オリンパス元役員の一言と役員間における「異常な兆候」の共有
10月28日にBDTI(公益社団法人会社役員育成機構)主催のセミナーにて、ダスキン事件を題材に、「社外役員のひとこと」と取締役の善管注意義務についてお話いたしました。違法添加物が混入した肉まんを売り切ってしまった、という不祥事に関する中間報告書が役員会に提出された際、社外取締役のおひとりが代表取締役らに対して「今すぐに不祥事を公表すべきだ」と進言したのでありますが、結局何も決定せず、そのまま放置していました。裁判所(大阪高裁)はこの状況について、「このような社外取締役の進言にもかかわらず、何もしないということは、消極的に隠ぺいすると決定したに等しい」と判断しております。
(連日、この話題ばかりで恐縮ですが)本日(11月14日)のオリンパス事件に関するNHKの報道によりますと、国内3社の買収価格が異常に高いのではないか、と当時の取締役のおひとり(常務取締役)が疑義を呈し、他の役員も同調して「おかしいのではないか」との声が上がったそうです。しかし、「これらの企業の将来価値は非常に大きなものだ」との意見が強く、結局のところは強くは反対できず、買収に賛成してしまったとのこと。なるほど、例の監査役会による第三者委員会設置の決定は、最初から出来レースだった、というものではなく、実際に取締役会で疑義を呈する取締役が何名がいたから・・・・ということだったのかもしれませんね。
しかしそうなりますと、つぎに「異常な兆候」理論が問題になるかと。取締役の監視義務の問題なのか、経営判断の前提となる事実認識の不注意に関する問題なのかはまだ整理できておりませんが、いずれにしましても当時の役員の方々から疑問の声が上がったということは、当時の取締役、監査役の人たちのなかでも「異常な兆候」が共有されていたことになります。「異常な兆候」に触れた役員は、たとえその「兆候」から損失隠しの事実を知ることが困難だとしても、役員の行為規範として、自ら調査する、専門家の意見を聞くなどして、その異常の原因を発見する努力を行う義務があるのではないかと思われます。なかでも、そういった経営判断に疑義が呈された役員会において、当時3名いらっしゃった社外取締役の方々が、どういった意見を述べられたのか、ただ黙っておられたのか、とても興味があるところです。
さて、社外取締役に関連する話題でありますが、私もフォーラムに参加しております上記BDTIにおきまして、11月28日、第4回のセミナーが開催されます。このところ、私も非常に関心のあるテーマが続いておりますが、今回は「日本企業の主要な投資家と議決権行使~ISSの考え方、背景、現状、これからの方向性」と題するものでして、議決権助言会社の基本的な考え方を知るうえで貴重な機会ではないかと思います。WEBから引用しますと、
内外の機関投資家は、背後にいる出資者の利害を考える責務があり、株式投資に伴う議決権の適切な行使は、その重要な要素となっています。 今年の株主総会での議決権行使の結果をみると社外取締役・社外監査役の独立性を求める声が強くなっていますが、それにはこうした変化が背景にあると考えられます。しかし、海外機関投資家のすべてが日本企業のコーポレートガバナンスや株主総会議案、役員の構成、報酬などについて詳細な知識があるとは限りませんし、分析や意見形成に使える時間は限られています。このため、海外機関投資家は議決権行使のアドバイスを専門とする会社の助言を参考とすることが一般的になっています。
このセミナーではISSにて日本企業の株主総会議案の調査を統括する石田猛行氏をお招きしISS社の議決権行使についての基本的な考え方、今年の株主総会の結果を踏まえた現状での判断、そして今後の基準や方針変更の方向性についてお話いただきます。
ISS(インスティテューショナル・シェアホールダーズ・サービシーズ株式会社)は、この分野で世界最大手で、最も高く信頼される助言会社の一つです。数多くの海外機関投資家がその助言を重視して総会議案への判断を行うといわれています。
とのこと。やはり社外取締役の独立性についてはISSさんも関心が高いものと思われますので、上手な株主対応を検討しておられる企業の方々には参考になるところが多いかと。また、東証からも上場部長さんが講演される予定です(場所は六本木ヒルズ内にあるTMI法律事務所ということだそうです)議決権助言会社の存在感が高まりつつある今、非常にタイムリーな話題かと思いますので、ぜひ多数の皆様にご参加いただければ、と思います。
| 固定リンク
コメント