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2012年3月26日 (月)

PCメールの抜き打ち調査と内部通報の奨励について

検索サイト大手のグーグル社が東京地裁より「表示差止め」に関する仮処分命令を発令されたにもかかわらず、これに従わない状況が続いているそうです。数年前、プリンスホテルさんが、本業である宴会場使用に関する仮処分命令に従わなかったときはコンプライアンスを無視したとんでもない会社としてマスコミや国民、そして司法裁判所から大きな非難を浴びました。同じようにグーグル社(少なくとも日本法人のグーグル社)も本業に関する命令ですから「裁判所の命令に従わないトンデモ会社」として世間や裁判所の強い非難を浴びるのでしょうか?かりに浴びないとすれば、それはプリンスホテルさんの場合とどのような差があるからなのでしょうか。ちなみに「山口利昭」で検索してみますと「山口利昭法律事務所」と「山口利昭 弁護士」が自動検索されるだけでした(よかった・・・)。ここに「山口利昭 悪徳弁護士」とか「山口利昭 懲戒」などと自動検索されれば、おそらくどこの企業さんにもセミナー講師として招聘いただけないか、と(^^;;そう思うと、債権者(申立人)の気持ちもよくわかります。。。(以下、本題)

先ごろ、大阪市の職員(幹部)のメール調査について新聞で報じられておりましたが、企業(官公庁)所有・管理にかかるパソコンやサーバーに保存された送受信メールの(無承諾による)調査についてはなかなか難しいところがございます。

誹謗中傷メールの調査を行った会社のメール調査の違法性が問われた日経クイック事件判決(東京地裁判決 平成14年2月26日 労働判例825号50頁)などを参考にしますと、保存されている会社所有のパソコンについては、①メールを無断で調査する必要性があり、②調査の方法も相当で、③調査対象者のプライバシー侵害の程度も重大とはいえない場合には調査は違法とは言えない、と考えるのが適切かと思われます。つまり会社の勝手な目的によって一般探索型の調査を行うというのは問題であり、調査対象者に不正の疑いがある場合で、かつプライバシー侵害の程度が重大とは言えない方法、つまり事前に包括的な調査承諾ルールが定められており、なおかつメール調査でなければ有力な証拠が得られない、といった事情がなければ適法とは言えないものと考えます(ちなみに社員所有のパソコンやスマホについては私的なメールが含まれている蓋然性が極めて高いので、無断調査の違法性は極めて高いと思われます)。

そうしますと、やはり内部通報などによる情報入手は、上記の「メールを無断で調査する必要性」の要件を満たすためにも有効な手法かと思われます。もちろん、単に内部通報があったということだけでは無理でして、通報をもとに調査をしたところ、調査対象者の不正の蓋然性が高いと認められ、かつメール調査以外には有効な証拠収集方法が見当たらない、といった状況にあることが必要かと。

ここでさらに厳格な要件を求める立場もあるようです。たとえばメール調査について、任意の提出を求め、これを拒否された場合に初めて調査ができる、といった考え方です。しかし、昨年の12月16日にリリースされたゲオ社の不明朗取引に関する第三者委員会調査報告書にも登場しましたように、最近は「メール復元ソフト」だけでなく、「メール復元を困難にするソフト」も簡単に手に入る時代となりました。つまり調査対象者に事前に任意提出を求めた場合、対象者はこれを拒否して、関連パソコンから「復元困難ソフト」を用いてメールを抹消してしまう、ということが考えられます。これは不正調査を著しく困難にしてしまいますので、おそらく「抜き打ち調査」自体もある程度の調査の必要性が認められる場合には許容されるのではないでしょうか。先の日経クイック事件では、メール調査以前の事前面談において、調査対象者が不正事実への関与を否定したことが「必要性」を認めた重要なポイントだったようですが、事前面談も証拠隠滅を促す要素となりますので、面談がなくても、他の証拠によって不正関与の蓋然性が認められる場合には「必要性あり」とされるのではないかと(これは完全に個人的意見ですが)。

内部通報制度の充実は、自浄能力を高めるため、また「組織ぐるみの犯罪ではないか」といった疑惑を排除するためにも有効であることは毎度申し上げているところでありますが、こういった不正調査の手法の有効性を基礎付けることにもつながるわけでして、調査対象者の人権に配慮しながら社内処分、民事、刑事立件のための証拠を保全するためにも有意義なものと考えます。

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