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2011年12月22日 (木)

独立役員の独立性担保と開示規制(上場ルールの改定)

今年もクリスマスの季節となりました。おそらく22日が忘年会のピークで、明日からの3連休はクリスマスモード一色となるのでしょうね。

昨日(12月20日)の東証社長さんの定例記者会見(会見要旨はこちら)によりますと、巨額損失隠しが発覚したオリンパスや大王製紙の事件を背景に、上場会社のガバナンス(企業統治)に対する国内外の投資家の不信が高まっていると判断したため、社外取締役や社外監査役といった独立役員の開示情報を拡大する方針を決めたそうであります(サンケイビズニュースはこちら)。ニュースには出ておりませんが、上記会見要旨によると内部統制システムに関する開示規制も検討されるようです。

独立役員の出身会社と当社の取引関係や、役員の相互派遣関係等、本来独立役員に求められる行動が期待できるかどうか、という点を投資家が判断する材料を提供する、ということかと思います(すでに任意に情報開示している企業もありますが)。おそらく「独立役員」として届出のある役員の方のみを対象としたものだと思いますが、どうも中途半端な制度改革のような気がいたします

たとえばオリンパス社の場合、社外取締役と社外監査役を含めて5名の社外役員がいらっしゃいますが、実際に東証に独立役員として届け出られているのは社外監査役の方1名だけです(ルールだと1名以上の届出を義務付ける、となっていますので)。その方だけを開示したとしても、あとの4名の社外役員の方々は「どういった経緯で役員に就任されたのか」ほとんど不明なままであり、結局のところ一番利害関係がなさそうな方だけを独立役員として届け出れば済む問題かと(実際、東証社長さんの会見によると、オリンパスの他の社外役員の方々は、利害関係の深い会社や組織のご出身のようです)。本当に開示制度を拡充するのであれば、「独立役員制度」とは別に、会社法上の社外役員として就任している方すべての情報開示を求めるようなものでないと投資家の判断材料にはならないのではないでしょうか。

こういったことを申し上げると、またお叱りを受けるかもしれませんが、そもそも社外役員に独立性を担保する開示制度を作ったとしても、あまり高い期待は持たないほうがよいわけでして、あくまでも「社外役員の倫理観」を横からサポートする程度・・・・・と考えたほうが妥当だと思います。「独立役員」といっても、日本には「社外役員バンク」なるものが整備されているとは思えません。もちろん全国社外取締役ネットワーク(もうすぐ名前が変わりますが)や日本監査役協会の紹介制度がありますが、やはり知り合いの「紹介者」を通じて役員に就任するケースがほとんどではないでしょうか。

「俺の顔をつぶすなよ」

といった形で、お世話になった方から紹介を受けた会社において、どれだけの社外役員の方々が会社もしくは経営陣にモノが言えるのか。社長と喧嘩して、後ぐされなく辞任することは特に問題がないとしても、自分を役員として紹介してくれた人と、その会社との関係を考えると、どうしても「株主の最大利益のため」という気持ちが萎えてしまうのが「サラリーマン根性の集大成」ではないでしょうか。最近の60歳前後の方々は、まだまだお若いです。これからの人生のために、これまで築いてきた人間関係を御破算にするにはまだ早いのが現実であり、「ここはグッとこらえて」と考える方も実際には多いように思います。

実際、社内取締役だけで固めた役員会でも、社長にモノが言える人が多ければガバナンスはしっかりするわけでして、結局のところは、その社長さんの器量によるところが大きいのではないかと。そう考えますと、社外役員の独立性を開示する、ということは、社外役員の発言権への期待というよりも、「そのようなモノが言えそうな役員さんでウチは固めました」ということを世間に公表して、社長の度量を知ってもらう・・・・・というところに意味があると考えた方がよいのではないでしょうか。独立役員さんの属性を云々するよりも、むしろ広く社外役員さんの属性を開示して「社長の度量」を評価いただく制度運用が妥当だと考える所以であります。

12月 22, 2011 ディスクロージャー |

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コメント

 取締役や監査役の責務が重いということは、こちらでもしばしば触れられていますが、社外役員に就任にするにあたって、独立性が高い人、逆に言えば、社長の人柄も良く知らないし、どんな会社かもよくわかっていないという人は、怖くて社外役員になんかなりません。ま、オリンパスや九州電力くらいの規模の会社なら就任しちゃうかもしれませんが、マザーズクラスでは・・・。私が就任している場合も、個人的に社長を知っていて「この人なら、バカなことはしないだろう」と思える場合です。で、いざ就任した後、バカなことをしていた雰囲気を感じた場合、「あの人が解釈論などで是とされる余地が全くないようなバカなことをするだろうか。もっと調べてからでないと動けない」などと躊躇するわけです。で、後から、社外役員がもっと早く発見していればなどと言われたりする。
 上場企業の社外役員をやり、かつ、小さな事故の1つ、2つを経験している人の意見も参考にしないと、身のある議論にならないような気がします。ついでに言えば、社外役員の構成比率が高まると、おそらく取締役会に上程する前に常務会などで大事なことは決まってしまって、取締役会が形骸化すると思います。

投稿: ひろ | 2011年12月26日 (月) 10時39分

ひろさん、貴重なご意見ありがとうございます。

「上場企業の社外役員をやり、かつ、小さな事故の1つ、2つを経験している人の意見も参考にしないと、身のある議論にならないような気がします。ついでに言えば、社外役員の構成比率が高まると、おそらく取締役会に上程する前に常務会などで大事なことは決まってしまって、取締役会が形骸化すると思います。」

私も痛感するところです。
そういった社外役員の意見を生で聴ける場として某研究会を開催しています(守秘義務が課されておりますが)。やはり事件の近くにおられた役員や社員の声を聞くことはとても大切です。誰かがボランティア精神で、積極的に、このような場を設けることが必要と感じます。

後半の部分も今後の課題ですが、活字フェチ弁護士さんがご自身のブログでお書きになっているように、今後社外取締役の構成比率の問題は、取締役会の役割(たとえばモニタリングモデルへの変更等)とリンクして検討されていくのではないでしょうか。形骸化することは、社外役員の成り手がいなくなることとも関係しますので切実な問題かと思います。

投稿: toshi | 2011年12月28日 (水) 11時48分

あけましておめでとうございます。
投資家側の人間としては、独立役員制度には困っています。
斉藤社長は「独立役員が(中略)独立性に、外観上、一定の疑いがあるような場合には、株主や投資者が、そのような事実関係を把握した上で議決権行使や投資判断をすることが肝要ではないかなと思っております。」と述べているようですが…
しかし、だれが独立役員なのか半数近くの招集通知に記載されず、独立役員届出書を東証で縦覧できるようになるのが総会の1週間前という現状では、総会の7~10日前が議決権行使の〆切である機関投資家にとっては独立役員が誰なのかを念頭に議決権行使をすることは不可能なのが実状です。

投稿: ty | 2012年1月 4日 (水) 10時52分

tyさん、こちらこそ本年もよろしくお願いいたします。
今日(1月4日)の日経ニュースにも少し本件に関する報道が出ていたようですね。
tyさんのようにきちんと実務をフォローしておりませんでしたので、ご意見、参考にさせていただきます(ありがとうございました)。ご指摘の点は非常に問題かと。こういったことは上場ルール(行動規範よりも開示ルールですね)のなかで考慮されないのでしょうかね?

投稿: toshi | 2012年1月 4日 (水) 12時01分

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