厚労省「パワハラ・WG報告書」の活用方法について
厚生労働省から「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」が公表されております。「パワハラ」なる言葉が日本ではじめて作られたのが2002年ですが、そのわずか6年後には裁判上でパワハラの定義が示される、という異例のスピードで社会問題化した人格権侵害類型であります。
ただ、現実の企業社会では「俺だって若いころはこんな風にシゴかれたんだから、この程度はあたりまえ」といった風潮があり、あまり真剣に対応されていないところも多いのではないかと。まだまだガイドラインといいましても、抽象的な指針の範囲を超えておりませんが、まさにプリンシプルベースで策定して、個別具体的なパワハラ行動の指針は各社で検討すべき、というところではないでしょうか。
ただ、現実にパワハラ対策でむずかしいのは「パワハラには時間軸がある」ということです。
パワハラに「グレーゾーン」を作ってしまっては、熱心な上司による指導監督を委縮させてしまいますので、境界線を各社明確にすべき、というのは「平面軸」の課題。最初は真摯な気持ちで指導していたのですが、部下の態度が悪いために、次第に個人的な感情が出てきてしまって、いつしかパワハラになってしまう・・・これが「時間軸」の課題。問題解決のためには、この上司と部下の「どの時点での行動を捉えるか」をはっきりと定める必要があります。
そしてもうひとつむずかしいのが「誰から見たパワハラか」という問題。
パワハラ問題は、基本的に人格権侵害ですから、被害者と加害者との紛争としてみれば主観的要素と客観的要素の総合判断です。しかし問題解決を図る企業からみた場合、加害者との関係では(懲戒処分の対象ですから)客観的な要素を重視、つまり明確な証拠に基づいて判断しなければなりません。また、被害者との関係でいえば、不法行為(使用者責任)や債務不履行(職場環境配慮義務違反)で訴えられる可能性がありますので、いわば内部統制の構築が問題となります。パワハラ問題を解決するにあたっては、何を解決しなければいけないか、というレベルにおいて、同じように「無視する」という行動にターゲットを絞ったとしても、これを認定するために問題となる事実に違いが生じることになります。
こういった視点はあくまでも企業のリスク管理の視点ですから、パワハラと企業の経済的損失、メンタルヘルス、人事政策など、違った視点に立つと、それぞれ検討すべき課題が変わってきます。パワハラには全社的取組、外部専門家との連係が必要とされる所以であります。
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