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2012年1月26日 (木)

二次不祥事を「自社で公表すること」と「不意に見つかってしまうこと」

つい先日、コンプライアンス研修でおじゃました某社の件、やはり残念な結果となりました。用地買収にからんで、採石会社との間で立退き交渉を担当していた社員が所得税法違反ならびに詐欺罪で起訴されていた事件でありますが、当社員が逮捕された時点では「会社は裏取引の事情は一切関知していない」と全面否定し、各報道機関も「組織ぐるみでは?」と疑いつつも会社側の主張を尊重しておりました。

しかし昨日(1月25日)日経、毎日、読売等が報じるところでは、当社員の第二回公判における検察冒頭陳述で、同社が(当社員と採石会社との間における)裏取引の事実を知りながら、ゼネコン等を通じて(裏取引の一部を履行するため)この採石会社に便宜を図っていたことが公表された、とのこと。日経記事では、具体的にこの採石会社をゼネコンの下請けとして使うよう、強くゼネコン側に要求していたことまで記されております。検察側の冒頭陳述の内容から、会社側の事件への関与が公表されてしまう・・・というのは、事実無根だと反論したり、無視するわけにはいかないため、会社側としても非常にキビシイ状況かと思います。

研修講師としてお招きいただきながら、たいへん失礼かとは思ったのですが、その当時同社幹部職の皆様方の前で私は、

先日の事件ですが、会社の皆様方も知っておられたのではないですか?だって、誰でも尻込みしてしまう仕事(採石会社との立退き交渉)を彼(被告人)が、その特異なキャラクターをもってやっていたわけで、彼が「やりたい放題」やっていても、代わりの社員がいない以上、黙認せざるをえなかったのではないですか?彼だって「文句があるなら告発してもいいよ。でも、この仕事、いったいほかに誰ができる?」みたいな行動をとっていたのではないですか?会社にとって用地買収は避けられない仕事。その重要な仕事を彼以外に代替できない・・・ということで、おかしなことをやっていても「しかたがない」で済ませていたのではないですか?

と申し上げました。(当時、ご担当者の方から、ぜひ事件についても触れてほしい、との要望がありましたので、私の率直な感想を述べました。もちろん、みなさんシーーーーンとされておりましたが。)昨日のニュースを読み、やっぱりなぁ・・・といったところですが、「組織の認識の有無」は、被告人の犯行の重要な背景事情になるわけですから、こういった形で表に出てくることはどこまで会社として予想されていたのか、そのあたりがとても知りたいところであります。担当社員の違法行為が「一次不祥事」であれば、組織が裏で便宜を図るのは「二次不祥事」でしょうし、かつマスコミからの問い合わせに「裏の確認書の存在は一切知らない」と言い切ってしまったのは「三次不祥事」に該当します。

この「二次不祥事」はまだ企業の性格からして、(もちろん悪いことですが)用地買収を進めるうえでやむをえなかった行動、ということで同情の余地があるかもしれません。しかし問題は「三次不祥事」(マスコミからの追及に対して虚偽説明をしてしまう)であります。会社側は「現在調査中」とのコメントを出しておられますが、昨年11月当時、あれだけマスコミが「組織ぐるみでは」と質問責めをしているなかで否定をされていたわけですから、どうにも始末が悪い。有事に直面した企業の危機対応は、それ自体、企業の本当の姿を表すといえます。「これが企業風土」と言われても反論できないわけでして、そのあたりがとても残念なところであります。

「待ってました」とばかり各紙が報じるわけですから、これが一般の民間企業でしたら信用の著しい低下は避けられないところかと。傾く心配のない企業ですから、大事にはならないわけですが、できれば「四次不祥事」など発生しないような誠実な対応をとっていただきたいと願っております。

1月 26, 2012 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

その会社のHPを見ると本件の記者会見の内容が掲載されていますが、記者からの容赦ない質問と回答に窮する経営トップとのやり取りに臨場感があって、意外と透明性のある会社なのかもと思いました(厭味半分ですが)。
この仕事はこの人しかできないということで、誰もがやりたがらない仕事を押し付けてしまうと、結果的に不正の温床になってしまうのですね。しんどい仕事をしているから役得があってもしょうがないという風潮になるのでしょうか。ちょっと違う事例ですが、昔の総会屋対策の総務の渉外担当もひとたび担当してしまうとなかなかローテーションされない傾向があったようですが、こちらでもやってはいけないことが露見してしまえば、会社に与えるダメージは相当なものでしたね。
「余人を持って代え難い」とはある意味都合がいい言葉のようです。

投稿: KISE | 2012年1月26日 (木) 21時17分

 昔は、何かあっても(例え知っていたとしても)知らぬ存ぜぬで通せたのでしょうが、今は難しいのですね。

1.火のないところに煙は立たず
2.一つの事故に99の潜んでいるリスクがある
等々が経験則として語られている以上、何か端緒をつかんだら何が潜んでいるか分からず怖いけれども調査をすることがベストなのでしょうか。経営者は不祥事と正面から向き合うしかないのでしょうか。

 ちなみに、「余人をもって代え難い」とは、組織から見ると「後継者や代替要因を育てられなかった」というエラーの裏返しですよね。

投稿: Kazu | 2012年1月27日 (金) 11時29分

KISEさん、Kazuさん、ご意見ありがとうございます。

海外で公務員贈賄の嫌疑が生じた社員の処遇など、かなりむずかしいのではないでしょうかね?カルテルの違法性は相当程度浸透してきましたが、FCPAのリスクで「海外公務員への便宜を一切廃止する」ということは正直、むずかしいのではないでしょうか。
こういったことへの会社の対応は、社員の志気にもかなり重大な影響を与えるように思います。

投稿: toshi | 2012年1月30日 (月) 01時13分

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