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2012年1月19日 (木)

サラリーマン根性とコンプライアンス意識の統合について

私が司会をいたしましたNBL(商事法務)新年号「コンプライアンス改革」座談会の記事につきまして、お読みになられた川井信之弁護士が、ご感想をブログに書いておられます。こういった感想は、辛口のほうがありがたいわけですが、座談会に出席された増田英次弁護士のご意見に関心を寄せておられます。以下、川井先生のブログからの引用ですが、

増田先生は、法令遵守に関しては、表面上の遵守に留まるのではなく、無意識のレベルまで変える(マインドを変える)ことが重要と唱えられており、こうした無意識を変えるためには、「臨場感を上げる」(他人事ではなく、自分のものとして捉える)ことが大事だ、とおっしゃられています。
 そして、臨場感を上げるためには、具体的には、「正しいことをしたらどんな利益があって、自分にどんな満足感があるのかというのを多くのビジネスパーソンが肌でもって体験する」ということが必要だ、と発言されております。(同記事67~68ページ)

この増田弁護士のご発言は、私も司会をしながら、とても感銘を受けたところでした。

ところで、本日、私が代表を務めます関西CFE研究会(関西不正検査研究会)の今季、最後の研究会が開催されまして、オリンパス事件の報告書に出てくる「悪い意味でのサラリーマン根性」って一体どんな意味なんだろう?という話題が出てきました。30名ほどの出席者の中でも一番若い(たぶん)30代前半の某上場会社の内部監査部門の方が、曰く

ちいさな組織で、全体が見渡せる職場のときは、自分の仕事が社会の役に立っているかどうか、意識できたんです。でも、組織が大きくなって、自分の仕事の専門性が高くなって、そのうち細分化された仕事を毎日こなしているうちに、仕事を達成する満足感が感じられなくなり、会社の仕事と社会のつながりとのイメージが湧いてこなくなってくるんですね。だから、大きな職場の社員は、もう内部通報制度なんかがあったとしても、とくに通報しないといけない・・といったイメージがなくなっちゃうんですよ。

この意見、私はなるほど・・・と納得いたしました。結局、大きな組織の中で、ご自身のパートをせっせとこなしておられる社員の方々は、「正しいことをしたらどんな利益があって、自分にどんな満足感があるのか、肌をもって体験する」ことができなくなっているのではないでしょうか?昨日コメントをいただいた「法務担当」さんのご意見なども、やはりこのような実感につながるものがあるように感じました(この法務担当さんのコメント、私はずいぶんと心に響きました)。私はこのあたりの問題意識のなかに、マインドから変えていくコンプライアンス改革のヒントがあるように感じた次第です。不正のトライアングルでたとえるならば、私なんかは「機会」の喪失に向けた処方箋を描くわけですが、増田弁護士は「動機」や「正当化根拠」の喪失に向けた処方箋を描く、ということになるのでしょうね。

余談ですが、増田英次弁護士は私と同期(42期)です。企業コンプライアンスを語る弁護士にふさわしい経歴の持ち主ですが(西村総合➔海外留学➔メリルリンチ法務部長・同執行役員➔LLM➔独立)、私生活においてたいへんつらいご経験をされたことが、「社員にやさしいコンプライアンス(コーチング理論)」を提唱・実践されている根源にあるのではないかと(勝手に)推測しております。某著名グレー企業の顧問弁護士➔債権者破産➔失職➔今までの反動でコンプライアンス部門へ転向、という私の経歴とえらい違いです(ToT)/

1月 19, 2012 未完成にひとしいエントリー記事 |

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コメント

山口先生、ご無沙汰しております。
私の拙い(というか、私自身は実質的に何も言っていない…)ブログ記事をご紹介頂きまして、誠にありがとうございました。大変恐縮しております…。
ただこの問題は、私なりの拙い理解では、増田先生のお考えを踏まえて更にどう具体策を採るかのところも(というより、まさにそこが)、本当に難問なんだろうだと思っております。まあ、具体策は個々の企業ごとに違ってくるのだろうとも思いますが…。
引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。

投稿: kawailawjapan | 2012年1月19日 (木) 12時05分

川井先生、ごぶさたしております。
あの座談会で、「お!」っと気づいていただきたかったところに触れておられたので、思わず引用させていただきました。
おっしゃるとおり、具体策は難問であり、提案内容次第では、笑われてしまうかもしれませんが、長くコンプライアンスに携わっておられる法務の方々のなかにも賛同していただけるかもしれません。決して即効策はないかもしれませんが、また具体策を検討できましたら、少しずつではありますが、持説を披露していきたいと考えています。

投稿: toshi | 2012年1月20日 (金) 01時51分

山口先生

NBL座談会の際には大変お世話になりました。また、このたび、ブログに取り上げて頂き大変ありがとうございました。

私のコーチング(研修)では、もっと大胆?に踏み込んで具体策を提言しています。まだまだ発展途上ですが、徐々に浸透しつつあるような手応えもありますので、トライ&エラーを重ねながら、がんばっていきたいと思います。

3月には、そのあたりをまとめた本を出版する予定ですので、また是非ご指導下さい。

引き続きよろしくお願い申し上げます。

投稿: 増田英次 | 2012年1月20日 (金) 10時16分

増田先生、こちらこそお世話になりました。「具体策」を提示することがコンプライアンス問題を進化させるためにはどうしても必要です。3月の著書も楽しみにしております。

投稿: toshi | 2012年1月26日 (木) 02時12分

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