オリンパス大株主による取締役会議事録閲覧・謄写請求
オリンパス社の大株主であるサウスイースタン・アセットマネジメント社が、過去の企業買収時にオリンパス社がFAに支払った報酬額が異常に高額であるとして、過去の取締役会議事録の開示を求めている、とのこと。10月20日の時点で取締役会議事録の閲覧を求めたところ、オリンパス社側より拒否されたことから、サウス社としては法的な手続きによって閲覧等を求めることも検討していると報じられております(たとえば読売新聞ニュースはこちら)。
いわゆる会社法371条に基づく(株主の)取締役会議事録等の閲覧・謄写請求権の行使に関するものでして、株主は原則としていつでも議事録等の閲覧・謄写を会社に請求できるわけですが、監査役設置会社の場合には(そもそも業務検査権限を有する機関である監査役が存在するわけですから)裁判所の許可を得た場合にのみ、株主は閲覧・謄写請求を行うことができます。つまりオリンパス社の場合には、監査役会設定会社ですから、株主が議事録等を閲覧したい場合には、裁判所の許可が必要ということになります。ただし、私が以前経験した事例では、裁判所の許可がなくても会社側が任意で開示することは可能ですので(その場合は申立の取下げで終了)、和解的終結ということもあります。
許可を求める株主側としては「株主なんだから取締役会議事録の閲覧を許可せよ」といった簡単な手続きで閲覧が認められるものではありません。会社側が開示を拒否した場合には、商事非訟事件として、株主は審問手続きのなかで具体的な「議事録閲覧・謄写」の必要性を疎明しなければなりませんし、会社側も取締役会議事録が開示されることで(企業秘密の毀損等)会社に著しい損害が生じることを疎明できれば開示は認められません。
そもそも元社長さんが不透明なFAへの報酬支払を問題化して解職されたこと、一定の情報開示後も、内外のマスコミがオリンパス社の企業統治に大きな疑問を投げかけていることからしますと、大株主は私的な利益を求めて、というよりも株主として取締役らの責任追及のための資料として取締役会議事録を閲覧・謄写請求を行う、といったところでしょうか。しかし、過去のFAに対する報酬支払の経過については、オリンパス社自身も「第三者委員会を設置して真実を解明したい」と述べているのでありまして、サウス社のほうも、27日付のニュースが報じているところでは、第三者委員会のメンバーを一名推薦した、ということであります。そもそも厳格な業務監査が期待できない場合に、株主の権利行使を認めるわけですから、権限行使の必要性が(株主側に)認められなければなりません。当面は(事実解明を第三者委員会に委ねる、とのことですから)「株主による閲覧・謄写を認めるべき必要性には乏しい」といったところではないかと。
問題は、このままオリンパス社が第三者委員会を設置できずに、もたもたしておりますと、いよいよオリンパス社と大株主との間で法的紛争が発生してしまう可能性がある、ということですし、取締役会における会議の内容次第では、裁判所による閲覧・謄写等の許可がおりる可能性も結構高いのではないでしょうか(あくまでも個人的な感想ですが)。
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