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2012年2月15日 (水)

「わけあり監査法人」あぶり出し計画?

今週号(205号)の日経ヴェリタス47頁に、「企業会計の信頼回復へ監査法人を監査 不良会計士リスト化 離合集散を監視」なる記事が掲載されております。もう記事の見出しを読んだだけで、どなたが登場されるのか確実に予想がつくわけでして、あの「LEON風ちょい○オヤジ」こと金融庁審議官兼PCAAOB事務局長の某S氏のインタビュー記事。今年は監査法人の「お目付け役」としてお忙しい毎日を送っておられることと存じます。

監査役が監査法人の仕事ぶりをきちんとチェックできていない、株主にももっとこの点について関心をもっていただきたい、株主総会などで投資家は「どのように監査法人を評価しているのか」と監査役にもっと質問してほしい、と上記誌上でS氏が述べておられる点は全く同感でございます。当ブログでも、オリンパスネタ、大王製紙ネタにおきまして何度も触れてきましたし、これだけ監査役と会計監査人の連係・協調が会計士協会や監査役協会から力説されているにもかかわらず、世間ではそれほど「協働関係」が周知されているようには思えません。2月8日の朝日新聞朝刊にて、日本監査役協会の太田会長が「私の視点」で述べておられたように、これからの監査役には投資家への発信力(説明責任を尽くすこと)が必要であります。監査役が自社を監査する監査法人をどう評価しているのか、という点はまさに監査役の発信力を発揮するにふさわしい場面であり、これは決して監査役の「権限強化」の問題ではなく、既存の監査役の「権限を行使する環境作り」の問題だと認識しております。

さて、上記ヴェリタス誌におけるS氏のインタビューでは、やはり監査法人問題がとりあげられており、大手監査法人でも、監査法人統合の歴史からみて、地域によってはかなり実力の差があることにまで言及されております。また監査法人が頻繁に代わる上場会社を担当する監査法人には大いに問題があるとのこと。いわば「不良会計士」を開示情報からあぶり出す、ということのようであります。

そういえば上記記事を読み、昨年、大阪弁護士会にS氏をお招きしたときのお話を思い出しました。昨年は岡山の林原社の倒産事件を契機として、会社法上の非上場大会社(法律上は会計監査人の設置義務があります)の多くに、会計監査人が設置されていない(つまり違法状態にあること)が問題視されました。私もZAITEN2011年9月号でこの問題をとりあげ、「日本公認会計士協会は、500社以上の(会計監査人が設置されていない)非上場大会社に監査人を設置するよう各方面に要望しているが、そんな違法状態を放置しているような会社の監査など、危なっかしくて監査を引き受ける公認会計士さんはいないのではないか?」と疑問を呈しました(いわば自分で自分の首を絞めることになりはしないか、と)。たとえば金融庁としては、銀行検査権限を行使して(取引先の信用リスクの管理態勢のチェックを通じて)非上場大会社のガバナンス強化策を敢行しうるわけですから、非上場大会社も会計監査人の設置が実質的に強制されることになり、私のような疑問も現実化することになります。

S氏は私のこの疑問を受けて、会場の弁護士に向けてご自身の見解を述べられました。

そんな状態になってもいいじゃないですか。危なっかしくて普通の会計士さんは監査を受けないということでしょ?そしたらどうなりますか?そういった「わけあり大会社」は、監査を引き受けてくれる会計士さんを必死に探しますよね。そしたら、またそれを(喜んで)引き受けてくれる会計士さんのリストが作れるじゃないですか。銀行の信用リスク管理態勢が高まる、非上場大会社のガバナンスが向上する、そして不良会計士があぶりだされる、一石三鳥とはまさにこのこと!

なるほど・・・・・・、私とちがって、考え方が非常にポジティブ(^^;(どうしてこんなにポジティブになれるのかな?・・・)。「不良会計士」のあぶり出しについて、さすが監督官庁、執念を感じるお話でありました。非上場大会社の問題ではありますが、最終的には、これも証券市場の健全性確保に向けた施策のひとつ、ということになるのでしょうね。私も「あのビジネス法務の部屋とかいうブログの管理人弁護士は怪しい!」とS氏に名指しで指摘されないよう、これからも精進して参りたい、と思います(^^;

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コメント

監査役の情報発信が一番必要になるのが、会社と監査人が対立した場合に監査人がリスクが高いと判断し黙って辞任してしまい、会社は自ら開示するインセンティブはありませんから、投資家に適切にリスクが開示されないケースではないでしょうか。監査人の交代についての監査役の意見の開示といった制度が必要かもしれません。

日本の監査法人は合併により規模を拡大してきたわけですが、地方事務所の問題だけではなく、合併企業にみられる人員構成の歪みが典型的に表れています。大手監査法人では、全人員に対する社員の割合は10%程度であり、外資系のA監査法人の5%の2倍となっています。日本の監査法人の社員の割合が外資系並になれば、待機合格者の問題も解消するでしょう。

非上場大会社については、より本質的な議論が必要ではないでしょうか。大会社の定義は、商法監査特例法により決められたものが会社法に引き継がれたわけで、40年近くが経過しています。現在の経済社会の状況下で、非上場会社の内どの範囲についてどのような監査が必要かという観点から定義すべきではないでしょうか。

投稿: 迷える会計士 | 2012年2月15日 (水) 22時35分

私は偶々S審議官の講演会を聞く機会がありましたが、彼は監査役の
職務執行について常々疑問を持っていると話していました。
監査役が法の趣旨通りに職責を果たしているのか、その事について問い糺す事ができない。会計士であれば金融庁が品質管理の検査を実施し不良会計士を補足できる。ところが相手方の監査役は放置状態ではないかと。会社法機関だから、本来は法務省がチエックすべきだか、現実は何も指導していない。不良監査役がいても、その監視監督はだれがやるのかと言う事で日経ヴェリタス紙上で株主に奮起を促している次第です。
ご指摘、まことにごもっともでありました。

投稿: 悩める監査役 | 2012年2月16日 (木) 10時49分

迷える会計士さん、悩める監査役さん、コメントありがとうございます。たいへん参考になるご意見であり、今後の検討課題とさせてください。とくに監査人交代における監査役の意見開示というのは、傾聴に値するものだと思います。会計監査人の守秘義務との関係で、専門職とはいえない監査役にどこまで開示できるか、(財務会計的知見という観点からも)問題はあるかもしれませんね。

いつも議論していて思いますが、有価証券報告書を提出するレベルの会社を念頭に置くのか、会社法上のすべての会社を念頭に置くのかによって、監査役に関する話のトーンが変わってくることですね。Sさんのお話も金融庁の方ですから、そこそこ大きな会社の監査役さんを念頭にあると理解しています。

投稿: toshi | 2012年2月18日 (土) 11時49分

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