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2012年2月 2日 (木)

内部統制を活用した反社排除体制の構築(ミドルクライシスマネジメント)

Midorukura00本日も東証さんでシステム障害があり、現在も復旧していないとか(2月2日午前11時半現在)。先日も、みずほ銀行さんがシステム統合に向けて2500億円の投資を行う旨の報道がありました。企業のシステムリスクへの対応は、本来なら経営マターの問題であるにもかかわらず、痛い目に合うまでは担当者任せ、の典型的なリスクではないかと思います。

前も申し上げましたが、こういった「直面してしまうと経営問題に発展してしまうけど、まあ、うちの会社では大丈夫」と楽観的に考えてしまって、予算措置が遅れていると思われるのがシステムリスク対応のほかに反社会勢力対応かと思います。システム対応は「私にはわからないから」といって経営陣に敬遠されるのですが、反社会勢力対応は「私はちょっと怖いし、立ち回りに失敗したら責任をとらされるし、うちには警察OBの方が総務にいるから」ということで敬遠されます。いずれもリスク評価ができる担当者が非常に少なく、また他の社員もあまり首を突っ込みたくない・・・という点では共通しているかと。

ただ、暴排条例施行後のマスコミの取り上げ方や、各企業の対応状況などをみておりますと、企業は反社会勢力へ半分、そしてこれを取り締まる当局へ半分、目を配る必要が「全社的対応」として出てきたのではないでしょうか。最近、話題の新刊ノンフィクション「さいごの色町 飛田」を読みました。再開発で賑わう天王寺にいまでも160軒もの遊郭(飛田遊郭)がございますが、あの飛田がなぜ昭和33年の売春防止法施行後もそのまま残り、反社勢力を排除しつつ、警察の規制にも負けずに事業を継続しているのか、その知恵には企業のリスク管理の視点から学ぶところも多いように感じました。料理組合を中心として全料亭が一丸となって対応し、自店の利益だけで「抜け駆け」はしない、ホンモノの「料亭」の存在を容認することが自店の防衛につながる等、まさに全社的取組であります(ちなみに料理組合の顧問法律事務所といえば・・・・なるほど、みなさんご承知のあの方のところなのですね。さすが、ピカイチのリスク管理)。

さて、このたび反社リスク等、リスクマネジメントコンサルティングを主な業務とするエスピーネットワークさんから「ミドルクライシス・マネジメント-内部統制を活用した企業危機管理-」なる本が出版されました。読み終えるまで時間がかかりましたので、少しご紹介が遅れましたが、さすが創業以来6000件以上の危機対応事案を手掛けてきた会社が社運をかけて(?)世に送り出したものだけあり、とてもリスク管理の視点から有益な内容になっております。著者の渡部洋介氏は警察OBの方で、一見「武闘派的企業対応」の指南本か?とも錯覚するわけでありますが、当社はすでに警備的対応だけでなく、知的介入対応にも力点を置き、証券会社、損保会社等の出身者も数多く在籍しております。したがいまして、この本は有事を経験している会社が、有事に至らないための予防的対応、また警察から要チェック企業としてマークされないための信用維持対応、といったあたりを中心にまとめられた本です。

一般の書店には並んでおりませんので、お買い求めは(上記PDFにより)エスピーさんに直接ご連絡いただければ、と。実は多くの出版社から発刊の検討がなされたのですが、ご推察のとおり、内容が内容だけに「尻込み」されたところも多かったそうです。たしかに「関係解消のポイント」などを拝見しますと、なるほど、ノウハウが詰まっていて参考になりますし、私も「講演で使えそう」とひそかに思っております。反社と対面する場合、あまりたくさんの社員で対応してはいけない…という理由も、なるほど・・・と。「VOL1 反社会的勢力からの隔絶」とありますが、続編があるのかないのか、そのあたりは私は存じ上げません。本当にお困りになる前に、ぜひご一読いただき、平時の内部統制、有事の危機対応、そしてどこまでやれば行政当局に理解してもらえるか、社内で考えるきっかけにしていただければと。

