委託の範囲に明示的に含めておくことが望まれます。」とされています。

投稿: 迷える会計士 | 2011年11月15日 (火) 22時51分

常識的には、と言いますか、あらためて山一証券からカネボウ等、過去8件の粉飾決算事件、有価証券報告書虚偽記載事件を確認しましたが、額の大きさ、隠してきた期間の長さなどからはカネボウのケースに似ていますし、ちょうど最近、以前、山口先生もご紹介されていた、伊藤 醇 著「命燃やして」という山一証券事件に関する本を読み始めていますが、偽装「飛ばし」の巧妙で悪質な手口は、山一証券事件に似ています。
こうしたことからも、まず上場廃止はまぬがれないと私は見ています。
先日の土曜日だか、新聞を見て驚いた「行政処分だけで済む。上場廃止は回避されるようだ」とのリーク?記事には読んだ瞬間から違和感がありました。「そんな程度で終わったら、ヘンな話、山一やカネボウの元社員たち怒っちゃうよ」と。
16日の夜になって、東京地検が動いている報道が出てきましたね。私の推測では、元副社長だけでなく、元会長は逮捕されると思います。あるいは過去に遡って数名ということもあり得ると思っています。
東証としては「それを待って<当然の決定>をする」と見ています。

投稿: 伊藤晋 | 2011年11月16日 (水) 23時39分

上場維持の思惑でストップ高とか。もはやこの銘柄に正常な取引は成立しません。誰が見ても「影響が重大」なのですから、さっさと上場廃止とするべきです。

投稿: JFK | 2011年11月21日 (月) 21時04分

そうじゃないとは分かってる(というか「信じてる」)つもりなのですが、
やはりライブドアの堀江氏や村上ファンドの村上氏の際の
マスコミや公安当局や司法の対応、反応と比べると、
とんでもなく「甘ーーーーーーい」と感じてしまうというか、
間違いなく甘いですよね。

仮に一旦上場廃止になっても、真面目に再建に取り組めば数年後には
再上場が可能だと思われるわけで、何を躊躇うことがあるのかと
思います。その辺になると、厳しい姿勢の海外筋も急に論調が
変わるんですよね。現金なヤツらだ(笑)。

投稿: 機野 | 2011年11月22日 (火) 00時02分

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