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2011年11月 9日 (水)

「他者をかばう美徳」とオリンパス事件の進展

(11月9日夕方 追記あり)

オリンパス社の元社長ウッドフォード氏は1960年生まれ(私と同い年)ですから、もうかれこれ30年にわたりオリンパス社に奉公し、オリンパス社をこよなく愛し、そしてオリンパス社を誇りとして生きてこられたのでしょうね。今日のインタビューでも「これからの従業員、株主のことを思うと、私が復帰するとかそんな問題よりも、早くオリンパス社が信頼を回復して再生できる態勢になることを願う」とコメントしておられます。憎むべきは(自分を解職へと追いやった)役員の面々であって、会社ではないということかと。

そのウッドフォード氏が現社長の謝罪記者会見に対して「(損失先送りを画策した)3人の責任?とんでもない!ボード(取締役会)を構成する全員が辞任しなければならないはずだ!」と強く主張されています。再生のための是非は別として、たしかに現経営陣は元社長からそのように言われてもしかたないように思います。元社長を解職したのは特定の役員ではなく取締役会です。代表取締役を解職する、ということは上場会社にとって由々しき問題でありますので、なにゆえ社長を解職するのか、その解職理由が明確に取締役会で示されなければ審議などできません。ろくに解職理由も調査することなく解任に賛成した、ということはそれ自体が非難に値するかと。

ただ「辞任しなければならないほど重大な責任」が3人を除く他の役員に存在するか・・・・といいますと、私の正直な気持ちとしては、ちょっとなんとも今の段階では申し上げられないところであります。思い悩むところが大きいです。

解職を決めた2日前に国内3社の買収問題、ジャイラス社買収問題に関するPWCの中間報告書が元社長の手元に届いており、そこには英語版とは別に和訳版もあったようです。日本語版がある、ということは元社長が各取締役に報告結果を示すことを前提として作成されているのですから、他の取締役の方々が「報告書は見ていない」ということは考えにくいと思われます。ただ実際には、元社長欠席のまま取締役会が開催されたそうですが、「もう2年も前に、第三者委員会調査で『適法』とされたんだから、何も今頃蒸し返さなくても・・・・」といった協議だった可能性は否めません。

もちろん、2009年に監査役会がわざわざ第三者委員会を設置して、企業買収問題について外部第三者の意見を求めたこと自体、「取引の異常性」が当時の取締役会で問題となっていたことを示しており、さらに当時の監査法人もジャイラス社のFA報酬を問題視していたようなので、「異常な兆候」が存在したことは明らかです。したがって異常な兆候があるにもかかわらず、他の取締役が何等問題意識をもっていなかったとは到底考えられないところです。しかし、2年前の第三者委員会報告書が「著しく不合理な経営判断とはいえない」との結論を出し、この結論にしたがって、当時の監査役会が上記買収問題に「お墨付き」を与えてしまった以上、今回のPWCの報告書を元社長から出されても「もう終わった話だから良いではないか。なぜそこまでこだわるのか」と他の役員らが感じても不思議はないように思われます。

かりに現社長が本日述べておられたように「昨日、元副社長から(損失先送りの処理として行ったことを)聞いて初めて知った」というのが真実だとするならば、まったく損失先送りを実行していた3名以外の取締役は、なにも知らずに元社長の解職に賛同した、ということになります。もちろん、これも企業統治や法的責任を考える上で、たいへんな事態となってしまいますが、「知っていたら、私たちはすぐにでも元社長と同じく解職していただろう」と言われてしまいそうな気もします。つまり我々がボードに残っても、自浄能力はきちんとありますよ、と。今日の現社長の記者会見ストーリーは、かなりしたたかに構成されているなぁと感じたのは私だけでしょうかね?

