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2012年2月21日 (火)

会社法改正で生まれる金商法上の「内部統制報告制度」と会社法との接点

ひさしぶりの内部統制ネタであります。このネタでブログが盛り上がっていた時代がなつかしい。。。

昨年1月から今年2月15日までの間に、「内部統制は有効である」との内部統制報告書を過去に提出していながら、「有効ではない」と評価結果を訂正する「訂正内部統制報告書」を提出した上場会社は13社に上ります。そのなかにはオリンパス、大王製紙、ゲオなども含まれるわけですが、結局のところ当該13社は、会社の不祥事が発生したことで「全社的内部統制に重要な欠陥が認められ」ることを理由としています。期末に重要な欠陥が残ってしまったため、今年度は内部統制は有効とはいえない、とする会社や内部統制を評価できる体制が存在しないために意見を表明できない、とする会社が上記期間内に25社ありますが、その中には決算財務プロセスに問題あり、業務プロセスに重大な不備ありなど、とくに大きな不祥事が発生してはいないが、そのおそれがあるとして「リスク開示型」の意見表明の事案も結構あります。

つまり、内部統制報告制度の本来の趣旨(将来における財務報告の信頼性に関するリスクを投資家に開示する)を実現した報告書を提出している会社もあるわけですが、「全社的内部統制に問題あり」との理由によるリスク開示型評価は一切存在せず、不祥事が発生した後に、実は全社的内部統制に問題があったとする、いわゆる「結果開示型」ばかりであります。たしかに経営者自身が(不祥事も発覚していないにもかかわらず)「当社の統制環境に問題がありますよ」とリスクを開示するというのは現実離れしておりますし、会計監査人が「ここの会社はガバナンスに問題あり」として意見表明することもなかなか勇気のいることと思われますので、この結果はやむをえないところかもしれません。

しかし、今後会社法が改正され、監査役による内部統制の(基本方針の整備状況だけでなく)運用状況への監査(審査?)が実践されますと、全社的内部統制に関する「リスク開示型」の有効性評価も出てくるかもしれません。会社法上の内部統制に対する監査、ということであっても、おそらく内部統制監査人(会計監査人)は、監査役監査の結果(運用状況チェックの結果)を今後は援用して監査意見を形成することが考えられますし、内部統制の運用状況をチェックする監査役の姿それ自体が、「統制環境」への監査のポイントにもなるからであります。もちろん監査役さん方の頑張り次第ではありますが、金商法上の内部統制報告制度と会社法上の内部統制評価に関する接点がここに生まれ、財務報告の信頼性に関連する全社的内部統制上のリスクが開示される事例が出てくる可能性があるように思われます。

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コメント

監査役協会では、既に昨年の監査役監査基準の改定において、内部統制システムの運用状況の事業報告への記載、監査役による監査及びその結果の監査報告書への記載を打ち出しています。法定化で取組みの本格化が期待されるところです。これが先生の仰るように金商法と会社法の接点となり、監査役と会計監査人(更には内部監査部門)の連携の強化に繋がれば非常に望ましいことです。
しかし二つの内部統制制度の枠組みをそのままにして、J-SOXでの全社的統制のリスク開示に結びつくような実質的な効果が生まれるか、疑問大です。監査役協会のアンケートでこの点が質問項目から除外されているのも気になるところです。是非現役の監査役や内部監査部門の方のご意見を伺いたいところですね。

投稿: いたさん | 2012年2月21日 (火) 22時30分

リスク開示型の内部統制報告という概念は、有価証券報告書の中のリスク情報とどう住み分けするか?という問題がありそうな気がします。リスク情報は、なんでも余分に書いておけば安心というイメージがありますが、監査報告書という書式の中で書くのはかなり勇気が必要なのではないかと思います。リスク情報を内部統制に関しても積極的に活用しようという方向性はないでしょうか?

投稿: ひろ | 2012年2月22日 (水) 12時48分

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