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2012年4月 9日 (月)

大王製紙事件・創業家と経営陣対立について考える

4月5日の日経ニュースに著名な法律家の方々が、「専門家からみた大王製紙経営陣と創業家との対立の構図」を語っておられます。大王製紙の連結子会社の役員の方々が、創業家側によって招集された臨時株主総会にて解任され、次々と大王製紙経営陣のコントロールが効かない状況になっているのは既にご承知のところかと思います。メーカーたる大王製紙の「車の両輪」と言われる本体と子会社の関係ですから、このような状況が続けば大王製紙の企業価値が大きく毀損していくことになります。

法律的な関心もさることながら、創業家ファミリーが保有する子会社株式を、なんとか大王製紙側としては取得したいのでありますが、価格の折り合いがつかないまま、今後の両者の交渉進展について関心がございます。大王製紙側としては、創業家ファミリーから子会社株式を買い取るわけですから、その買取代金をもとに創業家側による元会長の貸付金の返済を促したいところかと。そうすれば、いわゆる「被害弁償」によって元会長の刑事罰も軽くなるわけでして、そこに創業家側の弱みがある(したがって、相当の買取価格であれば最終的には創業家側が応じるはず)と考えるものと思います。

しかし創業家側がノーと言い続けて、元会長の被害弁償が50億円ほど残ってしまいますと、今度は大王製紙側の損害金となるわけでして、現経営陣や監査法人(会計監査人)が大王製紙の株主から代表訴訟を提起されるリスクが現実化します。創業家自身が、身内のキビシイ刑事責任もやむをえない、と考えるのであれば、現経営陣や監査法人もかなりのピンチに陥ることになります。ただ、大王製紙は上場会社であり、適正価格以上の価格で子会社株式を買うことはできないでしょうから、金銭的解決といっても交渉には限界があるかもしれません。

つまり現経営陣と創業家との「我慢くらべ」の様相になってきましたが、従業員や取引先のためにも、どこかで折り合いをつける必要がありそうです。そうでなければメインバンクの対応も悪化するでしょうし、本体や関連会社、取引先の方々も、今後の会社の行方についてたいへん不安を抱くことになると思います。

「こんな大騒ぎになったのも、創業家に対する絶対的服従の企業風土によるものだから、何をいまさら創業家が偉そうにいっているのだろうか」と創業家側を批難する声も多いように思います。しかし、元会長による子会社からの資金流用の事実を知っていた担当取締役や元会長の親族である取締役は引責辞任したにもかかわらず、なぜ現経営陣や監査役は減俸程度の責任の取り方で一件落着となるのか、担当取締役が知っていたということは経営トップにある現経営陣も事前に知らなかったわけではないと思われ、現経営陣の方々こそ辞任すべきではないか、との疑問も一般的な感覚からは納得できるところであります。

昔は、こういったことは銀行さん主導で内々に解決されていたんでしょうか。これは私の勝手な推測ですが、創業家と経営陣との対立を終わらせるためには、大王製紙側の経営陣の人事的解決しか方法がないのではないかと思います。「そんなアホな。」と言われそうですが、筋から考えるとそうならざるをえないのではないでしょうか。ただ、創業家の経営方針に賛同しない幹部の方々が、元会長の不正事件をきっかけに、いわば計画的に創業家の色を薄めるためのクーデター的な事件を起こしているようにも思えます(これは全く私の憶測であります。たとえば昨年の総会で大幅な役員交代が行われたことなど)。いずれにしましても、先の日経ニュースにて専門家の方々がおっしゃるように、この対立には第三者委員会報告書の影響もあるのかもしれません。

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コメント

業界再編により解決する方向のようですね。

「大王、北越紀州と資本関係強化へ」
http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2012062000247

投稿: 迷える会計士 | 2012年6月20日 (水) 11時27分

メガバンクの仲裁、ということでもなさそうなので、どなたがこういった絵を描いたのか興味があります。北越紀州側ですかね。。。これ、うまくブログにまとめるのには時間がかかりそうです。

投稿: toshi | 2012年6月21日 (木) 21時42分

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