本日の現社長記者会見に関するニュースを読みまして、まだまだオリンパス社は誰かを巧妙にかばっているのではないか・・といった感想を持ちました。九電やらせメール事件と同様、これからのオリンパス社の再生に向けて、他社(もしくは他の関係者)をかばうことが必要と判断したからであります。昨年ご紹介した「命燃やして」において、10年にわたり山一證券監査見逃し責任を追及された伊藤醇氏(公認会計士)は、その「はしがき」で山一證券の2500億円もの損失隠しがなぜ長年わからなかったのか、その背後に信託銀行、大口顧客、そして海外のアカウンティングファームによる強烈な監査妨害行為があったことを述べておられ、また著書の中でも、なんどもこれらの協力者なしには山一の損失隠しはありえなかったことを述べておられます。粉飾には協力者はつきものです。今回の件が記者会見で述べられたとおり粉飾決算に関連する事件ということであれば、そこには損失隠しに長年協力していた社内、社外の関係者が存在するはずであり、おそらく山一と同様、オリンパス社もこれをかばい続けるものと思います。

第三者委員会、行政当局、そして海外の調査機関等、これから一気に調査が進展することになると思います。損失隠しに中心的に関わった方々への制裁措置がとられれば世間やマスコミの関心も薄れ、一件落着となるかもしれません。しかし、それでは同様事件の再発防止やガバナンスへの海外の信頼回復にはほど遠いように思います。オリンパス社が今後の再生のためにかばい続けようとする関係者の責任追及にまで至るのかどうか、資金の流れの解明とともに、そのあたりを見守っていきたいと思います。

(9日夕方 追記)

上記エントリーを書いた時点では存じ上げませんでしたが、昨日(11月8日)発売の週刊朝日ではスクープとして「発端は経営者総ぐるみの損失隠し疑惑」なる記事が出ていたのですね。なるほど・・・この記事も、8日に企業側から損失隠しを公表するに至った要因になっているのかもしれません。毎度ながら、一度火がついたマスコミのおそろしさを、またまた垣間見た気がいたします。

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コメント

一連の会見を読んだりした感想として、現社長の取締役としての資質に疑問を感じました。
1:損失先送りの認識
2:企業価値への認識
3:ウッドフォード氏の復帰へのコメント・自らの進退等取締役の人事への認識

1:就任時の会見では「正しい処理」と大きな記者会見で明言していたかと思います。あれだけ騒がれて、引き継いで、代表者として世間に接するのに、大した調査もなく「正しい」と言い切る善管義務は大丈夫なのか?

2:2度の会見にわたり、「経営判断がまずく株価は急落したが、製品はよく、企業価値は落ちていない」という主旨の発言。企業価値は財務的には時価総額があります。また、顧客信頼感の回復は消費者向けの事業では(医療向けといえども)簡単ではないはずです。企業向けでも購買する相手側も不祥事企業の製品を購入することへのためらい(社内の規程とか、世間体とか)があります。顧客の反応を甘く見ている可能性。

3:「ケミストリーが合わない」と言っているに等しいウッド氏の処遇ですが、ウッド氏自身は株主が判断することといっています。全世界に向けた記者会見で「復帰がない」と言える人事権感覚。

事件の真相究明は第三者委員会が今度こそは暴いてくれそうな期待感が出てきましたが、その後の経営のかじ取りは独立企業として生き残っていくにはあまりにも心細いと言わざるをえません。

サウスウエスタンが役員総辞任の臨総を提案したのはすごく全うなことだと思います。

外国人の意見では「正義をただしたウッド氏に謝罪すべき人が誰もいないというのは礼儀正しい日本の伝統に反する」とか、「役員は全員ハラキリ(辞任)するのが日本の文化ではないのか」といったコメントがあり、神妙に思いました。

製品が一流で経営が三流という悪い面が絶えない日本企業の側面。これもずっと繰り返されている。

投稿: katsu | 2011年11月 9日 (水) 08時42分

■DMORIです。
オリンパス社の不正は、長年にわたって隠されてきたとのことですが、近年は金融商品取引法に基づいた、内部統制報告書が提出されていたはずです。
経営陣の責任はもちろんですが、それを監査法人が見抜けなかったというのは、J-SOXに欠陥があったのか、金融庁のガイドラインに問題があったのか、または監査法人の監査が手ぬるかったのか、興味のあるところです。
米国SOX法が厳しすぎて問題だったということで、J-SOXでは日本流の内部統制にしました。それは正しかったのか、検証をするのにとても良い事件が発生したと思います。
「身の丈サイズの内部統制でいいのです」を推進してきた、八田先生のコメントも聞きたいところです。