2月 2, 2012 本のご紹介 |

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コメント

会社で反社排除のお手伝いをしていますが、本当に気が滅入ります。誰が反社なのか、警察は情報をもっと提供すべきだと思うのですが、なかなか出しません。通達で「秘密保持の体制ができている所には情報を出しても良い」となっていますが、事実上「警察OBを雇ってる会社には出しても良い」という話にすり替わっています。うちも総務部副部長で警察OBを再雇用していますが、利権と化しています。上場企業はどこでも、反社チェックのために警察OBを雇い続けなければならないのですから、莫大な金額が警察の私腹に流れています。北海道、岡山県、山口県、福岡県の4県だけは、暴力団員を検挙すると、HPに実名と年齢を公表しますが、他の県は公表してませんね。しかし、氏名、年齢だけだと本人特定には弱いので、生年月日を公表してもらいたいものです。もっとも、そこまで公表すると、警察OBの価値が下がるので、警察はHPに情報出さないでしょうけどね。警察の本当の狙いが透けて見えて、いやになります。

しかも、暴排条例は個人的に違憲だと思ってますから、なおさら気が滅入ります。やってること「村八分」ですから。どこかの弁護士(山口先生ではありません)の言っているような「契約事由の原則」だけで許されると思えません。もし許されるなら、「契約自由の原則」で特定の人に対して「村八分」をする条例も違憲じゃないということになってしまいます。「暴力団員だから」という所に合憲性の根拠を求めなければなりませんが、推定無罪もまた憲法上の人権であり、「暴力団員であること」は別に犯罪ではありませんし、「悪いことをしていない人」「悪いことをしたとは証明されていない人」を村八分にするのは、やはり違憲になるしかないでしょう。さらに「手続き保障」の面でも、警官OBが秘密裏に警察から聞き出した情報で「やくざ」となれば反論の機会も与えず「村八分」にする、「村八分」の理由を聞かれても答えない(答えると今後警察から情報をもらえなくなる)というのも、違憲でしょう。

すぐに「暴力団員でないのに、間違えられて人権被害を被った人」が発生してしまうでしょう。客商売の身としては、うちでそれが発生すれば、レピュテーションで致命傷になりかねません。さらには、「暴力団員が暴排条例の違憲性を裁判で争う」ということも起きるでしょうし、個人的には、最高裁が警察に鉄槌を下す確率の方がずっと高いと思っています。うちが当事者にならないことを願うだけです。出発点の「刑事事件だと証拠が必要だが、民事だと証拠がなくても良い」という歪んだ警察の思い込みが間違っているのだと思います。

投稿: こんにちは | 2012年2月 3日 (金) 00時02分

「こんにちは」さんの投稿、とても面白く(という表現が適切かどうかは別として)拝読しました。「違憲」云々の部分は必ずしも賛同しませんが、天下りとの交換という「贔屓取引?」の実態を相当生々しくお寄せいただいた感じがします。

投稿: 伊藤晋 | 2012年2月 3日 (金) 21時55分

暴力団への気付が、警察への上納金や弁護士への顧問料に変わり、逆に高く付いてしまうのは何かのブラックジョークなんでしょうかね?

打たれ強い企業なら、反社対策は適当でよいと思いますよ。
反社対策は、余裕のある企業が趣味として行う性質のものです。

暴力団が企業にとって脅威であったのは遠い過去の話です。

投稿: ターナー | 2012年2月 5日 (日) 12時12分

違憲の部分については、疑念を氷解してくださる意見を是非聞きたいと思っております。

投稿: こんにちは | 2012年2月 5日 (日) 12時12分

皆様、ご意見ありがとうございます。

正統派の反社勢力対応というのもよろしいのですが、けっこう大きな会社の役員の方は新地や銀座などでいろんな噂が出るものです。当のご本人は気づいておられないのですが、そのお店が地下ルートとつながっている、というあたりが総務にとって気になるところだったりします。そういったときの対応というものも、また独特の方法があったりするわけでして。

教科書通りにいかないところもまた、この対応のむずかしさかもしれませんね。

投稿: toshi | 2012年2月 8日 (水) 01時12分

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