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2012年2月 2日 (木)

社外取締役と監査役の機能の違い(明確にできるか?)

本日(2月1日)、日本監査役協会から「会社法制の見直しに関する中間試案に対する意見」がリリースされております(提出は1月31日とのこと)。監査役制度周辺に関するコメントが多いのは当然ですが、社外取締役制度の義務付けについては、有価証券報告書提出会社に限り、条件付きで賛成・・・・ということのようです。中間試案に対する監査役アンケートの集計結果でも、「社外取締役制度義務付け」については賛成と反対が拮抗しており、監査役会設置会社の監査役の皆様もご意見が非常に分かれていることがわかります。監査役と社外取締役の間に明確な機能分担ができるのかどうか・・・そのあたりへの考え方の相違が反映されているのかもしれません。また、昨年11月に、 「会社法改正ー監査・監督委員会の社外取締役・過半数の重み」のエントリーで素朴な疑問を述べましたが、やはりその素朴な疑問はけっこう大きな問題だったようであります。

金融・商事判例2月1日号の神田教授の巻頭言「会社法制の見直し」でも「監査役の役割と社外取締役の役割をどう調整するかが制度論をするうえでのポイントとなる」と論じられており、私もとりわけ社外取締役と社外監査役との役割が明確に区別できるか?という点は大いに悩むところです。法務省としては、経営監督機能と利害相反機能を社外取締役に期待される役割として整理されておりますが、それで明確な区別ができるかどうかは議論のあるところのようです。実際に、どのように役割を分担すべきか明確にされませんと、メルシャン事件の第三者委員会報告書43ページ以下に出てくるとおり、取締役と監査役さんとで「あれ?役員会に報告するのはアナタではないの?」「いやいや社長に報告するのはアナタでしょ」といった具合に、やっかいな業務は人任せにして、結局不正疑惑が何年も社内に温存されてしまう、という事態になってしまうおそれがあります(海外子会社の不正調査の場面などにも同様の問題があります。これは笑い話ではなく、けっこう不正事件には発生しております)。

理論的な整理をブログで論じるというのは(文字数があまりにも限られているために)適当ではないように思いますし、私の思考力を越えておりますので、高名な先生方や著名な実務家の方々にお任せすることとして、8年ほどの社外監査役の経験から論じるとすれば、やはり監査役と社外取締役とは(期待されている役割かどうかは別として)、大いにその機能は異なるものと考えています。なんといいましても、企業活動は「山あり谷あり」でして、企業の業績や業種ごとの経営環境の変遷によって監査役と社外取締役とで期待される役割は変わるからです。

監査役が不正や不備(いずれも取締役の職務執行の適法性にかかわるもの)を発見した場合、監査役はこれを報告し、またその「重大性」に関する意見を述べます。監査役が感じる「重大性」はあくまでも監査役固有のものであり(監査役それぞれが感じ方が異なる場合もあります)、この意見をもとに取締役が経営上の判断を行うわけで、その監査役の意見の重みを感じるのも個々の取締役で異なるわけでして、そこに社外取締役への期待があります(先日の「朝日法と経済のジャーナル」における阪神電鉄元社外取締役玉井氏の「秘話」とまったく同じ構造)。

社外取締役は「人の監査」をするわけではなく、あくまでも企業価値を向上させる仕事の過程で「組織の監督」をするわけですから、監査役の意見の重みを認識しつつも、監査役が期待する経営判断とは全く異なる判断に与することも十分ありえると考えます。重大なコンプライアンス違反が指摘されたとしても、これとは別に重大な経営問題があればその優先順位を検討しなければなりませんし、経営資源の配分についても配慮しなければならないと思います。オリンパス事件や大王製紙事件のインパクトが強かったために、不正抑止という視点ばかりが強調されておりますが、取締役の違法行為を指摘するという監査役の役割と、株主からの信認義務を取締役が尽くすという視点から経営判断の健全性を確保するという社外取締役の役割は異なるものであり、ときには監査役と異なる判断をするのも当然のことと思います。

あくまでもコンプライアンスの視点に限ってのお話ですが、経営判断に対して「人の監査」を通じてブレーキをかけるのが監査役の仕事であり、社長と一緒に業績を上げることに没頭しながら、つまりアクセルを踏みながら最良の選択を模索するなかでコンプライアンス経営を実現するのが社外取締役の仕事ではないでしょうか。会社が大きなカーブに差し掛かったときには監査役の機能が生きるでしょうし、長いストレートをアクセル全開で駆け抜けるときには社外取締役の機能が生きるわけです。このたびの決算発表をみていても、会社は生き物であり、良い時もあれば悪いときもあるわけでして、事業継続に向けて、どちらの機能が生かされるのかは企業の置かれた環境によって異なるものと思います。事故を回避するためにはブレーキを踏むことだけではなく、巧みなハンドルさばきも必要だと考えます。

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