投稿: DMORI | 2011年11月 9日 (水) 12時37分

DMORIさん:

今回は経営陣による隠蔽工作であると思いますので、いわゆる「内部統制の限界」に当たる事例ではないでしょうか?
内部統制の問題ではなく、ガバナンス、すなわち取締役会の機能、監査役の機能、社外取締役の機能、独立役員の機能といった観点からの問題になるのではないかと思います。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2011年11月 9日 (水) 13時02分

場末のコンプライアンスさん、こんにちは。
本日11/9の読売・夕刊の報道では、あずさ監査法人が2009年度に、オリンパス社の損失隠しを指摘し、外部調査委員会を設置して調査するよう、求めたとされています。
その調査委はわずか1週間でいい加減な結論を出し、それで収まってしまったとあります。そしてオリンパス社は翌年に、あずさ監査法人から別の監査法人に乗り換えたということです。
J-SOXの議論でも、日本の監査法人がクライアント企業から報酬をもらう制度の問題が出ていました。監査法人が報酬支払者に対して、どこまで本気で、「この程度の調査では、監査法人として承認できない」とがんばれるかという問題です。
SOX法は、米国エンロン社などの巨額粉飾事件を再発させないことを目的に作られました。日本版SOX法では、内部統制の限界を低くしすぎたことで、実施基準を見直す必要が出てくるのではないでしょうか。
コーポレート・ガバナンスか内部統制かの区分けよりも、今回の損失隠しが長年にわたって判明せず、株主が大きな損失を受けたことは、要するにJ-SOXが機能しなかったと言えるでしょう。

投稿: DMORI | 2011年11月 9日 (水) 22時30分

制度の問題ではありませんよ。
どんなに制度をいじくっても、こういう不正は決してなくならないでしょう。
こういうことが起こると、すぐ「規制を強化せよ」となるのが一番いけないことです。

急がば回れで、やはり、やはり教育の問題でしょう。

投稿: 機野 | 2011年11月 9日 (水) 23時55分

2年前に、この問題に正当化のお墨付きを出していた(売っていたというべきか)外部の有識者ってどこの誰ですか?
ウッドフォード氏が驚愕し、ロンドンの大手会計事務所も「確かにこれはおかしい!」と断言し、この2週間にテレビ出演した各界人士(特に外国人)もみんな「これはおかしい!」と断言した問題を、平気で正当化した「弁護士」って誰ですか?

監査法人への追及も始まっているそうですが、これほど悪質な企業犯罪の隠蔽に加担した「弁護士」の責任は追及されないのでしょうか。
一般論としてで結構ですのでご教示ください。
1、「外部の有識者」の「外部」とは何か。会社が顧問契約している事務所の弁護士は「外部」扱いできるのか。
2、今回の事件で株主代表訴訟は必至と見られるが、取締役経験者以外にも、監査法人や、2年前の「外部の有識者」も共犯者として民事法廷の被告席に引き出される可能性はあり得るのか。言い換えれば、株主代表訴訟というのはどこまで広範囲に被告にできるのか。
3、「第三者委員会」というのは、どれだけ報酬がもらえるのか。今後の顧問契約など目当てに、黒を白と言いくるめるような行為がありえるのか。仮にそんな行為が発覚したら、弁護士資格剥奪などの制裁はないのか。
4、株主代表訴訟が起こされた場合、被告たちは会社の顧問弁護士を会社の金で雇えるのか。

