クラウドゲート社(架空循環取引)のハイレベルな第三者委員会報告書
本日はオリンパス、大王製紙の決算報告の話題でもちきりの一日でした。各社の第三者委員会や特別調査委員会の報告書も話題となりましたが、それらの報告書にも負けない、いや、もしかしたらオリンパス報告書よりも秀逸な第三者委員会報告書が昨日(12月13日)リリースされております。
第三者調査委員会報告書の受領に関するお知らせ(クラウドゲート社)
札幌アンビシャス上場のクラウドゲート社(デジタルコンテンツ製作 旧商号 テラネッツ社)が、経営トップ主導による架空循環取引を繰り返し、約4年にわたり不適切な会計処理を行っていた件につきまして、弁護士委員2名、公認会計士委員1名による調査委員会が調査結果を報告したものであります。これまでの事実経過と当社の内部統制における欠陥の有無について検討することが主たる目的とされています。
まず役員の変遷表。これは多年度にわたり会計不正事件が繰り返されていたときの関係者説明図のイロハであります。つぎに実際に関係者によって行っていたとされる架空循環取引のパターンを図式化し、読み手に経済的合理性のない取引であることを説明。この部分が非常に秀逸。多少の会計知識は必要ですが、複雑な循環取引を手際良くまとめておられ、だれにでも会計不正の内容が理解できるようになっております。整理されたパターンごとに、不正事実が認定できたものと、合理的な疑いが残るものを区別して結論つけているところも参考になります。
そして各循環取引がどのような目的で行われたのか、①上場準備段階で首尾よく上場審査をパスするため、②銀行からお金を借りる場面において、自社の業績を良く見せるため、そして③業績とは関係なく、上場時においてお世話になった人(迷惑をかけた人)たちへの損失補てんのため、と分けて、それぞれに詳細に認定事実を報告するところは調査活動が効率的かつ効果的であったことを物語っております。これまで100を超える調査報告書を読みましたが、おそらくトップクラスではないかと。
「こりゃスゴイ・・・」と思って委員の方々の経歴をみて納得。弁護士委員のおふたりは、つい最近まで証券取引等監視委員会の検査官として会計不正事件の第三者委員会報告書を読んでおられた方々なのですね。また会計士委員の方も、上場サポートをされておられる方で、IPO実務に精通されておられるようです。おそらく開示検査において「もっとこんな風に報告してくれたらいいのに・・・・・」と思いながら審査をされていたものと推測され、そのご経験が結実したのが上記報告書かと。別の味方をすれば、会計不正事件を審査するにあたり、当局はこんなポイントを重視しているのですよ・・・ということを理解するにあたり、とても参考になる報告書であります。
オリンパス甲斐中報告書を少しずつ読み進めておりましたが、ちょっとこっちの報告書も研究の対象としては素晴らしく、日常の仕事には参考になりそうであります。アンビシャス上場会社というと、ちょっと地味かもしれませんが、架空循環取引の内容としては典型的なものであり、経営トップが不正に手を染めていく経過がよくわかります。企業実務家の皆様方にも、ぜひご一読いただきたい報告書であります(でも、この事件に登場する社外取締役の方もオリンパス事件と同様、すこし私を憂鬱な気分にさせてしまうのですよね・・・・・・)。
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