« 九州電力社の企業統治と「物言わねばならない」監査役 | トップページ | 「コンプライアンス改革」の課題と処方箋(NBL2012年新年号) »

2011年12月27日 (火)

組織ぐるみの会計不正に立ち向かう社外監査役の事例(共同PR社)

(12月28日 追記あります)

昨日(26日)九電の取締役会招集に関するエントリーを書きましたが、驚くことに、昨日臨時取締役会が開催され、その後の記者会見にて、社長さんは1~2か月後には辞任することを表明されたそうであります。会見では「やらせメール事件のめどが立ったため」とのことだそうですが、おそらく「物言う監査役」さんの存在も大きかったことと推察いたします。

さて、年の瀬も迫った26日、しかも午後9時前の適時開示として、ひさしぶりの「物言う監査役」シリーズにふさわしい事例がJDQ上場企業より公表されております。

危機管理広報、IR等のコンサルティングを業務とされる共同PR社(JASDAQ 2436)は、代表取締役が会社資金を自己目的で不正に流用しているとして、監査役を中心とした調査報告書を適時開示として公表しております(「危機管理広報、IR支援」を業務としている当社ですが、なぜか自社HPにはリリースがされていないようです・・・)。←27日の時点で自社WEB上にリリースが掲載されております。

取締役会への内部調査報告書の提出について

先日の週刊東洋経済による当職へのインタビュー記事でも、また当ブログのエントリーでも述べましたように、経営者の関与する不正は「ガバナンス+内部通報」の組み合わせが機能しなければ発見は困難でありますが、本事例はまさに監査役に対する内部告発と社外監査役3名を中心とした徹底調査によって経営トップおよび他の取締役2名が関与する資金流用事件を解明したものであります。

とくに本件では「物言う監査役」として社外役員が中心となっておりまして、「結論」として40年にわたり君臨してきた現社長の辞任要求、不正に加担した取締役2名への辞任勧告、他の取締役に対して上記3名への懲戒処分勧告や刑事訴追要求など、毅然たる対応が印象的であります。ここまで徹底して経営トップの不正を社外監査役が糾弾するのは、あのなつかしい太陽誘電社の事例(温泉コンパニオン交際費事件)以来ではないかと・・・・・(あのころは、当ブログも勢いがあったような気がします・・・(^^;;  )。太陽誘電社のケースでは、温泉コンパニオン宴会を知った関連子会社の社員による内部告発が発端でありましたが、今回の例では、やはり社長に不正加担を命じられた社員が社外監査役にSOSを送ったものと推測されます。

当調査委員会は、今後の外部第三者委員会による事実解明も求めております。これは社内における派閥争いなど組織力学による調査結果ではないことを内外に示すためにも必須だと思いますし、なにより「自浄能力があること」をステークホルダーに説明するためにも必要な対応であります。したがいまして本格的な事実調査はこれから、とも思われますが、「内部通報+ガバナンスが経営者不正の抑止に効果的」という、典型例としてご紹介させていただきます。

(28日追記)このエントリーを書いた日のニュースによりますと、本報告書の提言に基づき、代表者が辞任を発表した、とのこと。すでに自社WEB上でも公表されておりますことを付言いたします。

|

« 九州電力社の企業統治と「物言わねばならない」監査役 | トップページ | 「コンプライアンス改革」の課題と処方箋(NBL2012年新年号) »

コメント

ちょっと、質問させていただきたのですが、
オリンパスもかかる、かかからないか

過去に某粉飾決算で風説の流布といって叩かれた企業があるが、
フジテレビでも木村、安藤、滝川の報じた内容は、
フジテレビ自体が、風説の流布と思われ、
むしろ、フジテレビの株主に影響していたとも考えられるが

なぜ捜査サイドは動かないのでしょうか?

投稿: 通りすがり | 2011年12月27日 (火) 23時06分

お久しぶりです。
共同PRは私の主力投資先の1社であり、ゲオに続いて不正が明るみに出るとは驚きました。
投資判断が甘いと言われればその通りなんですが、過去3年間共同PRの株主総会にも参加しているので、私のブログでも今回の問題の感想をまとめてみました。
http://sokai.seesaa.net/article/243193450.html

ご指摘の通り、社外監査役がここまで毅然とした態度で報告書をまとめるとは素晴らしいですね。
今後ともよろしくお願い致します。

投稿: Zaimax | 2011年12月28日 (水) 21時32分

Zaimaxさん、どうもです。
そちらのブログ拝見しました。長年共同PR社の株主総会に出ておられるだけあって、各取締役の人物像も表現されており、さらに中身が詳細かつ分析的でおもしろいです。ちょっと私とは情報の面において差がありますね。参考にさせていただきます。
といいますか、本日、第三者委員会のメンバーが決まったようですね。

投稿: toshi | 2011年12月29日 (木) 16時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 組織ぐるみの会計不正に立ち向かう社外監査役の事例(共同PR社):

« 九州電力社の企業統治と「物言わねばならない」監査役 | トップページ | 「コンプライアンス改革」の課題と処方箋(NBL2012年新年号) »