不勉強で申し訳ありませんが、どうかよろしく御願いします。

投稿: PEN-F | 2011年11月10日 (木) 10時27分

これだけ多額の負債を一部の経営陣だけで長期に隠蔽し続けることができるのでしょうか。
他の取締役陣が全く知らなかったというのも果たして本当なのでしょうか。

とは言え、ある日突然取締役全員が責任をとって交代するという状況は、取締役が事業執行に深く係わっている日本ではとても考えにくいことです。
また、会社=家族、運命共同体という意識が定着しています。
結果として、会社を取り巻くステークホルダーの中で最も重要視されているのは経営者と社員であって株主ではないというのが現実かと思います。

本件は経営者層に限られた不祥事の隠蔽事件なのかもしれませんが、11月2日付の「日本は不祥事が発覚しやすい社会になったか」でも諸先生が論議されましたが、規模の大小、上場・非上場の違いはあっても、一般に経営者を含む社員全員が家族の様な絆で結ばれ、自らが属する会社を一丸となって守ろうとするという実態がある以上、残念ながら本件のような巧妙な社内不祥事隠しを産む素地はなくならないのではというのが実感です。

また、飛ばしの入れ知恵をした人物がその後社外取締役に就任しているとの報道を見ますと、いかに立派なガバナンス体制を構築しようと、結局はそれを運営する会社のマインドと、経営陣・社員の資質に期待するしかないということでしょうか。

企業法務の一翼を担う身としては「フェアプレーで勝つことが結局は会社の繁栄につながる」ことを地道に社内に伝道して行くことが重要と再認識した次第です。

投稿: Chuck | 2011年11月10日 (木) 10時56分

実務サイドの個人的な感想としては、J-SOXの効果なんて、ほとんど感じられません。強いて言えば、IT統制が導入されて、情報システム部に一定の内部統制ルールが策定されたことくらいでしょうか。クライアントや実務の現場感としては、内部統制制度は有形無実のような気がします。監査法人が不正監査にまで責任を及ぶとすれば、不正監査用のツールを導入する必要があると思いますが、コスト高になる実業界からの反対で成立しないでしょう。

投稿: 某会計士 | 2011年11月10日 (木) 11時15分

PEN-Fさん、エントリーの内容はNHKの数日前に報道されたものを基礎にしておりまして、その時に報告書はテレビに登場しましたが、委員のところは抹消(ぼかし)になっていました。したがいまして、それ以上のことはわかりません。
ただ、期限1週間、委員会は2回だけ、ということですから、相当限られた資料のなかで調査結果を出さねばならない状況だったようです。そもそも「そんな状況なら受けなければいいのに」ともいわれそうですが。
実は私も過去に、社内調査の補助でしたが「結果的にはお墨付きを与えてしまった」報告書を作成した経験もあり(恥ずべきことですが・・・)、偉そうに言える立場ではありません。たとえば紹介者が誰だったのか、顧問事務所と委員との関係はどうか等、本当に、この問題はむずかしいところで私もドキドキしながら上記報道をみていた次第です。。。

投稿: toshi | 2011年11月10日 (木) 12時22分

事件の全容解明のためには、2つの算数の問題を解く必要があります。

①1400億円ー1000億円=?
②1000億円ー100億円=?

①は、M&Aの関連で支出した金額から損失額を差し引いた残額はどこへ消えたのか?
②は、最終的な損失額と1990年代初めの損失額(週刊朝日)の差額はどのように増加したのか?
2000年頃の損失額500億円と報道されています。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/111110/bsg1111100503008-n1.htm

オリンパスは、当初の損失を取戻すために危険なギャンブルにのめり込んでいったことが窺えます。
ガバナンスや内部統制の観点からは、この辺りの解明が重要かと。

投稿: 迷える会計士 | 2011年11月10日 (木) 15時01分

第三者委員会に多くを期待するのは酷かと思います。

本件の第三者委員会の委員を引き受けた方々の勇気と正義感には
心から敬意を表しますが、強制調査権限があるわけでなく、
時間的な制約と情報量の制約の中で真相解明を期待される
委員諸氏のご苦労とご心痛は察して余りあります。

コーポレートガバナンスに基づく手続きであることは重々承知ですが、
こと本件のように刑事事件に発展する可能性の高い事案については、
最初から司法にゆだねるという判断は許されないものでしょうかね。

