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2012年1月30日 (月)

監査役とデジタルフォレンジック(セミナーのお知らせ)

日曜日(1月29日)の日経新聞ニュースに「情報隠しの検査強化 金融庁、消去メール復元できるシステム」と題する記事が掲載されており、銀行や保険会社の検査にフォレンジックを導入することが報じられております。検査妨害や忌避があっても、正確な電子情報を入手できるように、とのことで、会計不正事件などの第三者委員会などでも既に不祥事調査に使われていることも記されています。

携帯やパソコンのHD性能が飛躍的に向上したため、たとえ携帯メールやパソコンメールを消去しましても、「復元ソフト」によって復元できることは「大相撲賭博事件」➔「八百長事件」の騒動で広く知られるようになりました。しかし、昨年12月16日に公表されました株式会社ゲオ・ホールディングスの社外調査委員会報告書によりますと、社内調査を進めようとした第三者委員会は、すでに社員によって「復元を困難にするソフト」を使ってパソコン内のメールが消去されていたため、残念ながら(フォレンジックの専門家でさえ)復元ができなかった、とのことであります。つまり不正を行う者からすれば、すでに「消去メール復元ソフト」の存在は当たり前であり、その復元ができないようにするためのソフトを使ってメールを消去する、というのが恒常的に行われることになると思われます。

ただ、いくら復元を困難にするソフトを使ってメールを消去したとしても、そもそも「何を消去するか」はデジタルではなく、人の作業、つまりアナログによって行われるわけですから、そこには「消し忘れ」が発生します。現に、上記ゲオHDの社外調査委員会は、社員による復元ソフト防止の処理を忘れていた部分を見つけて、そこから重大な証拠メールを発見し、不明朗な取引に経営者が関与している事実を認定しました。

また、メール復元ソフトにせよ、復元を妨害するソフトにせよ、すべてのメーカーのPCに対応できているわけではありません。またアプリケーションによっては「文字化け」が発生してうまく機能しないこともあります。したがいまして、復元妨害ソフトによって首尾よくメールを消去したと思っていても、レベルの高い復元ソフトによって「あっという間に」復元できてしまうこともあります(要は技術レベルの高いほうが勝る、ということでしょうか)。最近は「メールが偽造されたものでないことの証明」なども訴訟で必要となってきておりますので、やはり社内調査や第三者委員会における調査技法として、今後もデジタルフォレンジックの必要性は相当に高いものとなることが予想されます。

さて、今年も2月8日の大阪を皮切りに、東京、名古屋、福岡におきまして、日本監査役協会主催のリスクマネジメントセミナーの講師をさせていただきます。今年は内部通報・内部告発への監査役さんの対応を中心にお話をさせていただきますが、とくに内部統制監査の対象としての内部通報制度の在り方、業務監査にける実査(往査)の対象としての内部通報制度の運用、そして内部告発によって不祥事が発覚した有事の対応等について、具体的な事例を用いて解説いたします。とくに上記ゲオHD社の事例のように、監査役に内部通報が届いたときに、監査役がどこまで調査をすべきか、どこから社外の第三者に調査を任せるべきか、その区別の基準や、監査役が知っておくべきデジタルフォレンジックの内容などにも触れております。監査役の身の処し方次第では、上記のとおり、調査の直前に社員によって証拠が抹消されてしまい、やむなく高額な費用をもって第三者委員会の調査に委ねざるを得ない事態となります。監査役による社内調査の方法やタイミングなど、実践的な方策について検討いたします。

内部統制監査実務に有益なのはオリンパス配転命令高裁判決(平成23年8月31日。これは東京地裁判決との対比で検討)、そして実査(往査)実務に有益なのは上記ゲオの一連の不正事件に対する社外調査委員会報告書(平成23年12月16日)、ということで、この二つにつきましてはじっくりと判例や報告書の内容を解説し、そして実務への影響について検討いたします。その他、オリンパス損失飛ばし事件、大王製紙事件、九電賛成意見メール投稿依頼事件、共同PR社事件なども含め、ヘルプライン+ガバナンスによって実効性ある不正抑止を実現する工夫(具体的な方法)について考えてみたいと思います。

さらに、会社法改正議論のなかでも、比較的改正が確実と思われる①事業報告への内部統制運用状況記載義務付け、②監査役監査の実効性確保のための報告体制の充実など、監査役の内部統制監査にとって影響が出てきそうな点もありますので、そのあたりを中心に解説をさせていただく予定です。

もうすでに満席となっております会場もありますが、日本監査役協会以外の非会員の皆様もご参加いただけますので(会員の方よりも、すこし聴講料がお高いですが)、管理部門の方で、聴講をご希望の方がいらっしゃいましたら、ぜひ日本監査役協会の研修セミナーのコーナーからお申込みいただければ幸いでございます。また多くの監査役の皆様とお会いできるのを楽しみにしております<m(__)m>

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