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2011年12月 9日 (金)

会社法改正試案(パブコメ案)が公表されたようで・・・

まずはお礼ですが、一昨日のエントリーにはご意見ありがとうございました。ご異論、ご批判もあろうかとは思いますが、これまであまり議論されていなかったことに、関心を持っていただけるのであれば幸いです。法解釈もさることながら、監督官庁と監査法人の在り方といいますか役割分担のようなことについても考えるきっかけとなりました。

残念ながら、相変わらず「オリンパス甲斐中報告書」は通読できておりません。ブログ管理人としては(話題についていけてないようで)フラストレーションがたまっております。事実関係については報道されるところで内容を知る程度ですが、街の議論を漏れ聞くところでは、やはり監査法人の対応に関する記述はいろいろとご意見があるようです。ホント、日本の大手監査法人はどうなってしまうのでしょうね?新日本さんの動きなどをみると、もはや有事対応です。

こちらも注目ですが、会社法改正試案(今後パブリックコメントを募集する案)が法務省のHPで公表されました。社外取締役義務化、監査・監督委員会制度については既に取り上げていますが、監査役の監査機能強化が試案に盛り込まれています。

会計監査人の選任・解任権、報酬決定権の(監査役への)付与につきましては、かねてより会計士協会が(会計監査人の独立性に資するものとして)改正の要請を出していたところでありますが、もうひとつの「監査の実効性を確保するための仕組み」のほうは、会社法制部会の早い段階から築館元監査役協会会長が強く主張していたところです。監査環境を整備するための具体的な内容は未定ですが、監査役さんが監査権限を行使しやすいようにするための改正、ということであれば大いに賛成するところです。

とくに内部統制の運用状況の概要を経営執行部が事業報告で開示することが義務化されるのは、監査役による内部統制監査の実効性を高めるためには大きな前進かと。すでに監査役監査基準のなかでは、積極的に運用状況を監視検証して、問題点があれば(取締役の善管注意義務となる事実が判明すれば)監査報告に盛り込むことが「ベストプラクティス」とされています。現実に真面目に取り組んでおられる会社もあると思います。しかし、内部統制の運用状況に関する相当性審査を会社法(会社法施行規則)で明確にすることは、経営執行部にとっても、監査役にとっても企業の内部統制を構築するインセンティブを高めることになると思います。

最近の企業不祥事で問題となった「監査役と会計監査人の連係」、監査・監督委員会設置で必要性が認識されるであろう「監査役と内部監査部門との連係」あたりも、監査役が既存の権限を行使しやすい環境作り・・・・という視点で議論が進化していけばいいなぁと。あと、大王製紙事件でも問題となりましたが、グループ企業としての内部統制構築に向けて、たとえば親会社監査役と子会社役員とのコミュニケーションの在り方などについても前向きに検討されることが期待されます。

さて、法制審の議論がこのあたりまで進んできますと、委員や幹事の皆様の間で「会社法と自主ルールとの棲み分け」に関する共通認識もできてくるのではないでしょうか。「これは法律の改正という点では見送るけど、とりあえず取引所ルールの行動規範で取り入れて、しばらく運用をみたほうがいいのでは」「行為規範としては無理そうだけど、開示ルールのなかに取り入れて、Comply or Explain approach で事実上強制すればいいのでは」「特設注意市場銘柄制度があるんだったら、とりあえず要注意銘柄だけに行動規範として取り入れてみては?」といった認識です。最近の会社法改正論議は、開示規制やソフトローの動向にも影響を与えるものと私は考えています。

また、パブコメの動向もさることながら、(先日も少し書きましたが)民主党、自民党のWGの動きが気になるところです。会社法制部会の議論よりも、もう一歩進んだ独自案が出てくるかもしれず、このパブコメ案で全体像が見えてきたような気でいると錯覚を起こしてしまうかもしれませんので要注意かと。

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