どう考えても餅は餅屋ではないかと思うのですが。

投稿: Chuck | 2011年11月10日 (木) 15時14分

■DMORIです。
本日11/10夜のNHK報道によると、あずさ監査法人はオリンパスの企業買収の金額が大きすぎておかしいと指摘して、直後に契約解除されていたことが分かった、ということです。翌年の解約ではなかったのです。
これでは、不自然買収を指摘したことによる、報復の解約だということが、この時点で明らかだったでしょう。ではなぜあずさは、この時点でオリンパス社が不正処理していると、社会に対して公言しなかったのでしょうか。
それが「守秘義務契約を締結しているから」ということなのでしょうが、守秘義務はあくまでコンプライアンス上にあるときです。相手が不法行為を行っている場合には、守秘義務契約は停止条件になるし、もし訴訟になっても裁判所は不正公表を支持するでしょう。
会計士にしろ弁護士にしろ、またサラリーマンにしろ、不正なことをするクライアントから報酬をもらうくらいなら、戦う心を持たなくてはいけません。

投稿: DMORI | 2011年11月10日 (木) 20時29分

報道によると、民主党はオリンパスや大王製紙など相次ぐ企業の不祥事を受け、「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム」を設置し、未然防止策を検討していくことを決めた、ようですね。
確かに最近の一連の企業不祥事は日本企業の企業統治の弱点を如実に示したものであり、様々な側面からの議論が必要なことは間違いありませんが、あらぬ方向への過剰反応には警戒が必要です。
米国のエンロンやワールドコム、国内のカネボウ等の不正経理を背景に導入された内部統制報告制度が、実際には経営者による粉飾事件には殆ど無力なものであった悲喜劇は繰り返して欲しくありません。下手をすると折角簡素化したJ-SOXの運用を厳格化すべきとの的外れな議論が出てくる恐れもあります。また社外取締役の義務付けも海外投資家へのジェスチュアにはなっても、形だけの導入ではいかに実効性が低いかを今回のオリンパス事件が例証したように見えます。
Toshi先生が指摘された通り、「監査法人と監査役の連携」が地味ではありますが極めて重要です。そしてそれを真に有効ならしめるためには、業務に精通した「常勤」監査役の人事的独立性の確保、具体的には監査役選任の提案権を経営側から監査役会に移すことが決定的に重要と、個人的には考えています。

投稿: いたさん | 2011年11月10日 (木) 22時33分

以下、コメントの引用です
>■DMORIです。
>本日11/10夜のNHK報道によると、あずさ監査法人はオリンパスの企業?買収の金額が大きすぎておかしいと指摘して、直後に契約解除されていたことが分かった、ということです。翌年の解約ではなかったのです。

とありますが、これが事実の場合、監査法人の交代の際のオリンパス側の
発表は問題にならないのでしょうか。
取締役(会)が隠したので、とか簿外に出ていたので等の理由で監査法人が見抜けなかったとすると、そもそも監査法人自体の社会的な価値とはどこにあるのでしょうかね・・・。

八田先生当たりに、もう一度、色々と制度を精査していただいほうがいいのではと、“個人的には”思います。

投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2011年11月11日 (金) 02時27分

監組織ぐるみの隠蔽・不正だという決定的な証拠もないのに、推定で社会に公表などできません。「不正だと思うんですが」で発表して許されるなら楽ですし、いくらでもしますよ。

あの、みなさん見抜けなかったと簡単なことのようにおっしゃいますが、山一證券の判決文等読まれたことありますか?

会社だけでなく、銀行等外部の関係者までグルだったらどうしますか?
銀行が出してくる信託口座の残高証明まで虚偽だったらどうやって見抜けと?

