社外取締役導入の本来的意義を考える(SONY、nissenなど)
日経ヴェリタス最新号(2月25日号)59ページに、会社法改正に関連する記事「議論再開 企業側との妥協点は」が掲載されております。当該記事で、2月22日から法制審議会の議論が再開されたことを知りました(「再開」というのは、昨年12月に改正法の中間試案が出て、各界からの意見がとりまとめられ、これを参考に最後の詰めに入ったと理解しております)。再三申し上げますとおり、社外取締役導入の論議は昨今の社会情勢を反映して「企業不祥事防止」という点で語られることが多く、民主党や自民党のWTの提言趣旨も、そのあたりから「上場会社への導入義務付け(会社法改正もしくは取引所ルールによる)」の方向性を導いています。
ただ、社外取締役導入の本来的意義は(もちろんコンプライアンス経営の重要性を語ることも大切ですが)、企業価値の向上を目的とするところにあるわけでして、まさに本日(2月25日)の日経新聞で報じられておりますソニーの社長交代劇などが典型的な事例ではないかと思います。ストリンガー氏は2013年を目途に、段階的に新社長への権限移譲を計画していたそうですが、2月1日の非公式の社外取締役会議において「4月1日をもってすべての最高権限を新社長に移す」ことを決定、直後に結論をストリンガー氏に伝えると「全く抵抗せず、社外取締役の意見を受け入れた」とのこと。4期連続赤字のなかで、ストリンガー氏の構想は株主に説明がつかない、との意見が社外取締役の間では強かったそうです。まさに株主への説明責任を全うするという社外取締役の本来的意義が表面化した例ではないかと思われます。
なお、ソニーの取締役会議長である小林氏は、「15名中13名が社外取締役」というのは、少し多すぎるのではないか、(社内の経営情報が足りないので)もう少し社内取締役の比率を高めたほうがよいのでは、という意見を述べておられます。たしか2年ほど前に、ソニーでは6社以上の社外取締役を掛け持ちされている3名の候補者に一部の議決権行使助言会社から選任に反対意見が出されましたので、ご高名な方が多く、経営情報を収集する時間的余裕がないほどお忙しいのかも。そのあたりも少し問題なのかもしれません。ただ、ここまで本来的意義を実現できるのは、社外取締役が大半を占める取締役会が存在するからであり、今回の会社法改正の目指すところが実現したとしても、他社で同様の状況になることはないでしょうね。
また、社外取締役が半数を占めるカタログ販売大手のニッセン社(ニッセンホールディングス社)ですが、このところUCC社と資本・業務提携を発表し、同業のシャディ社をUCC社から買収、一気に売上2000億企業となるそうであります(もちろん市場はこれを好感しております)。「どんなに良い苗を見つけても、土壌が悪ければ育たない」という前社長さんのシンポでの発言が印象的でしたが、機動的な経営に社外取締役の方々がどのように関与されたのか、また伺ってみたいところです。たしかニッセン社も着物販売事業、金融事業の低迷で業績が落ち込んでいた時期に、過半数を社外取締役で構成するガバナンスへの転換を図り(現在は半数ちょうど)、経営判断のスピードアップ、カタログ販売への資源集中等の効率経営にまい進したものであり、業績を向上させてきた好例ではないかと。社外取締役がちょうど半分・・・という取締役会の構成は、本来的な意義を実現するうえで、かなりバランスが良いのではないでしょうか。もちろん、社外取締役さん方に情報を提供する等、社内の人的資源が必要になるだろうな・・・といった感覚は否めませんが。
ところで、ニッセン社は資本・業務提携の話題が先行しておりますが、次回の株主総会(12月決算 第42回定時株主総会)にて一部定款変更に関する議案が上程され、取締役会の議長は「社外取締役の中から選出する」ことになるそうです。先のソニー社の場合も取締役会議長は社外取締役の方ですが、社外取締役が議長として仕切るというのは、おそらく取締役会の雰囲気もかなり変わるものと思われます(とくに複数の社外取締役が存在する会社の場合)。雰囲気だけでなく、執行部の方々にもかなり影響が大きいのではないでしょうか。しかしこういった制度を充実させるためには、新たな社外取締役候補を探し出すことも頭の痛い作業なのでしょうね。在任期間が長くなってしまいますと、もはや「社外」の良さがなくなってしまいそうですし。。。この点もまた、ニッセン社における取締役会の雰囲気がどう変わるのか、ぜひとも日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの勉強会等でお聴きしてみたいところであります。
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