オリンパスが使用していたSPCのBS残高やその監査証明自体が虚偽だったらどうしますか。しかもそのSPCはオリンパスと何ら資本関係もなかったとしたら。
オリンパスの息がかかったSPCであったかどうか、SPC所有者である元証券関係者との人的関係だけがつながりであったなら、監査で発見など不可能です。

それこそ、それ自体を目的として発見する調査手続きをしないといけないし、時間もお金もかかりますし、何より監査法人に強制的に調査する権限がないと無理ですよ。

そんな時間かけて何も出て来なかったら、世間は非効率だと勝手なことを言うでしょう。JSOXだって、時間コスト労力がかかるからと世間も企業も否定的だったではありませんか。すぐ手のひらかえすのではなく、ある資本市場や制度とはなんなのか、よく考えていただきたいものです。

正直いって日本人はマーケットに対していい加減すぎると思います。理解度も低いしなにより個人の信念・理念・道徳がないと思います。

粉飾をする当事者に、する気も起こさせないほどの厳罰を科さないとなくならないですよ。


公認会計士は本当に現場で苦労していますよ。
複雑な会計基準をきちんと理解して自分で処理できる企業なんでほんの一部です。
おしりを会計士が拭いてあげてるんです。
監査していなかったらめちゃくちゃになっていると思いますよ。

監査されていない会社の株式を買ってみられたらいいと思います。

会計士に対する批判は理解できますが、監査や資本市場、会計基準についてももっとよく知って頂きたいと切に思います。なかなか世間に行き渡らないので残念です。

投稿: M | 2011年11月12日 (土) 12時36分

■DMORIです。
Mさんは会計士か監査法人系の方とお見受けいたしますが、少なくとも私は、なんで会計士が不正を見抜けないのか、といった批判をしているのではなく、J-SOXが甘かったのか、どうしたらオリンパスの不正を防ぐことができたのか、検証が必要ですね、と言っているわけです。
オリンパス社の手口を見ますと、ケイマン島を経由させたり、ファンド会社を設立して飛ばすなど、証券屋のプロでないと考えつかないような手口を、いくつも使っているようです。数年前に国会で流行った“不正のデパート”とも言える多様さです。
この手口を防ぐためにと、内部統制監査をより複雑にしても、悪質な経営者は必ずその隙間を見つけて、新しい手口で不正をします。これでは各企業の現場でまじめに働く人たちの手間が増えて、迷惑をかけるだけかも知れません。
たとえば、メールで不正の指示をする経営者がいるから、社内の電子メールデータを3年分完全保存することを義務づけたとしても、不正を行う経営者はメールでの指示を取りやめますから、ストレージを売りたいITベンダーが喜ぶだけになってしまうでしょう。制度を厳しくすればよいというものではなく、そのツボを押さえた対策が必要です。
しかし私のブログでも同じ話題を書いておりまして、そのトピを見つけた人たちが、何を検索キーワードに訪れたかを調べてみますと、「オリンパス 内部統制」とか「オリンパス J-SOX」から来ている方が多いのです。
やはり今回の巨額粉飾事件を聞いて、「こういう不正を防ぐために、J-SOXを作ったはずではなかったのか」と疑問に思う人が多いことが、また事実でもあると思います。
たとえば社外監査役を、現経営陣の反対派からも必ず1名、株主総会で選任しなければならない、といった監視強化制度にすれば、また違った効果も出てくるのではないでしょうか。今回解任された外人社長のような観点を持つ人を、監査役の1人に据えるということです。

投稿: DMORI | 2011年11月12日 (土) 18時15分

Mさんの主張が通るならば監査法人に対する信頼感は相当毀損されるのではないでしょうか。公認会計士には職業的猜疑心が要求されているはずです。O社のように保有有価証券の時価が簿価を大きく下回っていることを知っているにも拘わらず、損失を計上せずに出資金などに振り替えられているとすれば猜疑心の対象になるでしょうし、常識を外れるようなM&Aの手数料も猜疑心の対象になるはずです。ましてとんでもなく大きな金額の処理が行われています。これに疑いを感じられなくても当然となれば、公認会計士の(あるいは監査法人の)専門性は一体何なのでしょう。
「隠す」「かばう」ことの危険に対する仕掛けが会計監査人であり、監査役であるはずで、それが機能しなくても仕方ないと言うのは本末転倒の議論だろうと思います。そのポジションに就いて報酬を得ているならば、相応の事が生じたときは制裁を受けるリスクの負担を覚悟すべきでしょう。「かばう」ことに加担したことは勿論、「知らなかった」と主張する取締役も同じでしょう。その主張が通るのは余程の巧妙な隠ぺい工作が行われた場合だけだと思います。

投稿: unknown1 | 2011年11月12日 (土) 21時21分

「何の為に仕事をしているか」です。

万能の法律はない。万能のシステムはありません。

それぞれの立場にいる者がそれぞれに努力せずして、
社会は、会社は機能しません。

不正は決してなくならない。そんなことは分かりきったことです。
でも、逆ギレしたところで虚しくなるだけです。

出来るだけのことをしましょう。
自分に出来る、出来るだけのことをしましょう。

投稿: 機野 | 2011年11月13日 (日) 00時42分

DMORIさん、

すいません、ちょっと熱くなってしまいました。。
そうですね。SOXのきっかけはエンロンやワールドコムの破綻で、それらは経営者不正でした。ただ、監視・相互牽制を前提にした内部統制の充実と検証を目的としたSOXではやはり今回のような共謀には対応ができないのかな、と感じております。
組織で働く人も皆人ですから、それぞれ想いや事情もおありでしょうが、こういう結果は本当に残念です。

Unknownさん、
おっしゃるとおり、すべてを疑いの目で検証するマインドを持たなくなったら監査人としては終わりです。

金融商品会計導入前から時価が著しく下落していたら減損する処理はありましたし、それについて疑わない監査人はいない(時価があり見解の相違の生じる余地がない)と思いますので、一体何が起こっていたのか、早く明らかにして欲しいです。
今回のスキームについて、報道ではまだ曖昧な内容しかわかりませんが、かなり巧妙だったのではないかなと、同業として信じたい気持ちです。

信頼されていることが前提の会計監査制度ですし、真面目に努力を積み重ねている者からすると信頼を失うことは本当に残念で言葉がありません。

人として、相手に情を持ってしまいますが、それを堪えて客観的誠実に判断を下す、ということをこなせばいいだけなんですけども。

機野さん
そうですね、取締役、監査役、会計監査人それぞれ全うすべき任務と持つべき理念があり、日々それを外していないか再確認、ですよね。

投稿: M | 2011年11月13日 (日) 02時52分

監査業界で飯を喰う者です。
Mさんのご発言の一部は、概ねの点において現場で手を動かす者の本音を代弁していると思います。
あくまで一般論ですが、従業員不正でこれだけの額の粉飾があったなら「会計士はマヌケすぎる」「仕事しろ」「カネ返せ」という批判はすべて正当と思いますが、経営者が本気になって粉飾隠しに走ったら、こちらとしては、相手の何らかの失策がない限りお手あげ、というのが偽らざるところです(※今回の事例がどうかはまだ何ともいえません。経営者不正といえども、相手の失策をうっかり見逃していたとなれば、責は免れないかと思います)。
また、J-SOXは、誤謬リスクや従業員不正に対してはかなり強力と思われますが、経営者不正に対してはほとんど無力かと(このことは実施基準等にも「固有の限界」なんて言い回しで明記してあったかと思います)。
様々なリソースの制約がある中、不正(特に経営者不正)に対応する手続というのは、「黒」と確定できる監査証拠が現場で上がることなどほとんどあり得ず、たいていの場合は、あやしいことがもしあったとしても、「白くない」、どこまで突き詰めても「グレー」、せいぜいどんなに良くても「果てしなく黒に近いグレー」なモノを見つけるのが、現場としては精一杯です。そのような場合、監査法人上層部は、あえてリスクを犯して「グレーなものがあります!」などと世間に公表するなんてことはせず、ひっそりと監査を降りるというのが、通常採られる手順ですし、業界の常識です(監査法人には、「世論を見方に付けてクライアントと闘う」なんてインセンティブはどこにもないので、これ自体は別に責められるべきことではないと思うのですが、如何でしょうか。また、監査法人にそこまで求めるとすれば、善良な上場企業様まで須く監査報酬が膨大に跳ね上がるでしょうし、大量の「監査難民」も発生するかと)
個人的には、新日本がなぜこのクライアントを拾ったのか(記憶の限りでは、監査人交代時は、業界はまだJ-SOXバブルに浮かれていた頃で、ダンピングが流行する前かと)、あずさ→新日本の引継時にどこまで踏み込んだ手続が行われていたのかに関心が向くところです。仮に前任監査人が後任監査人に、自らが発見した不正の兆候を十分に伝達していなかったとして、それだけで前任監査人に何らかの法的責任が発生することがあるのか、そして、その事実を以って後任監査人が免責されることがあるのか、この事件の興味は尽きないです。

投稿: 通りすがり | 2011年11月13日 (日) 03時28分

カネボウの元株主で買取価格を争ったものです。
ご存知のようにカネボウは粉飾決算により上場廃止になり事業譲渡等で消滅しました。その際会社に買い取り請求をしその価格を争いました。(一会員としてですが)
まず、私はまったくの素人ですので、まちがった点や認識不足の点等があると思いますが、お許しください。

今回のオリンパス事件の中にカネボウ事件で問題になったことがいろいろ含まれています。
まず上場廃止問題です。問題があった場合上場廃止となり株主責任を取らされる点です。株主責任はわかりますが、犯罪当事者以外各関係者のなかで金銭的に株主が一番損害をうけ関与の割合を考えると重すぎると思います。(もちろん今後他の企業に問題を起こさせないようにするため非常に厳しい処罰になっているのはわかっています)
次に、評価書の問題です。オリンパスが国内3社を買収した際の評価書がとんでもない評価になっているようですが、カネボウの際M社の評価書にもとずいてカネボウ側が買取価格を決めてきました。これも株主側からみるととんでもない評価で数字を2~3箇所いじる(現実的や現在標準とされるものにかえる)だけで約10倍にもなります。
このようにとんでもない評価をした専門家に対して法的や金銭的に制裁はできないいものかと思います。
次に専門家の出したものに文句がいえない追認する点が、上げられます。
O社の場合、以前に第三者委員会に一連の買収にお墨付きを与えると取締役会、監査会等で問題なしとされた。
カネボウの場合裁判所が改めて評価のしなおしを公認会計士に依頼しました。その評価に対してもいろいろ問題がありましたが、裁判所は一切認めずその評価を追認しました。
この評価のコストについても数千万(4~5千万だったかと)とられています。どなたに依頼するかが問題でコストについては依頼した公認会計士いい値になっています。せめて相見積もりしてほしいものです。
これもオリンパスがアドバイザーのコストに3割払っても問題ないといわれるぐらいに専門家のコストがよくわからないのではないでしょうか?

素人から見た場合、全体として専門家(公認会計士、弁護士など)がOKをだすとなかなか問題を指摘できない、間違った場合(意図の場合も含め)の処分罰則がゆるい、コストが不明確だと思います。

オリンパスの場合内部告発事件で、医師・弁護士の問題を裁判で指摘されていますが、これらの専門家にはペナルティはないのでしょうか?

投稿: カネボウ | 2011年11月13日 (日) 12時31分

会計関係者の方々のご苦労は、私のような素人の想像の域を越えているようで、各種の稚拙なコメントは「小僧の戯言」を切捨ていただければ幸いです。

ただし、その小僧の感覚として、やはり、専門職たる会計士への社会的要請(期待)として、「今以上のご活躍」は確かに存在するのではないでしょうか。
少なくとも現状の監査法人の交代の際に、意見の衝突が推察される事例における「旧監査法人側の特段のコメントなし」の姿勢や、「限定付適正意見のあまりに活用されていない」現状は、自ら専門職として社会経済的価値を毀損しているように見えます。
(「良いか悪いか」また「同種かどうか」は別として)職業としての医師の方が、よりその職責を全うしている(させられている)ようです。

投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2011年11月13日 (日) 16時36分

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